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護衛艦奮闘記  作者: SHIRANE
第5章 派遣
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第5章 第5話 「新たなる使命」

第5章 第5話 「新たなる使命」

▣ 2015年6月28日 1時25分 ▣

▣ 浦賀水道 観音崎沖4・7km ▣

「定刻通り、横須賀港に向け航行中。現在、観音崎沖4・7km。

 横須賀港第1バースまで、およそ20km」

レーダー員の報告がインカムを通じて艦橋に流れる。

「航海保安部署発動、対水上見張りを厳となせ」

寺井崎の命令に副長が艦内に向け復唱する。

「航海保安部署発動! 対水上見張りを厳となせ! 」

発令に合わせた警報が複数回繰り返され、そして止まる。

「第3哨戒配備から第1哨戒配備に」

「第1哨戒配備発令。繰り返す、第1哨戒配備」

艦内総員起こしが掛かり、全員が持ち場につく。

留萌港を出港して1日と少し…。

まだまだ陽が昇る気配はないまま、艦は浦賀水道を航行中だ。

しかし、ぼんやり見える横須賀港からは多くの光が見える。

深夜になってもまだまだ働いている人がいる…。

今更のように艦橋で、寺井崎は感慨深く感じていた。

「右前方800mに漁船1視認。警戒されたし!」

見張り員から多くの情報が艦橋に集められてくる。

その情報を元に操舵員が舵を微調整する。

他の要員がCICとも通信を取り合い、複数で事故を防いでいる。

2008年の「イージス艦漁船衝突事故」を背景に、

より一層見張り体制が強化された様にも感じられる。

艦はそうしている間にも、徐々に横須賀港に近づいていた。


「見張りより艦橋。目視にて横須賀港第1バースを視認」

海上自衛隊横須賀総監部もある自衛艦隊司令部の海域内に入った。

「入港部署発動。配置につき次第、入港作業開始」

副長により復唱されると、各々が配置に向かって走り出す。

「CICより艦橋。第1バースまで1000m、周囲レーダー感なし!」

「見張りより艦橋。こちらも目視にて確認、船舶はなし!」

CICからの報告に次いで、見張りからも詳細な情報があげられる。

「第1バースまで650m。前進微速、右舷側見張りを厳となせ」

「第1バースまで650。前進微―速。右舷見張り厳となせ!」

艦は徐々に速力を落し、ゆっくりと岸壁へと近づいていく。

「1バースまで300m。警戒を厳となせ」

岸壁が更に近づき、その上には作業待機の隊員が数名見える。

「1バースまで100m。機関停止、バウスラスター始動」

「1バースまで100。機関停止! バウスラスター始動!!」

復唱が艦内に流れ、やくもは岸壁までの距離を更に縮めた。

「バースまで0m。バウスラスター停止、もやい結べ」

「バスラスター停止! もやい結べ!!」

復唱を合図に、船首からもやいが陸側に投げられる。

作業待機していた隊員が手慣れた手つきで、直ぐに係留する。

「見張りから艦橋。もやい係留、接岸作業完了!」

見張りから接岸作業完了の報告を受け、寺井崎が艦内に令する。

「錨降ろせ。航海保安・入港部署を解除。

第1哨戒配備から第3哨戒配備、当直はそのまま持ち場に。

それ以外の要員は、令あるまで艦内待機―以上」

寺井崎がインカムを戻すと、水下が近づいてきた。

「艦長お疲れ様です。ここは私が、艦長は自室でお休み下さい」

「そうか、すまない。では、ここをよろしく」

寺井崎が軽く手を挙げて敬礼し、水下もそれに倣う。

艦橋から廊下に通じる扉を抜け、艦長室へと消えていった。


▣ 2015年6月28日 6時30分 ▣

▣ やくも 艦長室 ▣

浅い眠りに就いて数時間…不意に部屋のブザーが鳴らされた。

簡易ベッド近くにあるモニターで確認すると副長であった。

急いで身なりを整え、ベッドから抜け出して扉へと向かう。

「起こしてしまいまして申し訳ありません。実は……」

副長は内容を伝え終わると敬礼をし、CICへと戻っていった。

一方寺井崎はというと…。

「何だって…。まさか…いや、あの方なら来られても…」

軽い疑心暗鬼に見舞われている様子だが、誰が来るのか。

寺井崎は身支度を整えるべく、洗面台へ向かった。

制服に身を包むと、制帽を手にして部屋を飛び出そうとした…

その時、不意に部屋のブザーが鳴らされた。

扉の近くにいたので確認をせずに、寺井崎は部屋を空けた。

すると、目の前にいたのは…。

「相変わらず、そそっかしさは抜けとらんな…」

目の前に幹部自衛官の制服で立っているこの人はと言うと…

「小暮学校長!? まさか、本当に来られているとは…」

寺井崎は驚いた様子を隠せず、扉を勢いよく閉めようとしたが

「ガチッ!! おいおい、驚きすぎだろ?」

小暮学校長は、扉の間に素早く足を挟み閉めようとするのを防ぐ。

寺井崎も我に戻り、扉から手を放して扉前に直った。

「ところで、今日はどうしてここに…?」

説明をコロッと忘れていたが、少しだけ説明しておこう。


小暮 葵。御年…確か、52。

階級は海将補で、江田島幹部学校の学校長である。

寺井崎も幹部学校時代お世話になり、それ以来会うのは久しぶりであった。


「いや~なに、お前が海外派遣されるという話を小耳にはさんでな、

 横須賀に寄港した時に行こうと思っていたんだ。

 どうせ行くならまだ起きていない位がいいかと思って、

 当直に無理を言ってしまったな…まぁ、水下も教え子の1人だがな」

そう、小暮海将補といえば…こういった類の事が大好きだったな…。

まさに「不意打ち」という言葉を体現した様なお人だ。

そこで寺井崎はあることに気付いた。

「まぁ、小暮学長。何もない部屋ですが、良ければ中へどうぞ」

「そうかね、いやすまないな。では、失礼するよ」

小暮を応接席に案内して、寺井崎はコーヒーメーカの電源を入れた。

設定をして1杯目を入れている間に、手近の棚からお菓子を何個か取り出す。

2杯目を入れ終わると、それをお盆に乗せて応接席に戻った。

テーブルにコーヒーとお菓子を置き、自分も椅子に掛ける。

「すみません、これぐらいしかできませんが…」

「なぁに、これだけできれば上等だ。こんな他艦じゃ、まず出てこん」

コーヒーを一口含んで、本題を切り出した。

「ところで小暮学長、ただ来ただけではないのでしょう?」

お茶目な人ではあるが、決して無駄なことはしない人だ。

「そこらへんも変わっとらんな~。その通りだ」

2人は顔を寄せ、少し声を抑えて小暮が話し始めた。

「実は、ソマリア沖の治安状態がここ数年で最悪らしい。

 情報筋から上がってきたのだが、先日も襲撃事件があったそうだ。

 最新鋭の装備ではあるが、一応言っておこうと思ってな…」

「そうですか…。治安が悪化しているのは何となく掴んではいましたが、

 最近事件がありましたか…。」

「まぁそれだけだ…。何が起こるかわからんから、気を抜くなよ」

小暮はそう言うと席を立ち、制帽を被り直した。

扉の前に立って寺井崎の方を向き、軽く敬礼をした。

あわてて、寺井崎も敬礼の姿勢をとる。

「お送りいたしましょうか?」

「大丈夫だ。それでは、任務に励むように!」

「はい、今日はありがとうございました」

小暮は艦長室を後にして、艦外へ続く通路を歩いて行った。


▣ 2015年6月28日 10時00分 ▣

▣ 横須賀港第1バース前 ▣

ここ横須賀港第1バースには、大勢の人が詰めかけていた。

海上自衛隊横須賀地方総監部に面しているここではあるが、

今日はいつもと違うことが1つある。

いつもは停泊していない第1バースに、2隻停泊している。

もちろん停泊しているのは「やくも」と「しきしま」である。

すぐ横の第2バースには「さきしま」も停泊している。

そして、第1バースには隊員達が列を成して並んでいる。

そう、今日はここで「ソマリア沖海賊対処派遣」の派遣式が行われる。

10時ちょうど、式は厳かに開始を告げた。


「只今より、第1次ソマリア沖海賊対処派遣式を執り行います。

 始めに、防衛大臣訓示…総員、敬礼!」

敬礼が解かれると、奈川防衛大臣が壇上に上がる。

「これから、皆さんは日本の国益を守るために派遣されます。

 その作戦は、どのような不測事態に見舞われるかわかりません。

 護衛活動を終え、総員が無事に帰還する事を祈っております」

奈川は隊員達の事を気遣い、短めに切り上げた。

その後は、横須賀地方総監部司令の訓示を終えて、隊員の家族面会の時間だ。

海外派遣ということもあり、1か月以上会うことが出来ない。

護衛艦という特性上、気軽に電話というわけにもいかない。

限られた場所でしか通話もできないので、しばらくお別れである。

家族面会が終わったものから同じ場所に隊員達が整列し直し、

寺井崎を先頭にして再乗艦する。

寺井崎は艦内に入ると、一度艦橋に入ってインカムを手に取った。

「艦長より総員に達する。総員持ち場につき、出港用意。

 出入港・航海保安部署を発動。当直員以外は、総員艦橋通路に集合せよ」

寺井崎もインカムを置くと、艦橋の外にある通路に出た。

第1バースには、多くの見送りの人であふれている。

中には、派遣反対の横断幕を持った人も見られた。

様々人の思いを胸に、やくもは出港の準備を終えた。

手持ちインカムを艦橋から出してきて、艦橋通路から総員に令する。

「もやい放て。出港、バウスラスター始動。総員、帽振れ~」

艦が少しずつ動き始め、第1バースが離れていく。

ある程度離れたところで、当直員の水下が操艦指揮を執り横須賀港を後にする。

一路寺井崎たちは、佐世保港にて護衛船舶と合流し、

ソマリア沖へとかじを取ることになる。

これから起こることはまさに未知数で、寺井崎も不安の方が大きかった。

3隻の航跡は、白い泡を描きつつそれぞれ南進に舵を取って行った。


読者の皆様、改めましてありがとうございます。


作者のSHIRANEです…覚えておられますでしょうか?


私用が立て込んでおりまして更新が出来ずに居りましたが、


少しずつ色々な更新を進めていきたいと思っております。


現在構想では「蒼学生徒会」の全面改訂を主軸に、


「護衛艦奮闘記」「Blue Collect」の更新も進めたい所存です。


更新の間が空き、皆様をモヤモヤとさせてしまうかもしれませんが、


(というより、していただけたら幸いに違いないんですが^^;)


次回の更新までお待ちくださいまし^^


何かご意見等々ございましたら、何なりとお申し出ください。


今後とも、応援いただけますと幸いに思います。


寒い日が続きますので、皆々様お体にお気を付け下さい。


2013年2月10日 SHIRANE

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