表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
護衛艦奮闘記  作者: SHIRANE
第5章 派遣
32/49

第5章 第4話 「礎を築くために…」

第5章 第4話 「礎を築くために…」

▣ 2015年6月25日 11時30分 ▣

▣ 首相官邸 1F 記者会見室 ▣

ここ記者会見室には、5日前と同じように記者が集まっていた。

今回は、記者だけでなく主要テレビ局も入っているようだ。

今日登壇する閣僚は…。


登壇台の手前の国旗に一礼し、中央へと足を進める。

中央へ立ったところで、記者たちへ向けてまた一礼をする。

身体を起こしきったところで、本日の ”役者” が話し始めた。


「防衛大臣の 奈川 康太郎です。

本日はご多忙の中、お集まり頂き誠にありがとうございます。

私からは、先日首相よりお話があった通り、ソマリア派遣に関して…」


前置きを挟み、手元の冊子を順々に開きながら話進める。


「まず、改めてソマリアに派遣される部隊に関してお話し致します。

第5護衛艦群所属 『やくも』  寺井崎 護 2等海佐以下、250名。

同護衛艦群所属 『しまゆき』  横田 拓海 2等海佐以下、210名。

同護衛艦群所属 『さきしま』 江崎 國彦 2等海佐以下、150名。

以上、総員610名をソマリアに派遣致します。

 前回の会見時に『しきしま』とご報告致しましたが、誤りでした。

 以上3隻並びに、海上保安庁より保安官8名が分乗・任務に当たります」


そこまで話終えた所で、記者から手がチラホラと上がる。

「では、そこの記者の方どうぞ。」

奈川が1人の記者を指名して、その記者が質問する。

「朝日新聞社の飯岡です。

今回派遣される護衛艦は、いったいどの様な経緯で選出されたのですか?」

質問を受け、奈川が話し始める。


「まず、実戦での経験があることを重視致しました。

 派遣の特性上、想定外の攻撃を受ける可能性も否定できません。

 その際に、自艦や僚艦を守る事が可能であるという事も考慮しています。

 『やくも』艦長は、先の兵庫県沖不審船事案での対処を行い、

 『しまゆき』に実戦はありませんが、新型防空艦という事に考慮しました」


記者が座ると、周りの手も落ち着いた。

「では、続けさせて頂きます。」


「派遣日は変わらず、6月28日から別命があるまで。

派遣部隊指揮官は、寺井崎 護 2等海佐と致します。

尚、護衛船舶に関しましては一般社団法人 日本船主協会(JSA)に別途通達し、

先遣派遣終了後、即時護衛活動を実施する予定としております。」


また違う所から、手が上がる。

「では、そこの記者の方。」

「読売新聞社の福丸です。護衛対象となる船舶はどのようなものでしょうか?」

記者の質問に、奈川が手元の資料の最後をめくる。


「まず、先に申し上げておくことが御座います。

明日開かれる臨時会において、海賊対処法案が可決される予定です。

既に、民主・公明などの賛成を得ており、それにより内容が変化致します。

 第1に、護衛対象は日本船籍のみならず、全船籍に拡大されます。

JSAから護衛要請があった場合、又は関係各国からの要請で護衛を行います。

第2に、船体への威嚇射撃等も現場指揮官の命により可能となります。

これは、派遣部隊の安全を最優先で確保する為であります。」


記者が座ると、続いて手があがる。

「では、そちらの方」

「フリーの水河です。という事は、海上保安官もそれに準拠するのでしょうか?」

「そういう事になります」

記者の手がすべて下りると、奈川が全体向けて尋ねた。

「以上で会見は終了ですが、他に質問はありませんか?」

今日も手は上がらない。

「では、定時ですので終了させて頂きたいと思います。

本日は、ご参集ありがとうございました」

入ってきた時と同様にして、記者会見室を後にした。

奈川が退室したと同時に、会見室から記者が飛び出していった。

夕刊に間に合う時間だから、これは差し替えかな…。


▣ 2015年6月26日 13時00分 ▣

▣ 国会議事堂 衆議院本会議場 ▣

「では、採決を行います。賛成する者はその場で起立願います。」

概ねの予想通り、自民・民主・公明が起立し定数に達した。

「海賊対処法案は、賛成多数により可決されました」

衆議院議長が宣言すると、閣僚席から閣僚が全員一礼をする。

これで、派遣するお膳立てが出来たというわけだ。

国会は採決を終えると、次の法案へと移って行った…。


▣ 2015年6月26日 19時00分 ▣

▣ やくも CIC ▣

CIC(=戦闘指揮所)には、やくもの所属長がいつもの様に集合している。

ただ1つ違うのは、他艦の艦長と副長が参加している事だろうか。

CICは薄暗く、電子海図などの明かりがより明るく見える。

「では、只今より合同ブリーフィングを始めます」

寺井崎はそう切り出し、各員がきっちりとした敬礼をする。

「今日集まって頂いたのは、明日からの派遣に関して。

では、正面の海図を交えながら進めていきます…水下、頼む」

「はい、了解です。」

水下は手近の端末を操作して、海図に明日の航路を表示させた。

「まず、本艦群は結成式が行われる横須賀港に向けて、

本日2100に留萌を出港します。明日夕刻には到着できる見込みです。

横須賀での結成式終了後、給油を行い直ちに護衛を開始します」

水下が端末をまた操作し、画面が移り変わる。

「モニターに出ているのが、本艦群が最初に護衛を行う船舶の詳細です。

先程日本船主協会(=JSA)からFAXで到着しました。」

CICの中を資料の捲る音が、静かな空間を満たしていく。

「…以上で、私からの派遣内容に関する報告を終わります。」

水下が一礼し、元の位置に戻る。

着席したのを見計らって、寺井崎は立ち上がった。

「今回の派遣は、日本の国益を守る上で重要な作戦とされます。

国外派遣という特性上、どのような事態が発生するかわかりません。

どれだけ困難な状況であろうと、日々の訓練の成果を如何なく発揮して下さい。

本日2100時の出港に備えて各艦急ぎ準備を。

それでは、解散して各自持ち場に戻って下さい」

寺井崎が話し終わり敬礼をすると、各員それに倣う。

敬礼を終えると、各員が急ぎ足でCICを後にした。

寺井崎も出港準備を行うために、艦長室へと戻って行った。


▣ 同日 21時00分 やくも艦橋 ▣

『出港用意。もやい放て』

寺井崎は艦橋にて久しぶりに操艦指揮を執っていた。

『出港用―意。もやい放て―』

副長兼航海長の今田も、艦橋にて復唱している。

留萌港を出港するのは、「やくも」「しまゆき」「さきしま」の3隻。

それぞれ、津軽海峡から太平洋側に抜けるルートになっている。

『航海指揮を航海長に委任』

湾外へ出ると、寺井崎は今田の方を向いて令する。

『委任されました』

今田が敬礼をしつつ返すと、寺井崎は艦橋の外に出た。


『今日は久しぶりに雲が晴れて…星がよく見えるな』

寺井崎が艦橋に出て空を見上げて言った。

『『お疲れ様です!!』』

当直に就いていた1士が、揃って声を掛けてきた。

『ご苦労。僚艦の様子はどうか?』

『はっ、「しまゆき」にあっては後方4kmを航行中。

「さきしま」にあっても等間隔で航行中です』

『了解した。引き続き、当直の任に』

そう言うと2人は元の場所へ戻っていった。

『さて、CICに1度戻ろうか…』

寺井崎はそう呟いて艦橋を後にすると、CICへ向かった。


▣ 同日 21時25分 やくもCIC ▣

『艦長、CIC入られます!!』

入口の所で若い曹長がCICに声をかける。

全員が入口に向き直り敬礼をしてから、元の配置に戻る。

CICを見渡すと、水下が近づいてきていた。

『艦長、第3哨戒配備発令を具申します』

『許可します…というより、今発令に来たんですけどね…』

水下が「失礼しました」と敬礼をしている間に、

寺井崎は艦内向けのインカムを手にとった。

『艦長より総員に達する。本艦は現在、横須賀港へ向け航海中です。

 横須賀港入港まで、艦内全部署に第3哨戒配備を発令する。以上』

第三哨戒配備は、通常航海ではオーソドックスな配備体制である。

3交代で当直に当たるので、負担も比較的少ない。

ソマリアに派遣されるとこうもいかないので、

今のうちに気分を休ませておいてもらう狙いもあるのか…。

赤を放つ左舷航海灯…。

緑を放つ右舷航海灯…。

その光はどちらが明るい訳でもなく、均衡した光を放つ。

それはまるで、今の「やくも」の状況を表しているかのようだった。


寺井崎 : 『寺井崎と~』


水 下 : 『水下の~』


寺&水 : 『護衛艦「やくも」のラジオ…略して【やくラジ】!!』


水 下 : 『さてさて今日も始まりましたこのコーナー!!』


寺井崎 : 『っても、8ヶ月ぶりの更新だけどね…』


水 下 : 『……』


寺井崎 : 『……』


寺&水 : 『……』


寺井崎 : 『これって、もう放送事故だよね?』


水 下 : 『それ言っちゃ…おしまいです』


寺井崎 : 『さて、気を取り直してまいりましょう!』


水 下 : 『さぁ、やくもは言いますといよいよ派遣ですね』


寺井崎 : 『やっとだね?』


水 下 : 『そもそもなんですけど、第1回護衛ってどうなるんですか?』


寺井崎 : 『予定では、横須賀港で結成式と給油作業を終えたら、


       先遣派遣も兼ねて第1回護衛を始める筈だよ~』


水 下 : 『派遣中は、第1哨戒配備を常時発令ですか?』


寺井崎 : 『いや、危険性の高い海域はそうだろうけど…。


       通常海域では、第2配備が妥当じゃないかな?』


水 下 : 『そうですか!』


寺井崎 : 『なんでだい?』


水 下 : 『そりゃ部下に……いえ、何も』


寺井崎 : 『…まぁいいか。という感じで話が進みます。』


水 下 : 『じゃあそろそろ、作者に言い訳させますか?』


寺井崎 : 『いや、そこは「弁明」ぐらいにしてあげなさい』


水 下 : 『というわけで、第2回「やくラジ」は……』


寺&水 : 『作者にマイクをお返しして終わります!』



……。


というわけでしたが…本当更新できなくて申し訳ありませんでした。


何かと勉強に熱を入れていたらこの話のことを忘れて…(ゲフンゲフン)


そんなことなんてない…ですよ?


これから少しずつ続きを書き進めていきたいですね。


来年中には完結…出来たらいいんですけどね^^


とりあえず…温かい目でこれからも応援して頂けたらと思います。


それと…自衛隊用語についてご不明な点、訂正がございましたら、


お気軽にお申し付け下さいませ。


できるだけ注意しておりますが、私も人間ですので申し訳ないです^^;



あとは宣伝になりますが…。


同時執筆中の『Blue Collect ~失われた過去と今~』も宜しく!!


今年も残り少なくなってしまいましたが、


来年も執筆を頑張ってまいりたいと思いますので……


皆様健康に気をつけて、残りを過ごしましょうね!!


それでは、またどちらかの更新でお会い致しましょう。


PS. 読者の方でアドレス交換したい方は、お気軽に^^


2012年12月18日 SHIRANE

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ