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護衛艦奮闘記  作者: SHIRANE
第4章 演習
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第4章 第4話 「空からの救助者」

第4章 第4話 「空からの救助者」

▣ 2015年6月15日 11時10分 ▣

▣ SH601機内 ▣

「レーダー、未だに遭難船舶の機影を捉えられません。」

河野がレーダーを見ながら、木村に報告する。

「こっちは全然ダメだ・・・。視界が悪すぎる。」

相変わらず機の外は激しく時化ており、零視界に近い。

「河野、海保のヘリに状況を聞いてみろ。」

「はい、了解しました。」

そう言うと無線機を操作して、海上保安部の周波数に合わせる。

「こちら海上自衛隊護衛艦「やくも」所属SH-601。

 遭難船捜索従事中の海上保安庁のヘリは、応答されたい。」

暫くの間沈黙を保った無線機が、ガガという雑音と共に鳴り始めた。

「こちら函館保安部所属「くまたか1」。SH-601、どうぞ。」

どうやら捜索従事中のヘリと無線がつながったようだ。

「現在の捜索状況を知らされたい。当方にあっては、依然発見に至らず。」

河野がそう言うと、すぐに返答が返ってきた。

「こちらも未だ遭難船発見に至らず。現在、最終発報地点10kmを捜索中。」

「SH-601了解。当方も最終発報地点から5kmの範囲を捜索する。」

「くまたか1号了解。」

交信を終わると、無線周波数を元に戻す。

外は暗さが包みこんでいた。

すると、海面に何かが光ったような気がした・・・。

「機長、あそこの海面に何か光っていませんか?」

「どこだ・・・?」

木村が海面によく目を凝らして見ると、確かに何かが発光している。

「少し近づいてみるか・・・。揺れるから、しっかり掴まっとけ!!」

ヘリが勢いよく降下を始める。

海面があっという間に近づき、高度も250mになった。

「機長、あれは遭難船ではないでしょうか?」

「わからん・・・。しかし、なんか発光信号でも打ってるようだな。」

「河野、ヘリカメラの映像をやくもへ転送して解析してもらえ。

「了解です。」

河野は慣れないながらも、機器を操作して転送の準備を整えた。

「SH-601からやくも。光源の解析を願います、転送します。」

映像をやくもへ転送しながら、木村はホバリングを続けていた。

「やくもよりSH-601宛。解析の結果、当該船舶と判明。

 補助員一名を、当該船舶へ降ろして一度本船へ帰艦せよ。」

捜索していた船が、この船と認められたのであった。

「了解した。補助員一名を下し、帰艦する。」

降下要員に物資を軽く持たせ、ウインチで船へと降下させる。

「位置そのまま・・・・・・・・・・・はい、着いた。離脱完了!」

後部に乗り込んでいる隊員が、降下要員の離脱を確認した。

「了解、ホバリング解除。一度、やくもへ帰艦する。」

ヘリを反転させ、やくもへと進路をとる。

新栄丸から次第に、ヘリは離れて行った・・・。


▣ 同日 新栄丸船尾 11時20分 ▣

「船長!! ヘリらしきものが近づいてきています!!!」

「本当か!?」

「はい!!」

無線故障を受け、船尾では交代で発光信号を打ち続けていた。

船長は元々、保安庁で信号を担当していたのでこれを思いついたのだ。

やがて、ヘリから1名の隊員が船尾に降下してきた。

しかし、ヘリはどうやら本船から離れているようだ・・・。

「海上自衛隊です! 船長の方はいらっしゃいますか?」

まだ若そうな隊員が、私を呼んでいるようだ。

「はい、私が新栄丸船長の石堤です。」

「船の詳しい状況を教えて頂けますか? 後、ケガ人は居ないですか?」

石堤は、その隊員に船の詳しい状況を説明した。

「ケガ人は無しで、エンジンが故障しているんですね。浸水も無し・・・。」

「はい、その通りです。」

「分かりました。もう少しで応援が到着しますので、頑張って下さい!」

隊員は持ってきたカバンから、簡易型の無線機を取り出して交信を始めた。

「こちら航空科所属、橋立3尉です。やくも、応答願います。」

初めて、その隊員の名前を聞いたような気がした。

少し間が空いて、無線がガガッと音を立てた。

「こちらやくも、橋立3尉状況を知らされたい。どうぞ・・・」

「了解、負傷者は無いですが、エンジン・無線計器類が故障。

 自力による避難は困難とみられる。早急な、救助を要請するものである。」

また暫くの間が空いて、無線が鳴り始めた。

「現在本艦は、貴船に向けて進路をとっている。到着予定は、1135時。

 それまで、当該船舶の船員の安全を確保せよ。以上、交信オワリ。」

無線機を鞄に戻すと、再び船員に向き直った。

橋立は船員に不安を感じさせないように、必死に笑顔を保っていた。

船員たちもまた、少しだけ安心を感じ始めていた。

橋立が船員を見渡していたその時、船の前から船員の1人が走ってきた。

船員は、どこか慌てている様子である。

「船長大変です!! 破損個所不明なるも、船前より浸水確認!」

「何!? 船はどのくらい持ちそうなんだ?」

船長も冷静さを保ちながら、船員に尋ねる。

「破損状況は詳しく掴めていませんが、持って30分~1時間かと・・・。」

橋立もそれを聞いて、やくもへ再び交信を行う。

「至急、至急。やくも応答願いたい!」

少し間をおいて、無線機から声が聞こえて来た。

「こちらやくも。橋立3尉、どうしましたか?」

「新栄丸の船前より浸水が発生。傾斜角上昇中!!至急の救助を要請する!」

無線状況が悪いのか、少しまた間が開く。

「・・現在保安庁のヘリが急行中。SHも補給完了、現在急行中。

 ヘリ到着次第、船員の救助活動を優先的に実施せよ!! 以上」

「橋立3尉、無線了解。交信オワリ」

無線を戻すと、船員に聞こえる声で指示を出した。

「救命胴衣をしっかりと着て下さい! 船尾の方へ集まっていて下さいね!!」

船員達は胴衣の確認を済ませると、ワラワラと船尾へ集まり始めた。

海は、未だ穏やかさを見せる気配はない。

橋立が船尾に集め終わると、遠くからヘリのプロペラ音が微かに聞えていた。

音のする方へ目をやるが、零視界の中で確認は難しかった。

ヘリの音は、次第に強まって行った・・・。


▣ 同日 くまたか1号機内 11時25分 ▣

機長の天見は、零視界の中微かな光を元に進んでいた。

「副機長、距離はどのくらいだ?」

前に集中しながら、副機長に確認をとる。

「もうそろそろの筈です・・・。到着次第、救助を開始しますか?」

「勿論だ。しかし、全員の収容は難しいだろう・・・。」

「はい・・・。残りは、SHにお願いするしかないですね。」

「まぁ、乗せれるだけ早く乗せて帰還するとしよう。」

そうこうしている間に、ヘリは光源の真上へ到着した。

「保安くまたか1号より、新栄丸捜索従事中各局宛。

 現在、当該船舶上空に到達。現在時より、救助活動を開始する。」

無線を入れ終わると、後部ハッチ乗っている隊員の1人が降下準備に入った。

「機長、後2m右でホバリングお願いします!!」

「了解。」

ヘリの操縦桿を少し動かして調整すると、そこで固定した。

「ホバリングよし! 降下、開始して下さい。」

後部ハッチが開き、風が機内に吹き込んでくる。

「前よし、カラビナ・スライダー結着、降下位置クリア! 降下!!」

掛け声と同時に、ヘリから新栄丸へ降下を始めた。

「後2m・・・1m・・・はい着いた。」

降下員の降下を確認すると、直ちに救助を開始した。

1人が下で要救助者を補助し、浮輪上の中にくぐらせる。

1人、また1人とヘリの中へ収容されていく。

「機長、これ以上の収容は不可能と判断。SHへ応援要請を。」

ヘリのギリギリの定員になってしまったようだ。

降下員はそのまま、SHの補助として船に残る。

「保安くまたか1号より、SH601宛。

 現在本機は、収容定員に到達。引き続いて救助を要請する。」

少しの間を開けて、女性の声で応答があった。

「こちらSH601。支援内容受諾、引き続き救助を行います。」

「保安くまたか1、了解しました。宜しくお願いします。」

そう言い終わると後部ハッチを閉め、北海道の空港を目指した。

くまたかの後を受けた木村達は、素早く新栄丸上空につけた。

「ホバリングよし! 引き上げお願いします!!」

ハッチが開き、残りの人が次々収容されていく。



▣ 同日 新栄丸座礁海域 12時25分 ▣

そして、支援員の2人をヘリに引き上げた刹那・・・

船が遂に、北海道の海原の藻屑となって消えて行った。

ヘリは海域を一転し、やくもを目指して飛び去っていった。

丁度、救助開始から1時間の事であった・・・。




皆様、大変お久しゅうございます。作者のSHIRANEです。

(なんか、変な日本語ですね・・・。)

長々と続けてしまって、反省の念を抱き始めた所です^^;

一応、次の5話で4章は終了となります。

その後はですね・・・国外派遣でもしてみましょうか・・・。

あっ、まだ考えている所ですの期待はしないで下さいね^^;


余談ですが、また新しい小説も書いていきたいなぁ~と思っております。

最後にですが、読んで頂いた皆様に改めてお礼を申し上げます。

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