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八話 ちょっと慣れてきた部活

二章です

普通の高校生は放課後、一体どのようなことをするのだろうか?

 代表的な例を挙げるならば、部活や先生の手伝い、友達と教室で駄弁るのもありだ。その他にも仲のいいグループでカラオケなんかに寄り道するのもありだろう。爆ぜろ。

 僕は基本的にナンバーワンでオンリーワンの友人にさよならを告げてから真っ直ぐに帰宅するか、スーパーに寄るかの放課後を過ごしている。つまり一人。孤高。ALOOF。とてもかっこいい。

 だがしかし、放課後今日の放課後。

教室を出た僕に、とある人物が話しかけてきた。


「夢咲君、一緒に部活行こう?」


 言わずもがな白川日和さんその人である。

 綺麗な亜麻色の髪をストレートに下ろし、見たもの全てを恋に落としてしまいそうな微笑みを浮かべている。一年生のアイドルと評される美少女が、冴えないモブ男子Fに話しかけて来るとかどこのラブコメだよ、というくらいの展開だ。僕自身、現在進行形で心臓がバクバクしている。


「あ、あの白川さん。態々ここまで迎えに来てくれなくてもいいですからね?その……ちょっと周りの視線が痛いと言いますか」


 周囲の視線が怖くてバクバクしている。僕みたいに普段教室の隅っこで親友(自分の中では)と二人で駄弁っているだけで、注目されることに慣れていない人間にこの状況は酷だ。現に僕に視線を向けてコソコソ話す声が聞こえる。


「白川さんがなんでこんなところに?」

「っていうかあの男子誰?彼氏?」

「白川さんに彼氏がいるわけないじゃん。弱そうだし」

「今、俺の視界には女神が映っているぞ」

「俺もだ。もしかして俺、死んだのか?」

「違いない。ここはきっと、天国なんだ」

「シラカワールドの住人になったんだな。俺たち」


新世界誕生。ひどいことを言う女子は置いておいて、男子たちから神格化されているじゃないかあなた。女神さまが一人の生徒にこんな接し方しちゃダメなの!もっとみんなに平等に!神様でしょうがあなたはっ!


「クラスがざわついているので、女神さまは早く部室へ向かった方が良いかと」

「?なに言ってるの?」


 訳が分からないといった感じで首を傾げる白川さん。そんな彼女を見たクラスの男子たちがこぞって心臓を抑えて倒れこんだ。彼女の『首を傾げる』は、思春期タイプの男子には『効果は抜群』のようだ。彼らは瀕死状態。どこぞのセンターで回復しても、長期間に渡って状態異常が続くことになる。状態異常『恋患い』が。玉砕率は驚異の一〇〇パーセント。


「状態異常の生徒たちの視線を浴びながら長時間過ごすのはキツイので早く部室に行きましょう。さぁ早く。さぁさぁさぁ」

「え?あ、うん。何言ってるのか全然理解できないけど……」


『混乱状態』になりながら彼女は僕の後ろをついてくる。背後から状態異常者たちの唸り声が聞こえてくるが、僕は聞こえないふりをしよう。『シカト』を習得しているのだ。フッ、造作もない。


「白川さん。今度から技を使う場所は考えてくださいね?」

「いや本当に何を言ってるのか理解できないよ」


 恐らく彼女は、いつか気づくことになる。自分が思春期男子たちにとって、核爆弾級の威力を持つ存在であるということに。

 そして僕は、被害に遭う男子たちを見てこう思うのだ。

 お疲れさま。って。


     ◇


 部室に到着し、扉を開けると、神林先輩が白いキャンパスをいじめているのが真っ先に目に入った。紫色の絵の具を筆に浸らせ、無造作に、己の感覚のままに振るう。かっけえ。


「今日は黒瀬君が最後ですね」


窓際にいた部長はそう言いながら、こちらへと歩いてきた。


「黒瀬先輩が遅いって珍しいんですか?」

「そういうわけではないですよ。今までも何度かありましたし」


 僕が入部してから丁度一週間が経ったが、黒瀬先輩は大抵僕らが到着する頃には部室で作業をしていた。一体どれだけ早くSHRが終わるのだろうかというくらいに。

 そういうわけで、僕は黒瀬先輩が遅刻するなんてことはありえないと思っていたわけである。


「なにか理由があるんですかね」

「ありますけど……」


 部長はちょっと悩んだ素振りを見せた後、人差し指を唇に当て、ウインクしながら言った。


「それは本人から直接聞いてください♪」


 ……可愛い。が、一体何を企んでいるのかわからない不安がある。

 そもそも黒瀬先輩が教えてくれるかわからない。「お前には関係ないだろ」って言われる未来が見えている。


「まぁ、教えてもらえなかったら部長に聞けばいいか」

 

あの感じだと理由を知っているようだし。

 楽観的に考えながら、僕は黒瀬先輩の到着を待つことにした。



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