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一章 十八話 『はじめてのお手伝い』

「しばらくここで、俺らに出来ることしません?」


 ミツキはその日の夜、とある提案をしていた。


「出来ることって、例えば何です?」


「そりゃ、まあ今日の戦闘で壊れたものの修復とか、怪我した人のサポートとか」


「少年。私にも良く分かっているわけではないが、彼らには彼らのやり方がある。それで今まで上手く回っているのならば手を出すのはかえって邪魔ではないか?」


「うっ。それも正論ですよね。余計なお世話かもだし」


 旅の時間にはまだ余裕がある。そのためミツキは少し自分に正直になってみた。しかし反対の声は当然。


「オレは、なかなか良いと思うぞ」


 意外、リベラから賛成の声。


「余計なことに手を出したくないなら、頼まれたことにだけ力を貸せば良い。この人数で話を聞けば直ぐに必要な手伝いは割り出せる。そこを適材適所で動けば拘束時間も問題ないだろう」


「あたしも賛成かな。ちょっと見て回っただけでも怪我した人はいたし、手伝えるならその方が良いと思うよ」


「私も大丈夫ですわ。予定まではまだありますし、移動を含めてもまだまだ時間は使えます。むしろ、どう潰そうか悩んでいたほどですもの」


 ということで。



    ◇



「すげえな、赤髪の姉ちゃん。どんな奇跡持ってんだ? ガレキそんなに持てるなんて随分力持ちだな」


「ああ、いや、時間をかけて鍛えた。お前たちも同じだけやればこうなるさ」



    ◇



「近くの村で獣害があって食べ物の流通がちょっと困ったことになってんだ」


「じゃあ僕ちょっと行ってきますね。夕方までには帰れるかと」



    ◇



「きみ回復魔法こんなに使って魔力もつんだね。すごいじゃないか」


「あ、え……と、ありが……とう」


「はは、そんなに緊張しなくて大丈夫。こちらこそ、ありがとう」


「! ……うん!」



    ◇



「黒髪のお姉さん。病院のみんな喜んでましたよ。面白いお話が聞けた、また来てほしいって」


「ふふ、お役に立てたのなら嬉しい限りですわね」



    ◇



 皆がさまざまに住民の手伝いをしていたところ。



「ミツキ、八割はオレが受け持つ! 残りは任せた!」


 リベラとミツキは、前日の魔獣騒動、その出どころを探り。


「うす! 五体程度ならいける!」


 魔獣、裂土竜の住処を発見していた。


「接近戦、いくぞ」


 ミツキは五体のうち一体に肉薄、ナイフを抜き一度右手でくるくると弄んだ後、それを逆手で持ち相手の腹に刺突。


 と見せかけてカウンター狙いの大ぶりを誘い、躱したのちにその腕を落とす。そしてそのまま首にナイフを突き立て一体目を撃破。


「星天・一等星(ベテルギウス)


 その一体を壁にして光線を射出。貫通させ二体の脳天を同時に貫き。


「閃光!」


 向かいくる残り二体に対し目眩し用の圧縮した光をぶつけ。


「練火・村正!」


 一体に対し魔力を込めたナイフの投擲、もう一体に対しては炎で形成した刀を振るい制圧。


「良いな。その若さで自警団に所属しているだけのことはある。オレからあえて何か言う必要もなさそうだ」


「リベラさん! もう倒したんすか! いつの間に!」


 早々に殲滅しミツキの戦闘、その一部始終を見ていたリベラが手を叩く。その姿を見て、ミツキは一国の軍、その長の強さを考える。


 仮にディエスが同じ相手と戦った場合、リベラほどに迅速な戦果を上げられるだろうか。恐らく否。ディエスがどちらかといえば防御寄りの性格をしている事を差し引いても。


「リベラさんのが強いな。さすがエリート」


「そう言ってもらえるのは光栄だな。それにしても、用心してここまで来てみたのは正解だった」


「はい。まさか外から来た魔獣がここで隠れ家作ってるなんて。ここ起点に侵攻するつもりだったんですかね。危ねえ」


 手が空いていた二人はカイの索敵範囲外を探索することにし、見事魔獣の住処を引き当ててみせた。


「最近の魔獣は嫌な知恵をつけているからね。女王の既存のやり方ではこういった裏もかかれるのだろう。謁見する目的が増えたな」


 二人はその後、再度周辺の見回りをしてから夕方にデスパレートへと戻った。



    ◇



「あ、お帰りなさい。お二人もいかがですか? 獣追い払うの手伝った時にもらった果実です」


 二人よりも先に戻っていたカイ。彼が手渡してきたのは。


「あ、いちごだ。真っ赤でうまそうだね」


「これいちごなんだ。いちごってもっと小さいのが木になってるのしか知らなかったなぁ。あ、あたしもお礼にってお菓子もらったよ! 分けたげるね!」


 ミツキはゲルダが手伝いに賛成した時は不安もあったが、良い傾向だと感じていた。自分から人と関わることができるようになっている。今回ミツキがゲルダを置いて見回りに迎えたのは、彼女が手探りだが人との交流ができている姿を見たからだった。


「俺も大概過保護だったわけだな」


「ディアーナ殿も怪我をした方々から人気だったようですね。貴族ですから、こういった活動には慣れていないのかと」


「ふふ、私も昔は父について色々とお手伝いをしていたことがありますの。昔取った杵柄、というやつですわ」


「へえー、貴族の人でもそんなことするんだ。いや、でもそうか。初代の王様からそういう人なんだもんね」


 ミツキの貴族という身分に対するイメージはそれほど良いものではなかった。歴史の教科書に出てくるのは、何かの事件の発端になるものばかり。漠然と何か偉そうで、善人ではないように思っていた。


「では、みなさまのおかげで街も活気を取り戻してきましたし、明日の明朝にはここを発つといたしましょう。ヘイデイまでは少し距離がありますから、あまり遅くに出て野宿する羽目になっては目も当てられませんから」


「ちょっとさみしいね。仲良くなったところですぐおわかれって」


「また来よう。これからいくらでも機会はあるよ」


「それなら今日は早めに休息を。この前のカイの二の舞は避けたい」


「……ふ、ふふふ」


「……二度はないです……大丈夫……」


 こうして一行は早めに就寝した。



    ◇



 そして次の朝。


「じゃあ行こう。班割は前回と同じでいいね? まだ寝ている人も多いだろうから、静かに行こう」


 誰にも見送られずにデスパレートを後にしようとする一行。しかし。



「おーい! あんたら! もう行っちまうって聞いてよ!」


 初日に出会った熊の獣人。それだけではない。皆が関わった者が、まだ早朝にも関わらず。


「──おみおくり、してくれてる」


 見送りに来た。ほんの二日、手伝っただけのミツキたちを。


「やっぱり、根っこはいい人たちなんですよね。環境が仕方なかっただけで、たまたま、悪いことしちゃっただけで。だからいい環境なら、変われる」


「──ええ、そのことは私が一番……あの人にも、見て欲しかったですわね」


 そう呟くディアーナの言葉は、誰にも聞こえないほど小さく。


「みんなー! ありがとー! またねー!」


 そう叫ぶゲルダの表情は、泣き出しそうな笑顔だった。

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