小説を書くうえでの漢字・ひらがなの使い分けについて
そんなこと? そんな事?
できる? 出来る?
私は小説を書く際、この漢字・ひらがなの使い分けに悩むことがあるのですが、皆様はどうでしょうか?
中には迷わず書き分けられている人もいると思いますが、私のように悩む人も結構いると思います。
今回はそんな人達のために、使い分けに関する詳しいお話をしたいと思います。
それでは本題に移りますが、文章を書くうえで、漢字とひらがなの使い分けにはルールが存在します。
このルールは、どんな状況においても守らなくていけない『絶対的なルール』というワケではありませんが、一般的に浸透しているものも多いので可能な限り守った方が良いでしょう。
いくつかのルールについて、具体例を出しながら説明していきます。
まず、形容名詞について。
形容名詞とは、実質的な意味がない名詞や、本来の意味が薄くなっている名詞のことを指します。
たとえば、「こと」や「もの」などですね。
これらは、漢字ではなくひらがなで表記するのが一般的です。
下記にいくつか例を出します。
・事 → こと
・物 → もの
・所 → ところ
・方 → ほう
・訳 → わけ
・筈 → はず
・内 → うち
・通り→ とおり
・時 → とき
他にもあると思いますが、ざっと調べて出てきたのはこんなところですかね。
これだけでも、気になったことがあるという人は多いのではないでしょうか?
小説を書いていると「~すること」とか「そのとおり」なんて言葉は結構使用されますよね。
これに関しては、書籍化作家さんやライターの方を含め、多くの方が漢字を使ってしまっています。
特に多いのは、やはり「こと」ですね。
たとえば、「そんな事」と書く場合も実はひらがな表記が正しいのですが、漢字にしている人を結構見ます。
最初に書いていますが、これは『絶対的なルール』ではないため、守らなくても問題ありません。
上記の例で言えば、「そんなこと」の「こと」をひらがなにすることに抵抗を覚える人もいます(これは連続したひらがなとなるため、可読性が損なわれると感じる人が多いからでしょう)。
なので必ずしも修正すべき点ではありませんが、多くの読者に違和感を持たれないようにしたいのであれば、意識していく必要があるでしょう。
逆に漢字で書くべきケースもあります。
たとえば「出来事」「事と次第によっては」「中央通り」など、それ自体に意味がある場合は漢字を使用するのが正しいです。
また、小説などでは、ひらがなではなくカタカナ表記をするケースもあります。
たとえば「~するハズ」「モノ」「ワケ」などはよく見られますね。
特にライトな文体を意識するのであれば、こういったカタカナ表記もアリだと思います(ルールとして正しいかは別として)。
次に補助動詞について。
補助動詞とは、形式名詞と同様に、本来の意味が薄れている動詞のこと指します。
補助動詞もひらがなで書くべきなのですが、これは前後の文で使い分けが必要です。
簡単な使い分け方としては、本来の意味で使われているか、そうでないかで判断可能です。
下記にいくつか例を出します。
・行く → いく
・来る → くる
・見る → みる
・置く → おく
・下さい→ ください
・頂く → いただく
たとえば、「~していく」という使い方をする場合、本来の「行く」とは意味合いが変わりますので、ひらがな表記となります。
「~して」から繋げる場合は間違いなく補助動詞ですので判断しやすいですね。
これに関しては直感的に使い分けできている人が多いと思いますが、上記の例だと「ください」「いただく」に関しては漢字表記にしている人も多く見ます(私もよくやります)。
「ください」「いただく」に関しては場面によっては使い分けが必要になりますが、基本的にはひらがな表記推奨です。
他にも、パソコンやスマホなどで文章を書いていると、流れで変換し漢字にしてしまうことなどがあるので、しっかりと注意したいところですね。
次に接続詞について。
接続詞についても、一般的にはひらがなを用いたほうが良いとされています。
しかし、このルールは業界や会社などによっても異なるため、前述のものよりも若干緩くなっていることが多いです。
というのも、接続詞をひらがなにする理由が、「可読性をあげる」「文章を柔らかくする」というものであるため、意識的に文章を硬くしたり、前後の文章的にむしろ漢字の方が読みやすい場合などは、漢字表記の方が良かったりするからです。
これは作品の雰囲気や、作者の作風にも左右されるため、それに合わせた利用を心掛けると良いでしょう。
下記にいくつか例を出します。
・然し → しかし
・或いは → あるいは
・又は → または
・その為 → そのため
・及び → および
・故に → ゆえに
・依って → よって
・従って → したがって
・例えば → たとえば
・何故なら→ なぜなら
・更に → さらに
・その上 → そのうえ
・加えて → くわえて
・並びに → ならびに
・即ち → すなわち
・若しくは→ もしくは
・尚 → なお
・但し → ただし
・且つ → かつ
一部例外(公用文だと、名詞と名詞のつなぎに用いられる「及び」「並びに」「又は」「若しくは」の四語は漢字を使用するというルールがある)はありますが、上記は基本的にひらがな表記とすべきものになります。
前述したとおり、これらは必ず守るべきルールではありませんが、文章を読みやすくする工夫として意識すると良いでしょう。
(余談ですが、このエッセイには「たとえば」を多用しています。これまで全部漢字表記にしていましたが、この項を書く際に全て修正しました……)
次に副助詞について。
副助詞とは物事の程度などを表す助詞を指します。
下記にいくつか例を出します
・位 → くらい
・等 → など
・程 → ほど
・頃 → ころ
・毎 → ごと
・迄 → まで
・様 → よう
・丈 → だけ
上記のうち「迄」「様」「丈」はあまり一般的ではないので間違うことも少ないですが、「位」「等」「程」「頃」などは漢字にしてしまいがちですね。
これも作風次第では漢字表記もアリだと思いますが、文章を読みやすくしたいのであれば、ひらがな表記にするのが無難でしょう。
次に動詞・形容詞について。
動詞・形容詞の一部には、ひらがな表記が良いとされるものがあります。
下記にいくつか例を出します。
・分かるor解るor判る → わかる
・出来る → できる
・有るor在る → ある
・無い → ない
・良い → よい
・居るor要る → いる
・欲しい → ほしい
これらも使い分けができてない作品をよく見ますね。
しかし、これについても必ず間違っているとは言えません。
企業によっては、これらの文字は漢字表記にするというフォーマットがあったりするので、そのルールに従っているという人も少なからずいます。
ただ、上記の例の場合、漢字では意味合いが異なる場合もあり、正確に使い分けるのが難しいという面があります。
たとえば、「わかる」にはぞれぞれ、下記のような違いがあります。
分かる → 物事の道筋や相手の事情がはっきりする(例:気持ちが分かる)
解る → 物事の内容や意味、価値がはっきりする(例:答えが解る)
判る → 事実がはっきりする(例:真実が判る)
このような使い分けをしっかりとできていれば、漢字表記でも問題ないと言えますね。
しかし、こういった使い分けに関しては、そもそも読者が知らないというケースもあり得ます。
ひらがな表記であれば、そういったケースでも問題なく、たとえ作者が間違った認識だったとしても文章上は問題ないので、無難な選択肢と言えるでしょう。
「ある」「ない」「よい」「いる」も、漢字にすると意味合いが固定されます。
「物事の有無」、「良し悪し」、「居る居ない」などとは関係ない場面で漢字表記にしてしまうのは明確な間違いなので、避けた方が良いでしょう。
ちなみに、「出来る」に関しては上記とは異なり、意味合い自体はひらがな表記とほぼ変わりがありません。
しかし、一般的にはひらがな表記にされることが多いです。
漢字表記にするのは、「上出来」「出来事」など前後が漢字になる場合で、「でき」+「る」or「ます」などの使い方の場合はひらがな表記と覚えておけば良いでしょう。
(もしどうしても使い分けたい場合は、可能の意味では「できる」、物などが完成するなどの意味では「出来る」を使えば良いと思います)
最後に、その他について。
副詞・連体詞・形容動詞、接頭語、果ては名詞にまでひらがな表記にすべきものはあります。
全部を網羅することは難しいですが、これまでと同様に例として出していきます。
・沢山 → たくさん
・只今 → ただいま
・様々 → さまざま
・一杯 → いっぱい
・折角 → せっかく
・段々 → だんだん
・中々 → なかなか
・度々 → たびたび
・貴方 → あなた
・何処 → どこ
・所謂 → いわゆる
・何と → なんと
・殆ど → ほとんど
・何時か → いつか
・敢えて → あえて
・一体 → いったい
・至って → いたって
・暫く → しばらく
・随分 → ずいぶん
・既に → すでに
・全く → まったく
・全て → すべて
・余り → あまり
・概ね → おおむね
・共に → ともに
・遂に → ついに
・既に → すでに
・~と言う → ~という
・わかり辛い → わかりづらい
・易い → やすい
・何年振り → 何年ぶり
・過ぎない → すぎない
・他 → ほか
・有難う御座います → ありがとうございます
・お早う → おはよう
・御目出度う → おめでとう
・今日は → こんにちは
・今晩は → こんばんは
・宜敷く → よろしく
・平仮名 → ひらがな
・勿論 → もちろん
・達 → たち
・生憎 → あいにく
・偶々 → たまたま
このエッセイで紹介している例は、参考サイト様から私の独断と偏見で抜粋したものになりますので、探せばまだまだたくさんあると思います。
ただ、これを見た人の中には、漢字表記の方が良いんじゃ? と感じる人も多いと思います。
実際私も、少し上で「まだまだたくさんある」とひらがな表記にして読みづらさを感じました。
こういう場合、前後の文章に応じて使い分けるのがベターかもしれません。
ただしその場合、作品内で使い分けにブレが生じないよう、どちらかに統一するのが良いでしょう。
また、上記の例の中には、限定されたタイミングでのみ、ひらがな表記となるケースもあります。
「他」は基本的に漢字表記になりますが、「ほか3名」などと書く場合はひらがな表記になります。
以上、長々と書かせていただきましたが、どうだったでしょうか?
気づかないで使い分けを間違っていたものが、それなりにあったんじゃないかなぁ、と思っています。
そういった人たちの「気づき」になれたのであれば幸いです。
また、当然ながら気づいていても、あえて漢字表記を貫いている人もいるでしょう。
作風や文体に合わせている場合もあると思います。
そういった人たちは、無理に修正をする必要はありません。
修正したことによってひらがなだらけになり、逆に読みづらい文章になっては元も子もありませんからね……
このルールは、あくまで一般的なものであるため、わざわざ作風を変えてまで矯正する必要はないです。
ただ、漢字で書く方がカッコイイとか、頭が良さそうとかいう理由で漢字表記を多用しているのであれば、それは考え方を改めた方が良いでしょう。
適度に使い分けができている方がむしろ頭は良く見えますし、文章も読みやすくなります。
作品自体の完成度も上がりますし、可能な限り使い分けを意識した方がよいと思います。
最後にですが、ルール外の書き方がされていると違和感を覚える人はそれなりにいます(ルール警察など)。
そういった人達は、その違和感から結局読むのをやめてしまうということも少なくありません。
もし少しでも多くの読者を得たいのであれば、可能な限り違和感はなくしてやるべきでしょう。
ほんの少し意識するだけのことで一部の読者離れを防げるのですから、やれる限りのことはした方がいいです。
私自身も、過去作品にはそういう意識が行き届いていないので、自戒の意味でもこのエッセイを書かせていただきました。
それでは皆様、よい執筆ライフを。
これはクレクレの類ではないのですが、宜しければこの作品をブクマして頂き、執筆の際に悩んだら読み返してもらえればと思っています。
参考サイト的な使い方をしていただければ幸いです。
(あ、もちろん純粋にご評価、感想などを頂ければ喜びます^^)
ちなみに、私がこの作品を書くにあたり参考にさせていただいたサイト様は下記になります。
・漢字・ひらがなの使い分け一覧!迷わず文章を書くポイントを紹介
https://freelance-support.site/2020/12/30/kanji-hiragana/
・漢字とひらがなの適切な使い分けとは
https://kagurazaka-editors.jp/common-kanji-and-kana/
・永久保存版!漢字よりも【ひらがな】で書いたほうがいい言葉リスト!
https://school-edu.net/archives/11102