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ショートケーキ

作者: 雪町

 私、白井咲は花の大学生になり、彼氏もできて順風満帆の生活を送っていたはずだった。数時間前までは…


「ねえ、どういう事?」

デート中、彼氏のスマホには『今度いつ会える?最近会えてなくて寂しいな』という通知が映っていた。途端に挙動のおかしくなる彼氏を問い詰めると、浮気をしていた事を白状した。そうして彼との幸せな時間は終わりを迎えたのである。


「なるほどねーそりゃ大変だったね」

私の前であぐらをかきながら話を聞いている彼女は紺野晶、中学からの親友だ。元彼と別れたあと、連絡すると私の家で飲もうということになり、2人で飲みながら愚痴っていた。

「本当に酷いと思わない?あんな奴と付き合ってたなんて信じらんない、最悪…」

しかも浮気相手は私よりも可愛いくてふわふわしたザ・女の子って感じだった。やはり顔なのかと思うとこの世の全てを恨みたくなってくる。

「何が悪かったんだろうねー」なんて呟くとより一層気持ちが沈んでいくような気がした。

 そんな様子の私を見て晶は少し考えるとこう言った

「まあ、悲しいのは分かるけど一旦考えるのやめたら?」

考えるのをやめる?それはどういうことだろうか。あまりに唐突な晶の提案にポカンとしている私に晶は更にこう言った。

「そんな浮気するような奴の事でくよくよすんのダサくない?今は考えんのやめよ。」

くよくよ…確かにダサいかもしれない。そう思うと悲しみが薄くなり代わりに怒りの感情が湧いてきた。

「なんかだんだんあいつに腹立ってきたわ。」

「マジ?」

「確かにあんな奴にくよくよする必要無かったかも。悩む時間もったいなかったわ。」

「でしょ。あ、そうだ、気分転換になるかと思ってケーキ買ってきたんだけど食べる?」

「食べる!」

晶が取り出した箱の中には美味しそうなショートケーキが2つ並んでいて、甘い香りが漂ってきた。

いただきますと2人で手を合わせケーキを食べるうち、とっくに流し切ったはずの涙が溢れて止まらなかった。流石に飲み過ぎたかもしれない。

 静かな部屋にフォークと皿のぶつかる音がよく響く。ただケーキを食べ続ける私を晶は静かに見ていた。そのケーキは悲しい程に甘く、季節外れのいちごのすっぱい味がした。私は今日のことを忘れることは出来ないだろう、いや、忘れたく無い。あんなに辛かったはずなのに何故かそう思った。

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