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第14話 大好評の薬作り

翌朝、私は騎士様がいるかどうか聞いたが、もう仕事に出た後だった。


冷静になって考えてみると、本当に私ったら何を勘違いしていたんだろう。


あんなにイケメンの騎士様が、私なんかに興味を持つはずがないのに。

傲慢で勘違い男だと思っていたけど、この屋敷の様子を見たら事情が呑み込めた。

かなり、いや相当に裕福な家のご子息なのだ。

モテて当たり前、たいていの人より身分が高いのだろう。

私がよく知らないだけで、伯爵家の親戚かもしれない。だって、モレル伯爵の名前は頻繁に出てくるのですもの。

私はバリー商会の娘だから確かにお金持ちではあるけれど、所詮は平民ですものね。


「あ、ローズさん、朝ごはんを召し上がって言ってくださいとロアン様が」


ここの本当の使用人らしい中年の女性が声をかけてくれたが、私は遠慮した。


「大丈夫です」


これ以上迷惑はかけられない。私が寝ている間に、私の薬は運び込まれて部屋の前に置いてあった。今日売る分はありそうだ。


「襲撃事件はあったのかしら?」


心配だった。

ここに長居はできない。なぜなら薬が作れないからだ。今日はとにかく、明日の売り物に困ってしまう。


それに急いで市場に行って、襲撃があったかどうか聞かないと。



市場に行くと、ヘンリー君が緊張した様子で私を待っていた。

私は襲撃事件があったのかと思ってドキッとした。


だが、彼は違う用事で私を待っていたらしい。


「ローズさん、これから僕、心を入れ替えて頑張ります」


ちょっと面食らった。


「何の話?」


「これまで、僕は非力でおたおたして全然ローズさんの助けにならなかった。今後は頑張ります」


その宣言をするために待っていたの?


「頑張ってください……」


とりあえずエールを送ってみた。


「ハイッ!」


ヘンリー君は直立不動の姿勢を取って、元気よく返事した。そして売り場に走って行った。近いんだけどな。


ヘンリー君、年は幾つなんだろう。パッと見、私よりだいぶ上に見える。そういえば、騎士様は幾つなんだろう? 騎士様よりだいぶ上に見えるよね。そんな人が今更頑張りますって、これまでは頑張ってなかったんだろうか。


「本人が頑張るって言うなら、いい機会だと思うよ」


グスマンおじさんがいつの間にかそばに来ていて、微笑みながら言った。


「はあ。そうですね」


相変わらずもたついている感じの動きではあったが、一生懸命商品を並べたり頑張っていることは伝わってきた。


「それよりグスマンさん、最近、いえ昨夜、町で騒ぎはなかったですか?」


グスマンさんは、ん?といった顔になった。


「いや何も聞かないね。まあ、この町は伯爵様の統治がきちんとしているので、治安はとってもいいんだ。町の真ん中でも騒ぎなんかほとんど起きないよ」


「殺人とか」


「え? 何言ってるの。そんな事件起きたら大騒動だよ。まあ、そりゃこれだけ大勢の人が住んでるんだから、絶対起きないわけじゃないだろうけど」


おじさんは当たり前だと言わんばかりの調子でそう言った。どうやら本当に何もなかったらしい。おじさんの目は、もう並びかけている客の方を見ていた。


「ねえ、ローズさん、あんたやっぱり薬作りに本腰いれてもうちょっと頑張ってみないか」


「えっ? でも、私……」


「あんたの薬、本当に効くんだよ。ウチの娘はやっと外に出でられるようになった。すごいことだよ」







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