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護衛艦奮闘記  作者: SHIRANE
第4章 演習
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第4章 第3話 「雨の救難信号」

第4章 第3話 「雨の救難信号」

▣ 2015年6月15日 10時23分 ▣

▣ やくも第3区画廊下 ▣


救難信号の受信を受けて、艦内は慌ただしかった。

やくもがいる海域は風雨が激しく、すぐに海保が到着できないらしい。

それに伴って、第1海上保安本部から要請を受け捜索する事になった。

艦内では緊急知らせるサイレンが、鳴り響いていた。

「海上救難部署発動!! 総員、所定配置に急げ!!」

副長の声が艦内に流れる。

寺井崎も艦長室に戻り装備を整えると、CICに向かった。

艦の外は一向に雨が止む気配は無かった・・・。


▣ 同日 10時25分 やくもCIC ▣

CIC内は慌ただしかった。

新栄丸からはいまだ、救難信号が発報され続けている。

「西村、新栄丸と無線はつながらないの?」

水下がそう尋ねると、西村は首を横に1度振った。

「いいえ。無線機材が故障しているのか、何度試しても繋がりません。」

どうしようか考えていると、丁度寺井崎がCICに入ってきた。

「どういう状況になっているのですか?」

寺井崎が状況を尋ねて来たので、水下が軽く説明をする。

寺井崎は少し考えてから令した。

「航空科に緊急発艦の準備を!! レーダー、ソナー、艦橋監視を強化!!

 遭難船の早期発見に努めるぞ。各員、準備にかかれ!!」

寺井崎の命令を受けて、各員がそれぞれに慌ただしく動き出す。

一方で、海は今にも増して時化始めていた・・・。


▣ 同日 10時28分 ????? ▣

「どうだ、無線は直ったか!!」

切迫した声が船の中を通り抜ける。

「ダメです!! レーダーは生きてますが、無線は動きません!!」

先ほどの男より若い男がそう返した。

「くっ、救難信号は出したのか!!」

「はい、近くに護衛艦が航海しているようで、届いたのではないかと。」

船は力なく海上を漂っている・・・。


▣ 同日 10時40分 やくも発着艦指揮所 ▣

「オーライ、オーライ、オーライ・・・ストップ! ストッパー!!」

シーホークが船尾のヘリポートに姿を現した。

寺井崎の指示で緊急発艦の備を整え、離陸する所だ。

パイロットは木村と河野のペアが捜索に従事する予定だ。

もちろん、やくもも現場へ急行中である。

フライト前の確認を終えると、ヘリに乗り準備を整える。

「発着艦指揮所よりSH601へ。現場は本船より、南南東25km地点。

 現場海域に到達次第、要救助者の捜索に当たられたい。以上。」

「SH601より発着艦指揮所宛。指令内容了解、発艦許可を願う。」

木村が主操縦席に、河野が副操縦席に腰を下し発艦許可を待った。

「発着艦指揮所、発艦を許可します。至急、現場に急行されたい。」

ヘリを固定していたストッパーが外され、誘導官から発艦の指示が出た。

「バラバララララララララララララララララ・・・・・・」

ヘリは真上に上昇してから、南南東の救難海域へ急行した。


▣ 同日 10時42分 やくもCIC ▣

「シーホーク本艦を発艦し、順調に救難海域へ急行中。」

やくもの大型ディスプレイには、海図が映し出されている。

その海図に向かってSHが飛んでいるのが見てとれる。

寺井崎は海図を見ながら、手近の海士を呼び止めた。

「海上保安庁の手配はどうなっているんだ?」

「はっ、只今確認してまいります。」

そう言って、海士はCICを飛び出していった。


しばらくしてその海士が戻ってきて、寺井崎に報告した。

「第1管区海保に問い合わせた所、現在巡視船「つがる」と「びほろ」

 「くまたか1号」ヘリが現場海域へ急行中であるとのことです。」

「そうか、持ち場に戻ってくれ。」

海士を持ち場へ戻すと、寺井崎は再び海図へ向き直った。

海図には相変わらず遭難船が点滅を繰り返していた・・・。


▣ 同日 10時50分 SH601機内 ▣

「正に、零視界ですね・・・。」

河野が悲観的な声でそう言った。

「あぁ、しかしこの天候でも俺らを待っている人がいるんだ。」

ヘリはもうすぐ救難海域へ到着しようとしていた。

「SH601からやくも。間もなく、救難海域へ到着する見込み。

 到着次第、当該海域内の遭難船の捜索に当たります。」

レーダーにはまだ、当該船舶が点滅をしていたはずであったが・・・

ふと目を離したすきに、レーダーから完全に消失していた。

するとタイミング良く、やくもから通信が入った。

「やくもからSH601宛。レーダーから当該船舶が消失。

 レーダー等資機材が故障したものとみられるが、当該海域内の

 捜索を行い、遭難船の速やかな発見に努めよ。

 並び、第1管区海上保安本部からの通達。くまたか1号機が、まもなく

 当該捜索区域に到着する予定。2機で連絡を密にして、早期発見に努めよ。」

レーダーに目を向けると、遠方より「kumataka-1」が近づいていた。

「SH601からやくも。くまたかと共同で捜索に当たります。以上。」

ヘリはゆっくりと左旋回をしながら、海域の捜索を始めた・・・。


▣ 同日 10時50分 新栄丸船内 ▣

「船長、ダメです。レーダーも故障しました。これで発報できません!!」

救命胴衣を着用した船員の一人が、悲痛の声をあげる。

「エンジンは回復できないのか?」

船長が機関士に尋ねる。

「絶望的ですね・・・。幸いにも浸水は見られませんが・・・。」

船長は時化て荒れ狂う海を見ながら呟いた。

「後は、待つだけか・・・。」

無情にも、時間だけが過ぎていく・・・。


▣ 同日 11時01分 くまたか1号機内 ▣

「くまたか1号機より函館保安部。当該海域へ到達、これより捜索します。」

函館海上保安部から急行したくまたか1号は、ようやく海域へ到着した。

「函館保安よりくまたか1号。以後は、護衛艦「やくも」とも連絡を密にし、

 遭難船の早期発見に努めよ。以上、函館保安。」

「くまたか1号了解。」

次に無線を操作し、やくもに無線を繋いだ。

「こちら函館保安部所属、くまたか1号より護衛艦やくも。どうぞ。」

「こちらやくも、くまたか1号無線感度良好。どうぞ。」

「捜索海域に現着、現在時より捜索に従事したい。どうぞ。」

「やくも了解。現在同海域に於いて、本船SHが捜索従事中。

 SHとも連絡を取り合いながら、早期発見に当たられたい。」

「くまたか1号、了解。」

無線を置くと、海に目を凝らしながら捜索を始める。

目を使わなくても、高性能な暗視カメラが付いているのだけど・・・。


▣ 同日 11時02分 新栄丸 ▣

「無線機類の修理はどうだ?」

船長が船員の1人に尋ねる。

「まだまだ時間がかかりそうです・・・。」

暗い雰囲気が流れ、船内を沈黙が包む。

すると船長が唐突にこう言った。

「みんな、1回飯にしよう!!」

「「「「えっ!?」」」」

船員総出で驚いて見せた。

「ご飯・・・にするんですか?」

船員の1人がそう尋ねると船長は、

「こう言う時でこそ、落ち着いて飯をたべなくてはならん!!」

と、船員に言って聞かせ1人で先にご飯を食べ始めた。

それにならって、船員も1人また1人と食べ始めた。

船内は少し、和やかな雰囲気を取り戻しつつあった。

船は相変わらず、広大な海を漂っていた・・・。


大変更新が遅れました事を、改めてお詫び申し上げます。


実を言いますと、この4章では大規模な災害が発生する筈でしたが、

震災を受けまして軽率と判断し、更新を中断しておりました。

文章を改訂して、改めて投稿させて頂きました。


更新が遅いですが、読んで頂きましてありがとうございました。

心から、お礼を申しあげます。

これからも、応援ほどよろしくお願いします。

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