3話 曹帝国
3話 努力
ーー平級1万は超級1に劣るーー
こんなことわざがある。
超級がいかに規格外かが分かる教育的ことわざだ。想像して欲しい。無双ゲームでプレイヤーがそこらの雑魚キャラにやられる姿を… なんの操作もせず10数分放置すれば達成できるだろうか。
否、ここは現実である。1つしかない命を敵の前で悠悠と危険に晒すわけがない。もちろん相手もだ。
もし平級の僕が戦場で超級と出会えばそれは確実な死を意味する。
その確率を少しでも下げたい。
それには分隊長になることが必須であった。
平級の中でも実力のあるものに限られてくるが分隊長になれば安全な後列で待機するため比較的安全なのだ。
そして若干5歳の頃から剣を振り微量な魔力を常に行使し続け今に至る。
僕は帝都の門の前でへたり込んでいた。
「さすがに… 疲れたな…」
ここに来るまで20日かかった。遠すぎである。
「なんだこの薄汚い少年は… 気持ち悪い」
貴族と思わしき小太りした男性が心無い言葉を投げてきたのでしぶしぶ立ち上がり門兵の検問を受ける。
「徴兵での来訪か… 次!」
あっさりと検問は終わり門を通過する。
通過した先には数世紀前の中華を思わせる外観の街が広がっていた。
住宅ひとつひとつの外壁には彫刻が彫ってある。特に龍や鳳凰の彫刻が多く目立つ。そのきらびやかな風景の至る所に赤い提灯がぶら下がっており街全体と見事にマッチしていた。
「まあ 分かってたけど… やっぱりそうだよな」
門の前で立ち止まった僕はそう呟きここが四国無双の世界であるということを再認識させられた
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帝都の中心にある教育機関"曹帝国軍訓練施設"にやってきた。
その入口には同じ世代ぐらいの男子が5千ほど集まっており互いに新品の剣を見せあったり今まで鍛えてきた筋肉を見せつけるものもいる。
同郷の友達がいない僕はひとりぽつんと立っていた。
「こんなにいんのかよ…」
前世の満員電車ほどではないがかなりの圧迫感がある。ずっと田舎に住んでたので人の多さには慣れず少し気分が悪くなる。
すると後ろから若い男の声がかかる。
「お前田舎くせぇな!格好ぐらいどうにかしろよ」
僕より少し背が高く黒い短髪の青年だ。後ろには5人ほどの取り巻きがクスクス笑いながら僕を見ている。
どうやら男子6人グループのリーダー格の男が話しかけてきたらしい。
「ああ まだ来たばかりでさ 着替える余裕が無かったんだ」
それを聞いた黒髪短髪の青年から笑顔がきえる。
「なにタメ口聞いてんだ」
おいおいやめてくれ…
「も 申し訳ありません! 田舎から来たばかりで常識とか全然知らなくて…! 不快にさせてしまったことを深くお詫びします!」
周りに聞こえるように土下座アピール。無様に地べたに額をつけ騒ぎを大きくする。
なんだなんだと野次馬が集まり始めた。
「ちっ 」
分が悪いと思ったのか いくぞ と言って男子グループが去っていき野次馬もそれに順じて散っていった。
スっと立ち上がり額やひざに着いた土をはらう
「予想はしてたがここまでとは…洗礼は回避出来たがあいつらには気を付けないとな」
しばらくして施設の兵が僕らを訓練場まで案内してくれた。
そこはただただ広い空間で15万の兵士が不自由なく訓練出来るほどだ。もちろん天井はなく、周りは20メートルほどの塀で囲われている。
クヤンはこの風景に見覚えがあった。
「チュートリアルで出てきた訓練所か」
そしてこれから長い長いチュートリアルという名の地獄が始まるのであった。