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 「そう言うわけで、日程は変更。滞在期間が延びるので各自旅支度を整えたら明後日に王女様の護衛として聖ルクシミリオン王国に入る。

 何か質問は?」


 お世話になっている冒険者ギルド【綺羅星】にて、そんなミーティングが行われていた。

 説明を行ったのはエステルである。


 「はい! 先生質問です!」


 元気よく手を挙げたアルストレーナが質問する。


 「ドライフルーツはおやつに入りますか?」


 「非常食にもなるから用意はしておけ」


 「あ、私も質問です」


 今度はレンが控えめに手を挙げた。


 「武器や道具を買うお金は自腹ですか?」


 「経費で落とすから、一人金貨百枚までだったら好きに使うこと。

 領収書をもらうのだけは忘れるなよ」


 もちろん武器以外にも揃えなければいけない。

 そのためのリストを作り、その用紙をオオグがアルストレーナとレンに配った。

 この際だから、魔方陣を使用しての薬の精製なども教えようと決め、道具は学校の備品を取り寄せるので問題はない、そのため素材だけを買い揃えるようリストに書いて配った。


 「明日は買い物のあと、薬の精製を教える。

 その授業が終わったら荷物をまとめて早めに就寝だ」


 その光景を、珍しげにそして不思議そうにバジルは見ていた。


 「なんというか、噂に聞いていたような厳しさがないんですね」


 ほぼ悪名のようになってしまった、天空第一総合学校の代名詞でもある『実力主義』のことを言っているらしいバジルに、一緒にそのミーティングを見ていたリオが苦笑した。


 「アルストレーナさんとレンさんは一年生、下級生らしいですからその辺もあるんじゃないですかね?」


 そう答えた時。

 控えめに、ミーティングに使っている扉がノックされ、美味しそうな料理をギルドメンバーであるソータとハル、そしてリオの経営する店でバイトをしている少年リュウ。

 料理が並べられていく光景を、ほぼミーティングは終わっていたということもありアルストレーナとレンも無邪気に眺めている。

 料理を並べ終えると、リュウだけが退室していく。


 「今日は悪かったな。ほらこれ特別報酬」


 リュウにそう労いながら、リオはこの分のバイト代を渡す。


 「ありがとうございます。マスター」


 「と言うか、お前も食ってけよ」


 「え、良いんですか?」


 「それ見越して大量に作らせたからな。お前の料理は評判いいし」

 

 それと、歳の近い者が多い方がバジルにとっても良いだろうという勝手なお節介でもあった。

 その証拠に話しやすいのか、バジルはアルストレーナとレン、そしてギルドメンバーのハルと楽しげに話をしている。

 逆にソータが取り残され、どこか寂しげだ。哀愁すら漂っているように見える。

 ソータとリュウは職場こそ違うが同じ上司の下にいるためか、何度か顔を合わせているということもあり、まだ知らない仲ではない。

 と言うか、ソータはリュウに居たたまれないから話し相手になってくれと目で訴えていた。


 「では、お言葉に甘えることにします」


 そんな感じで夜は更けていった。



 ***


 

 ニューラグーン民国と聖ルクシミリオン王国は隣り合っている。

 と言うよりも、聖ルクシミリオン王国は神々が建国したとされる国、その全てに囲まれている。

 北より少しずれた北西には神聖フェイルート帝国、西にはエリア王国、南には神国エリュシオン、東にニューラグーン民国という位置付けだ。

 エリア王国より西には大小の様々な国が乱立しいまだに戦争が絶えないらしい。

 エリア王国はその戦火から逃れてきた移民達の受け皿的な役目と、そして戦争を利用し武器を売ろうとする商人たちで賑わう国でもあった。

 とは言え、エリア王国より東側に行けば行くほどそんな移民の問題は同じ国内でも他人事として扱われていた。

 西から入ってきた物珍しい商品だけは国のあちこちに流れていて、より東側にあたる聖ルクシミリオン王国の国境近くでもあるこの小さな街にもそんな珍しい品が露店に並んでいた。


 「安全のために遠回りした甲斐があった」


 トールの言葉にセージも頷く。

 ニューラグーン民国から目的地である聖ルクシミリオン王国の領の一つであるヴェルサス領に行く一番の近道は、ニューラグーンからルクシミリオンへ真正直に入国して国内を突っ切ることだったが、急がば回れ作戦をとって、トールとセージは一度南下し、神国エリュシオンを通って西側のエリア王国へ入ることにしたのだ。

 ニューラグーン民国の時もそうだったが、他国に入れば一時的に追っ手の猛攻が収まった経験から、セージはたとえ遠回りだろうとこの案に異を唱えることはしなかった。


 「ここで一度支度を整えよう」


 「はい」


 商人の国、そんな異名をもつエリア王国であるから、あちこちに物珍しい品が並んでいる。

 そして多種多様な種族が行き交っていた。

 

 露店が並ぶ道を抜けて、武器屋へと入る。

 他にも客がいて、店主に武器を見せてもらいながら話をしていた。

 その客は乱雑に伸びた茶髪を無理矢理一つに束ねた男だった。


 「いらっしゃいませ、申し訳ありません少々お待ちください」


 店主の言葉にセージとトールは順番を待つ間、商品を物色する。

 その間に先客は会計を済ませて、店主に礼を言ったかと思うと買った物を収納魔法で片付けて店を出ていった。

 出ていくときに、たまたま入り口近くにいたセージに会釈した。

 彼の母国であるルクシミリオンではあまり見ない顔立ちだ。

 しかし、このエリア王国は多種多様な種族の移民や難民や商人が行き交っているので、普通なのだろう。


 男が店の外に出ると同時に甲高い子供達の声が、閉まる扉の向こうから聞こえてきた。


 「あ! オオグ先生、用意できましたよ」


 「はい! これ先生にプレゼント、ボク達二人で選んだんだー。その髪紐切れそうだしさ」


 「お前らなー、本当にちゃんと用意できたのか?」


 あきれたような先客の声は、扉が閉まると完全に聞こえなくなった。

 同時にトールと店主から話を振られた。

 どんな武器が良いのかという質問だった。


 武器を揃えたあとは必要な食料なども買い込む。

 それから安宿に部屋をとって、食事もそこそこに休んだ。

 明日は早朝にはこの街を出る予定だった。


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