第七話 悪の濠
30文字おさらい
「神授瓶の力で飛行能力を得たグルシャ。ついに夢を目指す旅にでる」
もうどのくらい上がったのだろう。15kmくらいは登ったか
しばらく壁に沿って上に飛び続けた二人は、休憩をとるために休める場所を探していた
暗い場所にしばらくいたため、ぼんやりだが周りを見る事ができているが、壁しかなく休む場所がない
「はぁ...はぁ...。疲れた...」
だんだん翼を動かしづらくなってきた。このままだと真っ逆さまに落ちてしまう
すると、ユバスも疲れているのかゆっくり飛ぶようになった。
すこしスピードを上げユバスと話せる距離まで近づく
「ユバス...休憩できる場所は見つかったか?」
「見つかってない。ずっと壁で平らな場所が一切ない」
そうすると、二人で休むには十分なスペースを見つけた
「お!休める場所あったぞ!」
「良かった。いったんそこで休憩しましょうか」
ヒロとユバスは着地し、共に大きな翼を縮ませてから休憩をいれた
ヒロはその場で寝転んで、ユバスは崖端に座るような感じで休んでいた
「全然着く気がしないな。あと何km上がれば着くんだよ~」
いくら進んでも空は黒い。本当にマレボルジェなんて町あるのか?
そう思いながらグルシャは目を細めながら見上げていた
「私もさすがにちょっと疲れた。・・・グルシャどうしたの?」
「この音、赤白雨だ。気をつけろ」
その瞬間、遠くで白い何かがものすごいスピードで落下していった
ユバスと同じ天使族の一人だろう。あの速さ的に地面に衝突すればもう...
「よく考えたら、お前あのスピードで落ちて生き残ってるの奇跡だな」
「そうだね。意識なかったから分からないけど、なんで生きてるのか不思議だよ」
「お前のせいで俺たちが死にそうになったけどな」
「私が落ちるところに家があるのが悪い」
こいつ...!! 手を出せないのを良いことに悪魔みたいなこと言いやがる!
耐えろ、俺耐えろ...この子は子供だ。もう一度言う、こいつは子供だ!!
「そ、そいえばマレボルジェについて説明してなかったな」
「第八圏 マレボルジェ(悪の濠)は悪魔族が一番多く生きていると言われている階層。神授瓶を飲んでいない奴がほとんどだが、噂が一瞬で広まり住めなくなる可能性が高い」
「万が一広まったらもう終わりだ。だが、飛んでいく以上白い羽が目立って見つかる可能性がある。どうするべきか」
二人で考えた案はこうだ
1.ヴィーラルが見えてきたら休憩と確認の為、スペースを見つけ着地。ユバスはその場で待ちグルシャのみが侵入を試みる。
ユバスと一緒に行くのが一番時短だが、見つからない事を最優先にするために俺が先に行って様子を見に行く
2.グルシャが町内に侵入し、周囲の状況(食料の場所、宿泊場所、悪魔の密集度)を確認する。
3.その後、ユバスがマガド正装で全身を隠し、グルシャの後ろに隠れながら宿泊場所に進む。
この町は、上はかなりの防衛設備があるくせに下は無防備なんだ。まぁほとんどの悪魔は飛べないから来れないのだと思っているのだろう。
それを上手く利用し内部に侵入する作戦名付けて!
「"悪魔だけ行けば気づかれないなら当たって砕けろ侵入大作戦!"」
ダサい?ちょっとうるさいかな。
こうすれば天使族という事がバレずにユバスを安全な場所に連れて行くことができる。
しかし、周囲の状況の時にはユバスと俺が別になってしまう。もうこれはバレない事を祈るしかない
作戦会議を済ませた二人は再度登り始めた。
休憩と飛行を繰り返し続け疲労困憊の中...
上にはガチャガチャとなる木造の機械と、かすかに悪魔族の声が聞こえる。
間違いない。ついに到着した...! 壁城 ヴィーラルだ!!
「あぁやっと着いた。明日絶対筋肉痛だな」
本に書いてあったように大きな崖壁の周りを一周回るように作られており、真ん中には何もなくそのまま通れるようになっている。
だが、真ん中を通ったら見つかる。自殺行為だ
ヴィーラルの数キロ下にあったスペースに着地し、先ほどの作戦を実行する準備をする
「いいか? ここから絶対に動くな。もし見つかったら助けれないからな」
「うん。大丈夫。」
「なるべく羽を小さくして、マガド正装で壁に擬態して待ってる」
「待って...!」
マガドの服は薄い茶色。近くで見るとバレバレだがつけないよりはマシだ
ここでユバスが何故かグルシャを呼び止める
「どうした?」
「離れていると状況が分からなくなるでしょ。ちょっと待ってて」
ユバスは地面に魔法陣を描いていく。しかも同じ魔法陣を2つ
「この魔法陣は「マジコル」っていうの」
「この魔法陣を耳に当てると同じ魔法陣越しで会話が出来る。」
「何かあった時はこの魔法陣から連絡して」
なんて便利な魔法陣なんだ! てかそんなこと出来たのかよ
グルシャはその魔法陣を耳にセットし、リュックから50ラーズとロウソクを取り出しユバスに渡してヴィーラルに向かった
これからするのは不法侵入だ。悪い事をすると分かっているからこそ心拍数が大きくなっていく
まずは、侵入をする隙間を探そう。
「無防備と言ってもなかなか隙間がないな...」
そう。無防備とは言ったが、隙間なく木材で床が作られており、崩れないようにさらに木材で頑丈に固定されている
しばらく飛んでいると大きな穴があり、廃坑なのか分からないが作業をした後があった
「機械が動いていないという事はだれもいないんじゃないか?」
「もしかしたらそこから侵入できるかもしれない。行ってみよう」
本当に誰もいないみたいだ。機械も使われていないのか木の腐敗が進行し、
左上ぬ向かって続く道がある。足音を出さず慎重に進もうとし歩き始めた瞬間、小さく飛び出た石につまづき倒れてしまった
「痛った...! あ...」
その声が、洞窟内でこだまのように反響する
ばれていないと信じ、進み続ける。
しばらく進むと二手の穴に分かれている場所に着く
「おいおい、二分の一かよ。ここまで来て運は無いって」
「待てよ。ここで俺の耳の力を使う時なんじゃないか?よく聞け...」
右から水が落ちる音がしている。女性の声も聞こえる...なにか話しているぞ。
「この前偶然パン屋さん見つけたの。そこのパンがおいしくてさ~」
「本当?勝手に物売っちゃいけないの知らないのかしら...バレなきゃ良いけど...」
「おい!そこの244205と250340! 話してないで死ぬ気で働け!」
「49983立って動け! 死にたくなければ死ぬ気で働け!」
「もう無理です...もう動けません...」
「ナメた事言ってんじゃねーぞ!さっさと立て!」
うん。絶対行かないほうが良いって本能が言ってる
左からは...
ドタドタドタドタ...ドタドタドタドタ...
「さっきこっちからなにか声が聞こえたよな? 「痛っ」って」
「あぁ。もしかしたら脱走者がいるかもしれない全力で探せ!」
ドタドタドタドタ....ドドドドドドド....
「(あっぶね~...心臓2秒くらい止まったわ)」
兵士なのか? 武装した悪魔が俺の声に気づいたのかこの辺りを周回していた
俺は咄嗟に天井まで駆け上がりなんとか回避できた。
兵士が来たという事は外につながっているのは左のはず。
時間も無いし、いつあの兵士が戻ってくるか分からない。耳を澄ませながら進んでいこう
8話は25日19:00に投稿します
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