第4章 最終話 「かけがえのないモノは?」
第4章 最終話 「かけがえのないモノは?」
▣ 2015年6月15日 12時25分 ▣
▣ SH601機内 ▣
「あぁ・・・新栄丸が沈んでいく・・・。」
船長の石堤は、SHの外を見ながら呟いた。
救助員をピックアップしてすぐ、新栄丸は海へ飲まれた。
奇跡的な事に、船員にケガ人は誰ひとりでなかった。
視線を機内に戻して、石堤はある事に気付いた。
「(家族が持たせてくれた御守はどこだろう・・・。)」
微かに湿ったポケットを探るが、何処にも見当たらない。
「(若しかして、私達の身代りとなってくれたんだろうか・・・。)」
生きて帰って来られた事を噛みしめ、ヘリは更に進んでいった。
▣ 同日 やくも発着艦指揮所 12時35分 ▣
ヘリは最速で飛ばし、10分でやくもの上空へと到着した。
「こちらSH-601。やくもLSO、着艦指示を願います。」
LSOに回線を合わせ、着艦の準備を整えた。
重傷者もいないのでやくもへ搬送し、そのまま陸へ運ぶ手筈だ。
「こちらやくもLSO。着艦を許可、現在は西風2m・艦の動揺は大きめです。」護衛艦への着艦は、とても難しいとされている。
何故なら、陸とは違い船は常に動いているからだ。
その為、海上自衛隊の航空科員は技術が軒並み高くなるというわけだ。
航空自衛隊にも着艦出来る人材は居るであろうが、それを確かめる機会は無い。
「SH-601了解。西の風2m、艦動揺大、着艦支援システムオールグリーン。」
ヘリは艦尾より徐々に近づき、高度を下げて行った。
着艦間際のこの時こそ、パイロットが一番神経がすり減るのだろう・・・。
「着艦位置到達・・・2m・・・1m・・・はい着いた!」
ガクンと位置だけ揺れ、ヘリが船に着艦した。
「ベアトラップ設置!! 着艦固定急げ!!」
格納庫より隊員達が飛び出してきて、素早く固定をすませる。
「着艦固定完了!! 」
作業員の合図を受けて、機内から次々出てくる。
救助者が出たのを確認して、木村と河野は操縦席を後にした・・・。
▣ 同日 食堂 12時45分 ▣
助け出された石堤らは、ひとまず食堂へと案内された。
やくもも、訓練行程を中止して留萌港へ帰還中だ。
食堂へ入って暫くすると、艦長の寺井崎2佐がやって来た。
立ちあがって敬礼をしようとすると、寺井崎がそれを手で制した。
「いいから、座っていて下さい。」
寺井崎からそう言われ、上げかけた腰を再び下ろす。
「私が艦長の寺井崎と申します。あなたが船長の石堤さんですか?」
石堤は手に持っていたお茶をテーブルに戻して、寺井崎に向き直った。
「はい、私が新栄丸船長の石堤です。今回は、ご厄介になっています。」
石堤は頭を深々と下げた。
「いえいえ、船に乗っている時に起こるかもしれない事ですので・・・。
何より、誰ひとりお怪我がなかったことが何よりです。」
「はい、速やかな救助を本当に感謝している限りです。」
寺井崎は石堤と軽く話すと、下士官に世話を任せ艦長室へ戻って行った。
留萌の港も、あと2・3時間で見えてくる事だろう。
▣ 同日 やくも艦橋 14時45分 ▣
「前方に留萌港を視認。入港許可を願います。」
2時間をかけて、やくもは留萌港へ到着した。
「入港を許可、入港準備部署発動!! 入港準備急げ!!」
寺井崎が手短に命令を下すと、艦内が俄かに慌ただしくなってきた。
「両舷前進微速! バウスラスター作動!! 所定埠頭へ入港。」
寺井崎の命を聞き、艦内へと復唱される。
「バウスラスター作動、両舷前進微速!! 所定埠頭入港始め!!」
航海科員は艦外へ出て、舫いの準備に取り掛かっている。
先程まで降り続いた雨は、霧雨へと変化していた。
やくもはゆっくりと留萌港内へ入り、いつもの埠頭を目指した。
「各部署、入港作業監視を厳に!!」
寺井崎が艦内へ向けて令した。
埠頭にはすでに、作業員が待機している。
船はやがて、彼らの待つ埠頭へ到着した。
「投錨!! 舫い固定急げ!!」
錨が下され、船は元の場所へと収まった。
埠頭には数台の救急車が救助者の搬送を待っている。
「要救助者を救急隊へ搬送、引き継ぎを急げ。」
やくもへ収容された要救助者は、隊員に連れ添われ無事地面に足を着けた。
石堤らは念のため、病院で検査を受ける予定である。
長く感じられたその時は、無事救われたのだろう。
寺井崎も報告書をまとめ、総監部へ出頭をしなければならない。
なんせ、訓練が一回無くなってしまいましたから。
けれど、人命が救われた事が何よりの成果だと寺井崎は思っている。
「訓練にも要救助者搬送訓練って言うのがあったしな・・・。」
実戦にまさる訓練は無い・・・。
やくものクルー達は、また1つ大切な事を学べた。
どの様な事でも、人の命が最優先であるという事を・・・。
▣ 同日 19時00分 首相官邸 ▣
「では、これで閣議決定とみなしてよろしいですね・・・。」
首相官邸では、閣僚が集められ会議が行われていた。
しかし、いつもとは雰囲気が心なしか重たく感じる。
「えぇ、基本的にですが・・・・・・」
話は更に進んでいく様子であった。
この閣議こそ、やくもには大きな決断であっただろう。
果たして、閣僚たちは何を決めようとしているのか・・・?
どうも、作者のSHIRANEです。
やっと、第4章が完結しました。
内容は・・・まぁとしまして、皆さんから見てどうなのでしょう?
かなり自己満足な文を書いている気もしますが、それでも
読んで頂いている読者の方にはただただ、頭の下がる思いです。
一応、この話しも進め参りますが・・・
他の作品の方にも着手していきたいと考えております。
自分的には、学園モノも書いてみたいのですが・・・。
何はさておき、これからもSHIRANEをヨロシクお願いします^^