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護衛艦奮闘記  作者: SHIRANE
第6章 波乱
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第6章 最終話 『終戦の末に』

この作品はフィクションです。一部事実と異なる場合がありますが、ご指摘があった場合は出来る限り対応して参りますので宜しくお願い致します。

◆ 2015年 8月 3日 18時00分 ◆

◇ やくも CIC ◇

接敵から2時間30分が経過し、緊張の度合いも増している。

潜水艦からの攻撃に対し、基本的には専守防衛を貫かねばならない。

これは海上自衛官としての誇りでもあり、課せられた枷でもある。

しかし、寺井崎は一抹の不安を隠せずにいた。

「(接敵時に比べ、格段に射撃精度が上がっているな……。)」

潜水艦の射撃精度が高まり、やくも目前での迎撃が増え始めていた。

自艦にミサイルが迫るという事は、それだけ被害の確立も高まる。

特に、イージス艦は要であるレーダーが露出している。

一部でも損壊すれば、それだけ手負いになる事は確実だ。

「何かいい打開策はないのか……」

寺井崎は正面の海図を見つめ、この先について考え始めた。


◆ 2015年 8月 3日 18時05分 ◆

◇ ?????? ◇

「敌人的受害情形怎样?」*1

「至今没能确认……」*2

「向(到)中々顽固。到底是日本的宙斯盾舰这个译吗」*3

「怎样做?」*4

「射出chaff弹头,破碎的同时用全导弹攻击。

 不播撒介意鱼雷,也必定将受害给予」*5

「了解了」*6


◆ 2015年 8月 3日 18時10分 ◆

◇ やくもCIC ◇

「高速飛翔物の接近を確認、数3。距離90000、更に近づく!」

何度目かわからない攻撃に対し、慣れた動作で冷静に対応する。

「対空戦闘、スタンダード発射管制はじめ!」

「対空戦闘! スタンダード発射管制、CIC指示目標!」

艦内にミサイルの発射を告げる警報音が鳴り響き、

スタンダードミサイルが射出されていく。

射出されたミサイルは、海図上を点となって駆け抜けていく。

「スタンダードインターセプト5秒前……スタンバイ!」

「目標アルファ、ブラボーの迎撃に成功……。

 レーダーロスト、探知減、チャフ弾頭と推察!」

チャフが空中に飛散する事で、レーダーの効果が減退する。

この間は、ミサイルなどの探知に後れを取る可能性が生じる。


「対空見張りを厳となせ! 短SAM、主砲、CIWSは迎撃に備え!」

CICには先程までとは格段に高まった緊張が場を満たしていく。

その時電測員の1人が叫んだ。

「レーダー回復! ミサイルを再探知、数8。高速で接近中!」

「対空戦闘! 短SAM発射管制始め。主砲、CIWSは迎撃に備え」

「発射管制短SAM、リコメンドファイア、撃て―っ!」

前部と後部のVLSから勢いよく短SAMが撃ちだされる。

撃ちだされた短SAMは一直線に目標に飛翔していく。

「インターセプト5秒前……スタンバイ!」

海図上から数個の点が重なり、そして消える。

「目標アルファからデルタまで迎撃、さらに突っ込んでくる!」

「エプシロン以後、短SAM防空圏突破。主砲防空圏に接近!」

点となって迫るミサイルが、更に緊張感を呷る。

寺井崎よりも先に水下が、CICに令する。

「主砲及びCIWSをオートに! チャフ発射に備え!」

「主砲・CIWS発射管制、オートモード!」

「チャフ射出用意よし!」

主砲防空圏である赤色ラインに刻一刻と迫り……そして踏んだ。

「主砲オート発射始め!」

「撃ち―方始め!」

前後部に備えられた128mm主砲が、一斉に撃ち方を始める。

後部も射撃を行う為、艦は緩やかに取舵を切る。

次々に打ち出される砲弾の衝撃が、艦を何度も揺らす。

斉射に耐え切れず、数発が爆発するがまだ残っている。

「目標2迎撃、さらに数2が近づく!」

「主砲防空圏を間もなく突破、CIWS防空圏まで残り10秒!」

「CIWSオートコントロール、発射管制始め!」

水下の声が騒がしいCICの中を通り抜けていく。

「CIWS防空圏、発射管制始め!」

主砲の攻撃に変わり、甲高い連続音が遠くに響いている。

毎分3000発を撃ちだすCIWSは、着実にミサイルを弱らせる。

そうしている間にも、やくもミサイルはどんどん近づいていく。

その時、寺井崎はインカムを手に取り艦内に叫んだ。

「チャフ射出! 総員、衝撃対応姿勢を取れ!」

寺井崎を含め、それぞれが目の前にしっかりと掴まる。

その間もCIWSは射撃を続け、耐え切れなくなり2発が爆発する。

やくも近くで爆発した衝撃波は、艦を大きく揺らす。

艦に何かが当たる様な音も聞こえ、数秒の後収まる。


寺井崎はインカムを手に取り、艦内に令する。

「ダメージコントロール、被害集計、各科は早急に報告!」

CICは幸い大きなけがをした者が居なかったが……他は。

「こちら艦橋! 艦橋窓大破、航行継続は可能!」

「こちら前部甲板! 破砕物によりCIWS内1基損傷!」

被害集計がどんどん積み上げられていく。

寺井崎はついに、決断を下した。

「通信長、総監部にアスロック攻撃許可を具申。急げ!」

「了解しました」

通信長は急いで総監部に通信を行い、攻撃を具申する。

しかし、帰ってきたのは快いものではなかった。

複数回に渡り具申を繰り返すが、一向に変わる気配はない。

「仕方ない……アスロック諸元入力、攻撃用意」

「艦長!」

水下が寺井崎に意見をしようとするが、手で制された。

「このままでは本艦に更なる被害が出る、やむを得ない」

「しかしそれでは艦長が……」

「構わない。責任を取るのは私の役目だ」

それ以上水下は何も言えず、復唱する。

「アスロック発射管制始め、目標不明潜水艦!」

黙々と諸元情報の入力が進み、その時がきた。

「発射管制アスロック、リコメンドファイア、撃て―っ!」

号令と同時に、前部VLSから勢いよくアスロックが撃ちだされる。

順調に飛翔するアスロックは徐々に高度を落とし、着水する。

着水したアスロックは、音を立てて潜水艦に迫って行った。


◆ 2015年 8月 3日 19時00分 ◆

◇ ?????? ◇

「几这个声音……万一!」*7

「舰长! ash锁急速接近中,就这样撞上!」*8

「回避运动! bent打开!」*9

「不行! 更加接近,回避是困难!」*10


◆ 2015年 8月 3日 19時03分 ◆

◇ やくもCIC ◇

「今だ! アスロックを自壊させろ!」

寺井崎の号令と共に、アスロック光点が消える。

隊員の手によって、潜水艦の数百メートル手前で自爆したのだ。

それでも、かなりの衝撃波が潜水艦を襲ったはずだ。

「臨検、短艇武装部署発動用意! 浮上と同時に発動する」

艦内がまた慌ただしく動き始める。

「訓練は年何回かしているが、実際の発動は初めてだな……」

寺井崎はそう思いつつ、海図に示された潜水艦を見つめる。

どこか嫌な胸のざわめきを感じるが、インカムで艦内に指示を出す。

「潜水艦の武装解除はまだ行なわれていない。

 不測事態に備え、対水・対空見張りを厳となせ!」

寺井崎の声が艦内に響いて行った。


◆ 2015年 8月 3日 19時05分 ◆

◇ ?????? ◇

「军舰内各处损坏大,修复绝望的,浮上中!」*11

「已经这里……吗」*12

「舰长……」*13

「停的不得。全部,到这里谢谢」*14

「说什么,不过,彼此彼此」*15

「在那边也精神……自己崩溃开始!」*16


◆ 2015年 8月 3日 19時07分 ◆

◇ やくもCIC ◇

遠くからの大きな爆発音が、やくもCICにも聞こえてきた。

寺井崎の予感は奇しくも的中する事になり、すぐに報告が上がる。

「艦長! 潜水艦が自壊、深度が急速に増加中です」

「シーホークを緊急発艦、周辺海域の浮遊物を探索!」

「了解しました」

目の前の海図からも潜水艦の場所から点が消えた。

数分の後、オイルの流出及び浮遊物が確認された。

周辺をツノブイによる再探査を行ったが、反応はなかった。

「対水、対空、対潜戦闘用具収め」

副長により復唱され、艦内へ久しぶりの平穏が訪れる。


「艦長!」

艦長室に戻ろうとすると、水下に呼び止められた。

「戦闘指揮を執っていたのは私です。ですから……」

寺井崎はそれを手で制すと、水下に向き直った。

「砲雷長。君はよく指揮を執って艦内をまとめてくれた。

 おかげで、被害をこれだけ小さくできた。感謝する」

「感謝なんて……私は責務を果たしたまでです」

「だから、後は僕の仕事だ。引き続き、艦内の指揮を頼む」

そう言い残すと、寺井崎はCICを後にした。

そして、やくもは留萌へ帰港することになるが……。

寺井崎は、この戦闘における指揮系統の混乱を招いたとして、

懲戒処分を受ける事になった。

処分の内容は不明だが、それなりの処分が下るだろう。

それらを余所に、やくもに不穏な影が迫っていた。

その影がやがて大きくなることを、誰が知っていただろうか。

皆一様に不安を抱えながら――留萌港へ帰港した。


※本文中の中国語の和訳に関して


*1「敵の被害具合はどうだ?」

*2「未だ確認できていません……」

*3「中々にしぶといな。流石日本のイージス艦という訳か」

*4「どうしますか?」

*5「チャフ弾頭を射出し、破砕と同時に全ミサイルで攻撃しろ。

 魚雷を撒いても構わん、必ず被害を与えるんだ」

*6「了解しました」

*7「何だこの音は……まさか!」

*8「艦長! アスロックが急速接近中、このままでは衝突します!」

*9「回避運動! ベント開け!」

*10「ダメです! さらに接近、回避は困難!」

*11「艦内各所ダメージ大、復旧は絶望的、浮上中!」

*12「もはやここまでか……」

*13「艦長……」

*14「やむ得ん。皆、ここまでありがとう」

*15「何を言うのですが、こちらこそ」

*16「あっちでも元気でな……自壊始め!」

皆様お変わりありませんでしょうか?

作者のSHIRANEです。

中々更新できなくて、本当に申し訳ないです。


一応、番外編を1つ挟みまして、次の第7章で完結の予定です。

自分としても、次の7章は書きたいことがたくさんあります。

ですので、楽しみは楽しみな章ですね(笑)

それ以外の作品ですが、順次更新して参りたいと思います。


さて、少し私の身の上の事をお話ししておきましょう。

合格を出してくれた裁判所も結局採用までしてくれず、

最終合格と言う空手形だけを残していかれました。

ですので、現在公務員試験を受験中です。

去年自分でしていたこととあまり変わらないので、

困っていることがほとんどないんですけど……(笑)

まぁ、その点だけご了承いただきたいと思います。


季節の変わり目を迎え寒くなってきていますね。

窓を開け放つのは結構ですが、くれぐれもほどほどに(笑)

では、また次のお話でお会いしましょう!


平成26年9月25日 SHIRANE

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