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 馬車ではなく徒歩で国境を越えることになったが、とくに問題なく関所を通過できた。

 先日の魔法騎士団がでばってきたことは、秘密裏にしたいのか伝わっていないようでとてものんびりとしている。

 バジルはフードで顔を隠しているが、レンのフォローもあり怪しまれることもなかった。

 やはり歳が一番近いからか、バジルとレンの会話は弾んでいるようだ。

 少し離れて、アルストレーナはその光景を見ていた。


 (あの人が、本当のお姉ちゃん) 


 王位継承権とかそういったことは考えないようにして、アルストレーナは前を歩くバジルの背中を見つめる。

 

 「本当に良いのか?」


 いつもの元気がないアルストレーナに、めったに見せない気遣いを使ってオオグがそんなことを言ってくる。

 

 「何がですか?」


 「記憶消さなくて」


 「大丈夫です。だって、ずっと秘密にされてたってことは、ボクは表に出ちゃ行けない存在ってことですもん。

 お母さんも、今のお父さんも問題にしたくなかったから、聞かせたくなかったから、この話からボクだけ除け者にしてたと思うんです。ボクだけ仲間外れなのは本当に今さらなので」


 「仲間外れ?」


 「知っている、っていう括りだとそうでしょう?

 お父さんもお母さんも師匠も知っていた。

 でも、ボクだけ知らなかった。

 そして、ボクだけが子供ですから。

 ボクは大人の仲間には入れない。それに」


 「それに?」


 「ボクは、きっと誰かの代わりになるために生まれてきたんだろうなって、ちょっと思ったんです。それがちょっと嫌だなって思って」


 「それを聞いて安心した」


 「へ?」


 「エステルが、お前のことを若い頃の俺に似てるって言うから、少しだけ気掛かりだったんだ。

 でも、今の言葉を聞いて安心した。お前は俺みたいにはならないってな。

 お前は、御両親にとても大切にされてるよ」


 不思議そうにアルストレーナはオオグを見た。


 苦笑を浮かべたまま、オオグは続けた。


 「ちゃんと、嫌なことを嫌だなって実感してて声に出せてる。

 それが出来てるってのは壊れてない証拠だ。

 喜怒哀楽、お前が全ての感情を出して、それを御両親が受け止めてくれたから。お前は今のお前になっている。

 いい御両親だな」


 「っ、そう、でしょうか?」


 「少なくとも、俺はそう感じた。

 感じかたなんて人それぞれだ。俺とお前の解釈が違ったとしても、そういう一面があるってことを忘れるなよ。主観だけが、自分に見えてることだけが真実でも事実でもないからな」


 「先生達は、ボクが知っていると言うことを誰かに言いますか?」


 「いいや。俺もエステルもそんなつもりはない。

 あ、そうすると俺とエステル、そしてアルストレーナは共犯の仲間になるな。

 秘密を共有してる仲間だ」


 冗談めかしてそう言ったオオグに、アルストレーナはやっと笑ったのだった。

 

 と、さらに今まで黙って一番後ろにいたエステルが誰にも聞こえない声で呟いた。


 「たしかに、人間臭いだけまだマシだよな」




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