番外編 「舞鶴教育隊の日常」
番外編シリーズ1 「舞鶴教育隊の日常」
▣ 2015年4月30日 6時15分 ▣
▣ 京都府舞鶴市舞鶴基地内教育隊 ▣
「1・2・1・2・・・」
ここ海上自衛隊「舞鶴基地」では、日々訓練を重ね一人前に
近づこうと努力している若人がいる。
「舞鶴教育隊」。
海風が差し込むこの場所では、現在も多くの自衛官を育て育んでいる。
「1・2・1・2って、声が小さいぞ!しっかりと出していこうぜ!!」
ここで一人ボケツッコミをしているのがその一人、
松宮 脩平 (20) 2等海士である。
(3士は、2010年10月1日の2士昇格を持って廃止されました。)
「いちいちうるせぇな、お前こそ前見てって危ねぇ!!」
危うくこけそうになったのは、同じく2等海士の佐田 明 (20)である。
こんな、賑やかな場所で毎日を過ごしている2等海士を追った。
▣ 同日 8時15分 ▣
▣ 第2庁舎内 教務教室 ▣
「起立、礼、着席。」
今日の日直が号令をかけ、午前の教務が始まった。
教務は主に、海上自衛隊の規則・礼儀などを行います。
「えーでは、全員テキストのP2を開け。」
教官が、教壇の上から生徒たちに促す。
2ページには、海上自衛隊の規則が1から記されていた。
ここで早速、教本を閉じようとしている奴がいた。
「おい、松宮!教本を閉じるのはまだ早いと思うぞ。」
と言いつつも教官は手に持ったチョークを力いっぱい投げつけた。
「痛った!!」
見事なコントロールを誇る教官のチョークは、真直ぐ松宮に命中した。
「すまん、すまん、手が滑ってしまった。」
わざとらしく教官が言う。
「さて脱線してしまったが、海上自衛隊の規則について順に説明する。」
教官が、教本を見ながら生徒たちに覚えやすいよう工夫を凝らしていく。
しかし、今度は別の場所で教本を閉じようとする奴がまたいた。
「こら、佐田!!真面目に聞けや、なめんとのかぁ!!!」
関西独特のトーンで教官がついにキレた。
それには佐田もタジタジである。
「申し訳ありません。」
「お前と松宮、午後一番で腕立て300!!10分以内に済ませろ。」
教官が若干無茶な要求を立てるがこれには松宮が反論した。
「なぜ僕もですか、教官!」
「お前もさっき怒ったやろうが!!腹立ってきた、腕立て400に変更!!!」
「「ええっー」」
「じゃかましい!!わかったら返事は!!」
「「了解。」」
教官が怒りを抑えて、黒板に向き直り板書を始めた。
今度は全員がノートを開き、板書を書き写していく。
30分ほどしたところでチャイムが鳴り、15分の休憩をはさんだ。
休憩の後は、全員が真剣に教務に取り組み昼食に移った。
▣ 同日 13時00分 ▣
▣ 第1グラウンド ▣
「110、111、112、113、114、・・・」
グランドでは誰よりも早くから、罰則の腕立て伏せをしている2人がいた。
訓練は、13時15分からなのでそれまでに済ませなければ倍に増える。
2人は必死に、手を動かし頑張っていた。
しかし、時間とは非情なものであった・・・。
▣ 同日 13時15分 ▣
「397、398、399、400!!」
腕立てが終わり時計を見ると15分であった。
「よし、なんとか間に合ったんじゃないか!」
佐田が言うと松宮も頷き、整列を始めた。
しかし、時間なのに誰も来ない。
なぜだろう、二人は不思議に思い隊舎に聞きに言った。
すると驚くべき事実を知った。
「えっ、今日は体育館で集団行動の訓練じゃないのか!?」
「「えっーー」」
確かに予定を見るとグランドではなく、体育館になっていた。
「あのやろーだからグランドって言ったのか。」
そう、心理的に仕組まれた教官の罠であった。
まぁ、引っ掛かる方もどうかと思うがな・・・。
急いで体育館に行くと教官が竹刀を持って待っていた。
「松宮、佐田・・・どうしたのかな~こんな時間に?なめとんのかぁ!!」
そう言うと同時に竹刀を振りおろしてきた。
油断していた松宮だが、間一髪で避けたが佐田は・・・、
「バシーン!!!!!」
見事に命中してしまった。
佐田はそのまま医務室へ搬送された。
そして、この日の訓練は松宮一人だけ腕立て1000回・腹筋2000に処された。
(後日、佐田も腕立て1000回・腹筋2000が言い渡されました。)
こうして日々、レベルアップに励む隊員たちが多くいる舞鶴教育隊であった。
本当は第2章に入ろうと考えていたんですが、一度間をおいて話の方向性を決める意味でも番外編を一度挟みました。
これからもちょくちょく挟んで行こうと思いますので、ご理解ください。
次こそ、第2章に入っていきます。
楽しみにされていたみなさん、本当にスイマセンでした。