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二.五章 四話 『堪忍袋の尾が切れる』

「いい度胸じゃねえか、あ? そろそろ立場ってもんを解らせてやらねえとなあ」


 魔性の国(ファタール)から少し北の駐屯地。平原が広がる中にぽつんと構える家屋と、塀で仕切られた訓練場。即戦力試験が行われたその地において。


「ちょ、団長! みんな見てるんですから落ち着いて……」

「うるせえ構えろ! ぶっ倒してやらあ!」


 ミツキとディエス。盛大な喧嘩が始まろうとしていた。 



    ◇



「おいミツキ。お前明日ヒマだろ? ちょっと付き合えや」


 ある日、警備を終えたミツキにディエスが誘いをかける。


「いいっすけど、なんか厄介ごとです? 喧嘩?」

「馬鹿言ってんなよ。仕事の一貫だよ。傭兵の国(ガルディニア)で吸収したこと、還元しねえとな」


 ディエスは自警団の戦力底上げを図って傭兵の国に滞在していた。暇を見つけては、一人で少しずつ団員にノウハウを還元している。しかし、いかんせん数が多く効率が悪い。とくれば、必然的にミツキに声をかけた理由が明らかになる。


「なーる。俺の手も借りたいってわけっすね」

「そういうこった。お前でもいねえよりマシだろうよ」


 まるで猫と同じような扱い。ずいぶんな言われようにミツキは隠れて闘志を燃やす。ディエスは教えるということに関して彼を侮っている節がある。それを、この機会に払拭してやろうという魂胆だ。ついでに、ディエスの鼻を明かすことができれば万々歳。


「了解っす! じゃあまた明日!」

「あ、おい! 時間は朝十時から!! 場所は北の駐屯地な!! ……ったく」


 予定の詳細も聞かずに帰っていくミツキに若干の不安と、微妙な胸騒ぎを覚える。それでも元気があるのはいいことだと彼は思っているようだ。傭兵の国での一件は彼にとって苦い思い出になっただろう。それが暗い影を落としていたことはディエスも気づいている。今、彼が形だけだろうと明るく振る舞えているのは間違いなく喜ばしいことだ。だからディエスは気づかない。ミツキが、何をやらかそうとしているのか……



    ◇



 翌日朝十時。


「集まったなてめえら。とりあえず正隊員は俺んとこ来い。ひよっこどもはミツキが担当する」


 集合と同時に行動の指示を手早く送る。そのままミツキにヒラヒラと手を振って合図。場所を広く取るように言っているらしい。ミツキは集まった面々を引き連れてディエスから大きく距離を取った。

 ミツキが担当するのはおおよそ即戦力試験で一緒だった面々。多少増えてはいるが、そもそも狭い国なので顔見知りではある。もっともミツキは一度見たものを忘れないが相手はそうではない。一方的に知っているだけというのもちらほら。


「えーと、どうしよっかな。とりあえずいつもやってることから始めよっか」


 指導をしようにも習熟度がわからない。そこでまずはいつもディエスが行っている訓練をなぞるように要求した。全員それに従い、慣れた様子で自分の得物──大体が剣だったが──それを手にとって素振りから始めた。


「まあ流石にこの辺りは団長がしっかり教えてる、か」


 素振りのフォームは皆問題ないように見える。もちろん騎士団の面々と比べれば遥かに拙いのだが、訓練を始めてまだ一月も経ってないにしては上々の出来である。ディエスの指導力に不足するところはないようだった。


「……ちょっといい?」

「え? うん……どこかおかしかった……?」


 しばらくして、ミツキは一人に声をかけた。ミツキと同年代の少女。髪を短く切り揃えた小柄の彼女を見て感じた違和感を伝える。


「ちょっと振りが緩くなってきてるね。この剣だと重いんじゃない?」

「あ……うん……ちょっとだけ。でも団長が筋力つくまではこれでいいって」


 素振りを始めて数分。それで剣筋が鈍るというのは、体に武器があっていないことを意味する。


「確か魔法得意だったよね? もう少し身軽にできる武器がいいな……それこそ短刀みたいな。ちょっとこれ振ってみて」

「うん……あ、なんかちょっとしっくりくるかも」

「よし。団長の言うこと聞くのもいいけど、自分で考えてみるのもいいかもよ。あの人、繊細だけどやっぱりゴリラだから」


 突然声をかけられ緊張していた少女の顔がほころぶ。それを皮切りに、静かだった訓練が一変した。訓練生は口々に疑問質問をぶつけ始める。


「体重移動が団長の体で教えられてもよくわかんなくて」

「魔法のコツってある? あの人感覚でできるっぽいから……」


 ディエスは優秀な指導者だが、最適ではない。彼なりのスタンスではカバーしきれない部分がどうしても残る。反対にミツキは、そういった部分こそ得意とする。自分が理解力や応用力に劣っていたから、できないという感覚がよくわかるらしい。


「体重移動はとにかく重心を落として考えよう。もっとグっと……いいね。それで無理なく動けるようなのが理想だね。魔法は……俺の師匠の受け売りだけど塗り絵みたいに考えよう」


 次々と彼らの問題点を引き出しアドバイスしていく。傭兵の国で相談を聞いていた経験が生きたのか、テンポ良く捌いていく。結局そのまま昼の休憩時間まで、声が絶えることはなかった。



    ◇



「よし。休憩だ。一時間したらまたここ集合」

「っし。じゃあこっちも一旦終了ね。でも、まだ聞きたいことあったら来ていいよ」


 昼、昼食を取るための休憩時間。各自が持参した弁当なりパンなりを食べながら午後の訓練に向けて英気を養う。


「にしても、なかなかやるじゃねえか、ミツキ。お前にそんな特技あったとはな」

「へへ、どんなもんですか。あんまり舐めちゃあいけませんよ」


 午前中、チラチラとミツキの様子を伺っていたディエス。もし困っているようなら助け舟を出そうと思って準備していたのだが、その心配は全く要らなかった。それどころか、自分が介入するより良い方向に向かった可能性すらある。ガッツポーズで調子に乗っていそうなミツキだが、今日のところは見逃しておく。


「へいへい。でも午後は……」

「団長! ちょっといいですか?」


 声をかけてきたのはミツキが最初に声をかけた訓練生の彼女。メモ帳を持ってきている。勤勉な様子に、ミツキはかつての自分を思い出す。休み時間、教師の下へ一目散にかけて行ったあの頃。


「騎士団に、団長転がせるくらい強い女の人いるってほんとですか?」

「ああ!?」

「うわあっ! それ本人に聞いちゃダメだってばあ!」


 物思いに耽っていたミツキを不意打ちが襲う。訓練の合間、場が和めばと思って備えていた小話。ディエスの恥ずかしい話を一気に放出していた彼は予想外の危機が迫っていることを感じ取る。


「……おい。こいつ他に何か言ってやがったか?」

「え? ええと」

「待った! みんな疲れてるからね? 団長もお疲れでしょう?」


 やばい。まずい。頭の中に警告音が鳴っているようだ。調子に乗って喋りすぎたことを後悔する。もっとしっかり口止めしておくべきだったとも。この危機感は前世で、教師のモノマネをしていたときにご本人が登場したあの時と同じ──


「団長のいびきがうるさかったとか。お風呂で体洗わないまま浴槽に入ったとか。他にも──」


「……へえ。ずいぶん楽しくやってたみてえじゃねえか、なあ?」

「……やっべえ……」


 湯水の如く溢れ出る言葉を止める術がミツキにはない。しばらく黙って聞いていたディエスが、ミツキをチラリとも見ずに喋り出す。普段と変わらない語気の中、確かに漂う怒りの感情。


「お前そういえばこないだも、俺のこと大男だのなんだの言ってやがったなあ、ああ?」

「あれには、事情がありまして……」


 ついでとばかりに先日の失言まで取り沙汰される。もはや逃げ場はない。純粋に、世界の広さを聞きたいだけだった少女が、やってしまったと表情を曇らす。それに手を向けて精一杯フォローするミツキ。一度も表情を見せないディエス。



「いい度胸じゃねえか、あ? そろそろ立場ってもんを解らせてやらねえとなあ」


 全員が固唾を飲んで、今か今かと待っていたその時が訪れる。ディエスの堪忍袋は、尾が切れるどころか爆発したように弾け飛んだ。


「ちょ、団長! みんな見てるんですから落ち着いて……」

「うるせえ構えろ! ぶっ倒してやらあ!」


 落ち着くように訴えるジェスチャーも虚しく、ディエスは背負っていた模造の斧を振りかざす。


「あの! これ止めなくていいんですか!?」

「ん? まあ大丈夫だろ。団長もホンモノ使わないくらいには理性残ってるし」

「そうそう。ミツキもそろそろ痛い目見といた方がいいって。ほら、みんな飯食いながら観戦しようや。これも訓練訓練」


 団員は心配する訓練生たちを尻目に二人の喧嘩、その行く末を見守る。それを肴に食をすすめる姿は、何も知らない人からすれば狂気の沙汰だろう。


「くそっ! どうなっても知りませんからね!!」

「やれるもんならやってみやがれ!」


 とうとう激突は避けられなくなった。とはいえ加減は必要だろう。周囲への被害やこの後のこともある。できるだけ魔法は使わずに──


「『矢岩(しがん)』!」

「まじかアンタ!?」


 接敵の寸前。ディエスは今まで見せたことのない魔法を放つ。地面から数本、長い岩の塊が競り上がるように生成され、ミツキに向かって飛ばされた。


「〜〜!! こ! の!!」


 それをミツキは短刀で叩き落とすようにして砕く。先んじて放たれた二本は魔力の粒子になり消失。


「『弾岩(ひがん)』!!」

「──っっ!!」


 その隙に後ろから、四角柱の岩の塊が急に迫り上がってくる。斜めに飛び出たそれはミツキの背中を弾き、体勢を崩す。


「っらああああああ!!」

「っ! くそ!」


 そこを狙って、残っていた岩の矢が二本。そして飛びかかってくるディエスが一人。ほとんど同時にミツキに届く。

 観戦者たちはミツキの敗北が決まったと、その瞬間に心を揃えただろう。


「はああっ!」

「──っ!」


 ミツキはしかし、魔力を一瞬放出することで岩の矢を逸らした。だがディエスは衝撃を吸収しながらなおも飛びかかってくる。大振りの、上段。それを。


「練火・弩」


 一本の焔が貫いた。木製の斧は一瞬で焼き砕かれ、ディエスの攻撃は宙に消える。観戦していた者も、思わず食事から手を離し歓声を上げた。得物を奪われたディエスに、もはや戦う手段はない──


「これで頭冷やして」

「どらああああ!!」


 武器を奪えば終わり。そう考えていたミツキが甘かった。そのまま空になった掌を固く握り、拳をミツキの腹部にねじ込む。吸収した衝撃を利用し、接触の瞬間に解放。一気に腕を振り切って、ミツキが後ろに大きく跳ね飛ばされる。


「ごぼぉっ……ぇ」


 吹き飛ばされたミツキは衝撃に胃液を吐き出しながらゆっくりと立ち上がる。直前に魔力を集中させ防御したことで内臓は無事。昼食もまだだったことで嘔吐感も少なくて済んだ。


「……くそ! もう頭きた! 徹底的にやってやるよ!!」


 その一撃でミツキもとうとうキレる。発端が自分の軽はずみな行動ということで我慢していたが、ここまでされる謂れはないだろう。模造の短刀を右手に、そして正面に構え全力を出す合図。


「迅雷!」


 ミツキもディエスに対し魔法を解禁。それでも軽い部類の魔法に止めるあたりが彼らしい。速度のある雷撃が一つ、ディエスへとまっしぐらに進む。


「『断崖(だんがい)』!」


 ディエスは視線の先、左右互い違いになるように岩の壁を四つ形成する。「迅雷」はその一つに当たって消滅した。


 ミツキの魔法は、実体を作るタイプの魔法に弱い。雷も炎も、着弾した瞬間にそれを対象として効果を発揮する。砕き進むような挙動は付与しにくい。可能なのは光だが、ミツキは余程のことがない限り対人では用いない。リベラとの戦いで、一層増した覚悟が彼を縛る。

 故にディエスはそこを突く。本気で戦う以上、加減はなし。持てる()()()()()()()()()()()()


 「迅雷」を放ってからミツキは動かず構え続ける。ディエスの魔法は確かにミツキへの有効打となりうる。しかし、それではジリ貧。魔力の消費が存在する以上、おいそれと使うことができないはず。必ず、肉弾戦にもつれ込む瞬間が訪れる。そこで後手を踏まされ無いように、後の先を取れるよう警戒を続ける。


「──!!」


 岩の壁、それらからさらに岩の矢が生まれる。恐らくディエスが隠れて魔法を使ったのだろう。都合八つ。魔力消費を考えればこれが最後の魔法になるとミツキは予測。だがどうやって防ぐか。放射状に広がった岩は、ミツキの逃げ場を塞ぐ。ミツキの魔法に、岩を砕く術はなかった。


「『万色融合(インクルージョン)』」


 ミツキがその身に宿す魔力の色。それを混ぜ合わせて新しい色を作る。作るのは実体を持つ魔法。既存の想像で、揺るがない創造を可能にする武器が欲しい。


鉄鋼弾(てっこうだん)


 選んだのは鉄。レイチェルと研究した銃にディエスの作る岩、それらをベースにして想像を補強する。混ぜ合わせた魔力に球のような形を与え、八つ射出する。放った全てが岩の矢を砕き、その奥にある壁をも貫いた。


「!?」


 だがその先にディエスはいない。視線は広く保っていた。弾幕が放たれても、ミツキは壁の上、そして左右を視界に入れ続けていた。そこに、ディエスの姿は一度たりとも映らなかったのに、なぜ。

 

「──甘え」


 突如、足下から声がする。唯一ミツキが視界に捉えられなかった場所がそこに広がっている。

 答えは地下。ディエスは土魔法、「土竜(どりゅう)」によって地面に空洞を作成。ミツキが攻撃を捌いている隙に足下へと辿り着いた。


 穴が空き、足が取られる。引き摺り込まれるような、そんな初めての感覚にミツキは一瞬思考を奪われる。視線を移すと、左腕でミツキの足を引きながら、右手を引いて拳を叩き込む準備をしているディエスの姿が見えた。揺らいだ思考で魔法を想像するのは困難。万事休すかと思われた。


「どっちがだよ!」


 打ち込まれた拳を、腹で受けて腕で固める。まるで読んでいたとでもいうように。

 そう、ミツキは読んでいた。ディエスが視界にいないのならば、その姿は地面の下にあるのだと。なぜなら彼は手ほどきを受けているから。魔法において右に出るものはないゲルダから、その可能性を教え込まれているのだから。


「ちっ!!」

「らああっ!!」


 固めた腕を軸にディエスを地上へと投げ飛ばす。地下の狭い空間では分が悪いと見て戦場を元に戻した。ディエスを投げた直後、ミツキも素早く壁を蹴って上に登る。ディエスも受身をとって転がりながら立ち上がった。


「おおおおお!!」

「ああああああ!」


 距離は近い。二人とも魔法に頼らず、接近戦の構え。同じタイミングで地面を蹴って接近し、攻撃が、拳が交差する──




「!?」

「ぐぅっっっ!!」


 ミツキは寸前で腕を止めた。そこに現れた何かに気が付いたから。

 ディエスは振り切ったがその場に止まる。返ってきた衝撃は「起死回生(アブソープション)」によって余さず吸収された。 




「──馬鹿者ども。頭を冷やせよ」


「アテナ、さん……」


 いなかったはずのアテナがなぜか現れて、竜鱗(スケイル)をもって二人の戦いに終止符を打った。見ればその傍には発端となった少女が、うっすらと涙を浮かべてアテナの袖を引いている。自分のせいだと責任感を感じているのだろう。アテナを呼びに走ったのも彼女だった。


「戯れ合うのもいいが、時と場所は選べ。特にお前だ、『団長』よ」


 叱るでもなく、呆れたようにディエスを諌める。「団長」という言葉が持つ重みを、彼に確と示すように。


「──悪ぃ、やりすぎちまった」

「俺もだ。ごめんね」


 二人して気恥ずかしそうに頭をかきながら、あくまでも少女に謝る。それをきっかけにして、ディエスとミツキは各々の持ち場に戻っていった。



    ◇



「んじゃあ今日のところは終いだ。団員どもはガキをしっかり送って帰れ。俺らは後片付けしてから帰る。以上、解散」


 夕暮れが広がった頃、訓練の終わりが告げられる。結局残りの一日、ミツキとディエスが会話することはなかった。


「団長さあ」


 だが、確執が残っているわけではない。二人はそもそも、喧嘩をしていたわけではないのだから。


「ちょっと今日のは回りくどくなかったっすか?」

「うるせえ。俺も反省してんだよ」


 そもそもディエスは本気でミツキにキレていたのではない。多少頭にはきていたが、子供のやることだと納得できる範囲の話である。ならば何故あんなことになったのかというと。


「模擬戦したいなら言ってくださいよ」


 ディエスがしたかったのは腕だめし。リベラ相手に勝って見せたというミツキ。それを相手にして、果たして自分がどこまでやれるのか確かめたかった。


「お前それじゃ手ぇ抜くだろ。本気じゃねえと意味ねえの。まあ結局マジじゃあなかったみてえだが」


 回りくどい手段を使ったのは、ミツキの性質を理解してのこと。身内が相手となると露骨に手を抜くのが彼。手を抜くというのは語弊があるが、怪我をさせないように、無理をさせないようにと腰を引いてしまう。だから一芝居打ってミツキを怒らせようとしたのだ。

 しかし、ミツキも同様にディエスの性質は理解している。彼があの程度で我を忘れて怒る人間ではない、と。最初、腹部に一撃受けた段階で、ミツキはそう確信した。


「一応俺にできる限り本気ではやったっすよ? でも逆にやりづらいんで今度からは言ってくださいね」

「へいへい。お前に説教される日がくるとはなあ」


 ディエスは一応、今回の戦闘が団員にとって一助となればとの考えを頭の片隅にではあるが置いていた。誤算だったのは、訓練生が衝撃を受けてしまったこと。本気のやり合いを見せるには早かったと反省する。

 加えて、自分がまだ訓練生気分に浸っていたことも猛省していた。騎士団では教えを乞う立場。それが抜けきらず、ミツキとの勝負を楽しんでしまった。アテナに念を押されたことで、「団長」としての自分に戻らなければとそう思う。


 しかしそれでも。


「ま。週一くらいでやろうや。今度は邪魔入らねえ場所で、な」

「いいっすね。今度こそボコボコにしてあげますよ!」


 たまには、そんな自分もいいだろう。遠征を経てディエスの中に芽生えたのは、成長するミツキを楽しむのとは別の、自分が成長していくことへの期待だった。



「でもキレてねえと思ったら大間違いだからな、おい?」

「……ごめんなさい、ちょい調子乗ってました……」


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