第1章 第5話 「対水上戦闘実施中」
第1章 第5話 対水上戦闘訓練実施
▣ 2015年4月10日 9時20分 ▣
▣ 天売島沖 30㎞ 訓練海域 ▣
「0925よりCICにて、ブリーフィングを行います。
関係科員は集合して下さい。」
艦内に航海長の声が流され、それを合図に集まってきた。
最後の一人が入ってきたところで、艦長が口を開いた。
「今から、対艦演習のブリーフィングを始めます。
航海長、海図を画面に映して下さい。」
「では、前方の海図をご覧ください。赤でマーキングされて
いるのが、データリンク封鎖時の「しきしま」の位置です。」
航海長がゆっくりとした口調で話し始めた。
「おそらく、しきしまは北側から回り込んで攻撃すると予測されます。
我が方は、南側迎え撃つ事になります。」
「では砲雷長、戦闘時の手順を。」
続いて、砲雷長の水下が口を開いた。
「はい、兵装の選定ですがやはりハープーンでの飽和攻撃が最適かと。
いくらイージスといえども、防空にも穴があります。こちらも同じですが。」
言い終わると、自分のイスに座った。
「はい、では以上です・・・。」
寺井崎は、そこで一度言葉を止めると一度息を吸って通った声で令した。
「総員戦闘配置、対空・対水上戦闘用意。対空見張りを厳となせ!!」
言い放つと、寺井崎は武器コンソールの前に立ち、安全装置を解除した。
「武器コンソール、セーフティ解除。システムオールグリーン!!」
いよいよ、演習が始まった…。
▣ 2015年4月10日 9時35分 ▣
▣ 同海域 ▣
戦闘の火蓋を切ったのは、「しきしま」の方からであった。
3発のハープーンが接近しているのであった。
「1-5-2からハープーンが接近、スタンダード発射用意!!」
レーダー員が、声を張り上げて報告する。
「目標ロスト!! 予測コースへ向け、スタンダード発射管制はじめ!!」
砲雷長がすかさず令した。
「了解―。スタンダード発射!!」
スタンダードミサイルが3発データ送信される。
「インターセプト5秒前・・・・マークインターセプト!!」
レーダーから2発のミサイルが消滅した。
「2発撃墜、1発さらに接近。スタンダード防空圏突破、
シースパローも間に合いません。」
「主砲、CIWS迎撃に備え。主砲、射程に入り次第攻撃。」
水下が、冷静に指示した。
「了解、およそ15秒で射程圏内に侵入。」
主砲管制員の声に冷静さが戻った。
「射程圏内侵入、攻撃始め。」
そう言って、目の前のボタンに手をかけて押した。
本来ならば、砲弾が次々打ち出されているころだ。
数十秒後、砲弾が命中してレーダーから完全に消滅した。
「よし、反撃に移る。ハープーン発射用意。」
水下が令すると、寺井崎が何か思いついたのか艦橋に指示した。
「機関全速、取り舵いっぱい。しきしまとの間を詰めろ。」
艦橋は若干混乱したが、最終的には了解と端的に報告してきた。
「艦長、どうお考えですか?私にはよくわからないのですが。」
水下が帽子をかぶり直して、寺井崎に訪ねた。
「なに、ちょっと近接攻撃でもしてみようかと思いましてね。」
水下は?を浮かべていたが、意味に気づいたようだ。
「なるほど、面白いですね。やってみましょう。」
そう言うと、水下は所定の位置に戻った。
「ハープーン、2発撃墜されました。残発1基。」
「副長、敵艦との相対距離は何キロですか。」
寺井崎が、即座に聞くと今田が答えた。
「はっ、えーと7.3キロです。」
これだけ接近しているのに、しきしまは気づいていない。
「よし、主砲しきしまに標準。打ち方始め!!」
寺井崎が令すると主砲のボタンが押された。
「本艦の砲弾がしきしまに命中…あっ、ハープーンも命中!!」
なんと砲弾に気を取られ、ミサイルを撃ちこぼしたのである。
装甲の薄いイージス艦は、想定では大爆発が起きて撃沈だろう。
「そこまで!!演習終了。」
FTGの主任的男が、声高らかに宣言した。
「0942、しきしま、主砲・ミサイルの攻撃を受け撃沈。」
艦長がそれを聞いて、インカムを手に取った。
「対空、対水上戦闘用具おさめ。皆、ご苦労さん。」
艦内の雰囲気には、同じイージスに勝った優勢感が漂っていた。
演習を終えた一同は、天売島にて鋲をおろし束の間の休息をえた。
次は、どうなるのだろうかな・・・。
ご拝読ありがとうございます。
更新が遅くなってしまい、本当にスイマセン。
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