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アルストレーナは奨学生ではないので、そちらからのお金はでない。
しかし、額としては少ない方だが実家から小遣いの仕送りをされていたので、自由に使えるお金はあった。
本人は知らないことだったが、それは母であるレイナが家族の元から追い出された時に渡された手切れ金の一部である。
養育費と、第一天空総合学校の入学金、それとアルストレーナの将来のための貯金にまわしてもまだ余ったので、それを少しずつお小遣いとして彼女に渡していたのだ。
とは言っても、世間一般の農家の子供よりは少ない方だ。
決められた額でお菓子や筆記具などの備品を揃える時に、お金の使い方なども教えてもらったものの、そこまで物欲もなかったので貯まる一方だった。
そのお金をアルストレーナは今回のプチ旅行での小遣いに回すことにした。
「いい?
お金は財布だけの一ヶ所にいれておくんじゃなくて、荷物の中に分散させるの。防犯対策ね。
そのお財布も、スられないように紐とか鎖とかで体にくくりつけること」
「わかった。ありがとレン」
「あと置き引きにも注意ね。
それと団体行動が基本だから、知らない人に声をかけられてもお菓子をもらってもついていかないこと」
「うん。というかレンも一緒だからレンや先生から離れなければ良いんだよね?」
「そういうこと」
企業体験のプチ旅行が明日にと迫った。
荷造りの最終チェックをしつつ、アルストレーナはレンから旅行のレクチャーを受けていた。
「ボク、山からほとんど出たことないから楽しみだな」
「今回は応募者が少なくてアンと私だけだから、ゆっくり色々見て回れそうって先生たちも言ってたしね」
いつもは人気だというのに不思議そうにレンは言った。
「でも、冒険者ギルドってよくよく考えればわからない組織だよね。
運営方法とか」
その最たる例が依頼だろうか。
仲介料だけでは人件費などなど諸経費は賄えないだろうし、毎回そう都合よく高額な依頼が入るわけでもないだろうし。
「そっか、アンは冒険者科目取ってないから知らないのか。
えっと簡単に言うと組織は二種類にわかれるんだよ。
ひとつは国際的な組織で、各国がお金を出しあって国のあちこちに設置してるギルドね。
正会員がここの所属で、その正会員が支店のように運営してる小規模のギルドがあってそこに所属してる人達は準会員になるわけ。
準会員も正会員も国際冒険者ギルドの方に会費と合わせて武器や、必要な備品を発注したり降りてくる依頼を受けてる。
よくギルドマスター云々の話が出るけど、あれは冒険者ギルドの支店ね。
本店には幹部会員から構成される運営委員会があって、委員長はいるけどギルマスはいない。
元々は各地の小さな村まで手が回っていなかった害獣、魔物の駆除や業者じゃ手にいれるのが難しい素材を危険地域にまで取りに行ったりする何でも屋が前身だったらしいよ」
「へぇ」
「で、支店ギルドの経営もフランチャイズか直営の違いってのもある」
「ふらんちゃいず?」
「簡単に言うなら、本来は正会員でないとお店が持てないけど準会員の独立を目的にした新しい冒険者ギルドの経営方法のひとつ。
正会員が運営してる支店ギルドが直営で、準会員が運営してるのがフランチャイズらしいよ。
この辺は経済系の科目をとると勉強できるよ」
「ふむふむ」
「ま、どっちにもメリットとデメリットがあるから、絶対に稼げるとは限らないけど」
「世の中に絶対はないのかぁ」
「ちなみに、今回私らがお世話になるのはオオグ先生達の知り合いがやってる小さなギルドらしいよ」
「へぇ。楽しみだなぁ」
「体験学習が目的だから、毎回そうだけど雑用とか私らでもできる採集依頼とかやらされるけど、オオグ先生やエステル先生が引率の組み合わせだと美味しいご飯が食べられるから人気なんだよね。
今回は不思議なほど人が集まらなかったけど」
「ご飯か。楽しみだなぁ。採集依頼もやったことないからすごく楽しみ」
「アンは旅行も初めてだしね。一応現地でも説明があるけど、その配布された旅のしおりはよく読んでおくように。
緊急時の帰還魔法とか避難先や連絡先も載ってるから」
「わかったよ」
初めての旅行にアルストレーナは胸を踊らせていた。
エステルやオオグからも、いろんな話を今日まで聞いていたので、その期待値は上がりまくっている。
ジョセフにもお土産を買ってこようと気の早いことを考えながら、その日は早めに二人は休んだのだった。




