第1章 第8話 「空を舞うSH-60J(シーホーク)後編」
第1章第8話 「空を舞うSH-60J後編」
▣ 2011年4月11日 13時50分 ▣
▣ やくも格納庫 ▣
「オーライ、オーライ、オーライ・・・」
航空科員が、後方のヘリポートにシーホークをけん引する。
「オーライ、オーライ、ストップ!! 甲板に固定。」
ストップの掛け声で、けん引が止まった。
そして、手元のインカムで航空指揮所に連絡を入れる。
「こちら後部ヘリポート。発艦準備完了、指示を乞う。」
「こちら航空指揮所、了解。訓練開始、各班指示書を開封せよ。」
そう言われて、主任が指示書を開き、内容を報告した。
「1350、航海長がCICにて負傷。至急、緊急搬送する。」
了解の代わりに、右の親指を立ててヘリに乗り込んだ。
「バババババ、バラララララ・・・・」
勢いよくエンジンが回され、プロペラが回転し始める。
「こちらSH-601山村。傷病者の収容を願う。」
「了解した。至急搬送する。」
交信が終了すると、本当に航海長が収容された。
「こちらSH-601山村。収容完了、これより天売島へ搬送する。」
そう言って交信を切ると、山村が操縦桿を握り上昇させた。
巧みなテクニックで、あっという間にやくもから遠ざかって行った。
10分後・・・。
「こちらSH601。傷病者の搬送を完了。これより帰艦する。」
わずか10分で天売島へ搬送してしまった。
次は、私達の番だ…。
胸が激しく鼓動をを刻んでいるのが自分でもわかる。
すると木村が近づいてきて、河野の頭にポンと手を置いた。
「緊張するな。落ち着いて、いつも通りでな!」
と優しく声をかけてくれた。
この状況では、ありがたく感謝しておく事にしよう。
そうこうしている間にヘリが帰艦して、格納庫に収容された。
続いて、木村たちの乗る2号機がヘリポートに出される。
固定作業が終わると、作業員が指揮所に連絡を入れた。
「航空指揮所了解。訓練開始、各班指示書2を開封せよ。」
主任が開封して、例のごとく報告する。
「艦橋への至近弾でガラスが艦長を直撃。至急、搬送を行う。」
また先程とは、違う指示がなされる。
ヘリに乗り込むとエンジンを始動させる。
「ババババババラバラバラバラバラ・・・・」
勢いよくプロペラが回転を始める。
「こちらSH-602木村。収容準備完了、収容願う。」
冷静な声で指揮所と交信を始める。
「指揮所了解。至急収容する。」
その通信と同時に、艦長が広い機内に収容された。
「こちらSH-602木村。収容完了、これより搬送する。」
交信を切り機体を上昇させると、とりあえず艦から離れた。
そして、「河野。」と呼びかけた。
河野も「はい!!」と元気よく答えた。
「You have a control」とインカム越しに言った。
河野は、「へっ!?」と間抜けな声を出して返事した。
木村が、返事はと言われて我を取り戻した。
「I have a control 」と答えた。
木村が操縦桿から手を離し、河野が代わりに握った。
ヘリは、そのままの軌道で天売島を目指した。
「天売島HPまで残り2㎞。周囲警戒!」
木村が機長席から河野をバックアップする。
河野もいけるぞと思い始めた時である、突然警報が響いた。
「ピピピピピピピピピ・・・」
断続的な警報の後、あるランプが点滅し始めた。
「エンジントラブル」
木村も初めて経験する状況であった。
しかし、整備員からも報告は上がっていない。
木村はすぐに、航空指揮所に緊急コールを入れた。
「emergencycall、1403にエンジントラブルを示すランプが点灯!!
至急、指示を願う。現在、天売島沖1㎞地点。」
「こちら航空指揮所。HPへの緊急着陸を許可する。消防へも連絡を
しておく。安全におろせ、以上。」
指揮所との交信が終わったタイミングで、河野が
「You have a control」と木村に伝え、
「I have a control」と木村が答えた。
「天売島HPまで残り500m。消防車も待機済みです。」
河野が冷静に、木村へ伝える。
「艦長、少し我慢して下さいね。」
と木村が笑顔で伝え、着陸の準備を整えた。
「前方にHPを視認。着陸誘導、手動にセット。準備よし。」
河野が、計器類を操作して準備を整える。
「これより、緊急着陸を行う。目標よし、下降始め。」
木村の声と同時に、機体が下降し始める。
高度計の数値もだんだん下がってきた。
「頼むからエンジン停止だけはやめてくれよ。」
心から思っていたが、最悪の事態が起きてしまった。
「教官、エンジン停止!!再始動利きません。」
「オートローテーションに入る。地上の安全を確認しろ!!」
オートローテーションとは、ヘリコプターのエンジンなどが停止した
場合に、安全にヘリコプターをおろす方法である。
ヘリパイは、この技術を必ず習得させられる。
しかし、実際に使うのはほんの一握りしかいないのだ。
(実際にやりたくないけど・・・。) 話を戻そう。
「HPまでの距離100を切りました!!現高度、550フィート。」
河野が若干のパニックを起こし始めている。
「河野、まず落ち着け!!艦長まで、不安になるだろうが。」
木村の声で、なんとか落ち着きを取り戻した。
「間もなくHPだ。着陸誘導手動に設定。河野頼むぞ!!」
「了解・・・。距離50m、速度100準備よし。」
ヘリコプターがHPに近づき、誰もが無事を祈った。
「バララララララララ・・・」
「着陸!!」
河野が叫んだ。
若干の衝撃があったものの、見事なオートローテーションであった。
回転しながら近づいた機体を制御しながら、HPに着陸させた。
乗員・機体共に怪我はなく、やくもの帰港までしばし待機することとなった。
やくもの到着を待って、トラブルの原因が調査される予定だ。
しかし何より、全員が無事でよかったというところだ。
ヘリを降りると、艦長に声を掛けられた。
「木村3尉、無事におろしてくれて有難う。今後も頑張ってくれ。」
がっちりと握手を交わし、木村と河野は無意識に敬礼をしていた・・・
はじめて書くヘリの描写は、思ったよりも難しかったです。
荒い面が目立つと思いますが、その辺はご配慮ください。
また、ご意見やご感想をお待ちしております。
次で、第1章を終了して第2章に入ろうと思っています。
また、次回も見に来てください。