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護衛艦奮闘記  作者: SHIRANE
第5章 派遣
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番外編 「空を守るプライド」

番外編 「空を守るプライド」

▣ 2015年7月 20日 4時23分 ▣

▣ 那覇基地 航空管制室 ▣

『領空侵犯の疑い、国籍不明機が領空侵犯警告ラインに侵入。

 那覇基地、F-15Jスクランブル。繰り返す…』

スクランブル…日本語で言う所の「緊急発進」の事である。

年間500件以上領空侵犯に、24時間体制で対応している。

今日も、広域管制官から那覇基地の管制室に緊急通達が行われていた。

『こちら、那覇基地管制室。F-15Jスクランブル了解』

スクランブルに関する情報を手早くメモし、担当官に手渡す。

「F-15、ホットスクランブル!」

メモを手渡された隊員は、速やかにコンソールで警報を吹鳴させた。


▣ 2015年7月 20日 4時24分 ▣

▣ 那覇基地 当直室 ▣

「ウゥーウゥーウゥー!」

当直室に備え付けられている警報機から警報音が鳴り響く。

その音に反応して、弾かれた様に2人の隊員が飛び出していく。

アラートハンガーに続く扉を勢いよく押し開け、駆け抜けて航空機に乗り込む。

F-15J…「イーグル」の愛称の、日本の主力戦闘機である。

ハンガーでは警報吹鳴と同時に離陸準備がスタートしている。

隊員が操縦席に続く小さなラッタルを駆け上り、整備員も一緒に上がって、

隊員の装備の点検と不備がないかを最終点検する。

ラッタルが取り外されると、安全の為に固定されている武装が解除される。

短距離ミサイルがセットされると、前方の管制員から進入許可が合図される。

操縦席から親指を立てて返し、機体を前進させる。

『 SEA-STAR 01, Order Vector 250.

  Climb Angels 30, Contact channel 1, Read back. 』*1

航空管制官から無線で通告を受け、応答する。

『 SEA-STAR 01, Vector 250, Climb Angels 30, Contact channel 1. 』*2

『 SEA-STAR 01, Read back is correct. 』*3

指令内容を復唱し、滑走路手前と進む。

滑走路手前に着くと同時に、管制官から次の指示が送られる。

『 SEA-STAR01, Wind calm, runway 07 Clear for takeoff. 』*4

滑走路の進入許可と離陸許可が出され、復唱しつつ機体を前進させ準備する。

『 Roger, cleared for takeoff. 』*5

滑走路に進入すると、急速にスピードを上げて離陸する。

機体が少しずつ持ち上がり、体にも圧を感じる。

完全に機体が滑走路から離れある程度高度を取り、無線で報告する。

『 SEA-STAR 01 Airbone ! 』*6

ここからは那覇基地の航空管制官ではなく、

レーダーサイトの広域管制官からの指示を受けて飛行する事になる。

早速、担当の広域管制官から無線が入ってきた。

『 SEA-STAR 01 Loud and clear, Rader Contact. Vector 250, Climb angels 30. 』*7

『 SEA-STAR 01 Roger. 』*8

2機の機体が管制に従って方位250度、高度30,000フィートに上昇する。

『 SEA-STAR 01,Target 250/200, HDG 120, SPD 280, ALT 15. 』*9

『 SEA-STAR 01 Roger. 』*10

広域管制官からの指示を下に機体を操り、目標に向けて加速する。

右に機体を軽く傾けて曲がるとレーダーが目標を探知する。

『 Rader Contact ! 250/80, ALT 15. 』*11

探知した情報を広域管制官に報告し確認を取る。

『 That‘s Your Target. 』*12

『 SEA-STAR 01, Roger. 』*13

目標の国籍を確認するために、更にスピードを上げる。

近づくと特徴的な星形を視認することが出来、それも併せて報告する。

『 Target Nationality China 1 machine, HDG 120, ALT 15, SPD 280. 』*14

目標機から適正な距離を取って追尾し、目視とレーダーで常に対象を監視し続ける。

『 領空まで35マイル、通告を実施せよ! 』

広域管制官から新たな指示を受け、通告を開始する。

『 Attention! Attention! Attention!

Chinese Aircraft, Flying over East China Sea.

This is Japan Air Self Defense Force.

You are now approaching to Japanese air domain.

Take reverse course immediately! 』*15

領空侵入をする前に第一段階として当該機への通告を行う。

英語での通告後、僚機からも中国語で当該機への通告が行われる。

しかし、一向に当該機は変化を見せようとしない。

領空までの距離が詰まるほど緊張の度合いは増していく。

そんな中で、二回目の通告が行われる。

『 You are now approaching to Japanese air domain. 』*16

僚機が中国語の通告を挟み、変進を促す通告を入れる。

『 Take reverse course immediately! 』*17

中国語でも同様の通告を再度行う。

『 対象の行動に変化は見られず、写真撮影を実施する 』

当該機の行動記録の為、デジタルカメラでの撮影を行う。

『 目標領空侵入、領空侵犯機と判定された。警告を開始せよ! 』

日本の定める領空ラインを通過し、日本の領空へと入った。

広域管制官の指示通り、当該機への警告行動を開始する。

『 Warning! Warning! Warning!

Chinese Aircraft, Chinese Aircraft.

You have violated Japanese Air domain!

You have violated Japanese Air domain! 』*18

警告と並行して機体を左右に大きく振り、中国語での警告も僚機が行う。

『 Follow my guidance! 』*19

英語での警告の後に中国語で複数回警告を入れる。

しかし、警告に従う意思を確認することは出来ない。

『 目標の行動に変化見られず、信号射撃を上申する 』

少しの間を置いて、管制官から指示が送られる。

『 了解、目標に変化なし。信号射撃による警告を実施せよ 』

『 了解、信号射撃による警告を実施する 』

機体を軽く左に旋回させ、目標の上付近に照準を移動する。

『 We’ll give you signal firing! We’ll give you signal firing! 』*20

英語と中国語で信号射撃実施の旨を、再度警告する。

警告の後、信号弾が数発打ち出され弾ける。

信号射撃による警告から数分後、目標機は進路を変更し領空外へ出た。

『 目標の領空外への移動を確認、警告を中止。監視を継続せよ 』

『 SEA-STAR 01 Roger. 』*21

領空外退避後は目標機の監視を継続するが、

本国方面への進路を既に取っている所を見ると再侵入の可能性は低いか…。

パイロットがそう考えていると、再び広域管制官から指示が飛ぶ。

『 SEA-STAR 01, RTB. 』*22

『 Roger, SEA-STAR 01, RTB. 』*23

帰投の命令が下され、緩やかに機体を基地方向に向ける。

これで、ひとまず「領空侵犯対処」は終わりを告げた。


▣ 2015年7月 20日 6時00分 ▣

▣ 那覇基地 当直室 ▣

帰投し、F-15Jをアラートハンガーに駐機させ戻ってきた。

部屋に戻ると、コーヒーをコップに注いでから椅子に腰を下ろした。

「それにしても、ここ最近はスクランブル多いですね」

「あぁ、海自の護衛艦の戦闘が尾を引いてるかもしれんな…」

話しているのは、さっきまで空を駆けていた隊員達。

前者が、芹沢 優佳。第83航空隊所属の2等空尉で、女性である。

全国の航空自衛隊の基地の、しかもF-15Jのパイロットは数名しかいない。

芹沢は、ある人の推薦でパイロットになる事を許されたのである。

その人と言うのが後者…。

樋田 勉 3等空佐、第83航空隊の隊長でもあり、直属の上司である。

経験も豊富で、仲間からの信頼も厚い。

「しかし、今日で中国の侵犯は何件目でしたっけ? 」

手で数えるような仕草を芹沢がしているのを見止めると、

そっけない様で、しかしはっきり通る声で言う。

「記憶に残る限りで、26件目だな…」

樋田達が所属する「83航空隊」は、「南西航空団」の中に含まれる。

南西方面は沖縄を含む離島など幅広い範囲を指しているので、

その任務多様でありこの様な防空任務の他にも、海難救助もそうである。

最も、海難救助は「那覇救難隊」の仕事ではあるのだが。

「それにしても…何か嫌な流れですね…」

「あぁ、何か大きなことが起きなけりゃいいんだけどな~」

まぁ、と一言を置いて樋田が更に言葉を紡ぐ。

「自衛官だからな、何かあれば行くだけさ」

「そうですね」

そんな会話をして、芹沢もコーヒーをカップに注ぐ。

ほっとしたのも束の間、再びアラートの警報が鳴り響いた。

コーヒーカップを給湯器前に置き、再びアラートハンガーに走り出す。

本日2件目、27件目の領空侵犯対処の始まりであった…。



【小説に登場した英語の和訳 ※若干、異なる場合もあります…】


*1 『(コールサイン)、スクランブル指令、方位250度、

   高度3万フィートまで上昇、チャンネル1でレーダーサイトとコンタクト』


*2 『(コールサイン)、方位250度、高度3万フィートまで上昇、

   チャンネル1でレーダーサイトとコンタクト』


*3 『(コールサイン)、その通り』


*4 『(コールサイン)、風は微風、滑走路07からの離陸を許可する』


*5 『了解、離陸する』


*6 『こちらは(コールサイン)、離陸した』


*7 『(コールサイン)、無線の感明度良好、レーダーで捕捉した。

   方位250度、高度3万フィートまで上昇せよ』


*8 『(コールサイン)、了解』


*9 『(コールサイン)、目標機の方位は250度、距離200マイル、

   針路120度、速度280ノット、高度1万5千フィート』


*10『(コールサイン)、了解』


*11『方位250度、距離80マイル、高度1万5千フィートを

   飛行する目標をレーダーにて捕捉した』


*12『それが目標機である。目視確認を急げ』


*13『(コールサイン)、了解』


*14『目標機の国籍は中国、針路120度、高度1万5千フィート、速度280ノット』


*15『東シナ海上空を飛行する中国機に通告する。こちらは航空自衛隊である。

    現在貴機は日本の領空に接近中である。直ちに逆方向に変針せよ』


*16『現在貴機は日本の領空に接近中である』


*17『直ちに逆方向に変針せよ』


*18『中国機に警告する。貴機は日本の領空を侵犯している』


*19『誘導に従え』


*20『信号射撃を実施する』


*21『(コールサイン)、了解』


*22『(コールサイン)、帰投せよ』


*23『了解、(コールサイン)、帰投する』


皆様、いかがお過ごしでございますか?


作者の SHIRANE は元気に過ごせて…いると思います。


番外編で、私自身初めてとなる「航空自衛隊」を取り上げました。


スクランブルのデモを研究して、仕上げてみました…。


皆さんにどのように映ったのか分かりませんが、


ご期待に副えなかった部分は申し訳ないです^^;


番外編が終わりましたので、いよいよ第6章へ入って参ります。


自分自身どのようなストーリ運びにするか、決めあぐねています。


というのも、近い将来あり得る事態であるからです。


その際の事も少し考えながら、書いていけたらと思います。


今後も応援して頂けますと、幸いに思います^^


それでは…。



平成25年 4月 28日  SHIRANE

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