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 時間は少し戻り、アルストレーナの実家が襲撃された直後。


 「ルベウス様のことはご存知でしょうか?」

 

 トールの指示に従って、慣れないながらドラゴンを解体していく。

 解体しながら、セージはトールに何故自分がここにいるのかを説明した。

 仕事の話、ということでレイナは家の中で残っていた家事をいつも通りこなしていく。


 「もちろんだ、神託と調査で種無しが発覚して王位継承権を剥奪されて、領地を与えられて引っ込んでいたはずだが」


 「王位継承権の剥奪についてはどれくらい知っていますか?」


 「詳しい経緯は知らん。今言ったことだけだ」


 「そうですか。ルベウス様は、結果的には地方に流されたことになります。

 当初は手がつけられないほどの荒れっぷりだったとか。

 しかし、有力貴族の娘と結婚し養子をもらって暮らしていくうちに、しだいに穏やかになったということです」


 「でも、違ったんだろ?」


 「はい。元々ルベウス様派だった貴族達は十五年前の神託によって、父に鞍替えする者と中立派、そして反現王派と分かれました」


 反現王派はそのままルベウスの復権を狙っていたらしい。

 そして、そのためにセージがここに来ることに、トールに助けを求めることになったらしい。

 と言うのも、ルベウスの治める領地に仕事の関係で護衛とともに向かったリトが囚われてしまったのだ。

 

 「どうやら一ヶ月ほど前に下った神託の内容を、何処かから聞き付けたようで」


 「神託? 今度はどんな内容だったんだ?」


 「それが、新しい王についてでした」


 「そんなの定期的に行われてるだろ、なんで今更」


 「次の王は俺でも妹でもない、第三者だったらしいんです。

 神の指名は絶対です。ですが、詳細を母は伏せました。

 俺や父、おばあ様にも誰が次の王なのか知らせなかったんです。

 ただ、次の王は俺たちや過去王族の姫が嫁いだ公爵家の誰でもない、と」


 「それだけか?」


 「はい。時がくればその者は立ち上がり国を導くだろうと言うのが、母の言葉でした。

 ルベウス様は、次代の王を手に入れ傀儡にして、実権を握るつもりなのだろうと思います。

 今、王都にいるのは俺たち家族の影武者で、父やおばあ様、妹は安全な場所へ避難しています。

 今度は誰が狙われるかわからないからです。ルベウス様は、母が俺たち家族の誰かに神託の詳細を教えたと考えているようで、それをーー次の王が誰なのかを言えば母を開放すると言ってきました。

 しかし、誰も詳細を知らされていません。とにかく話し合いのために使者をルベウス様の領地へ派遣したのですが、首だけの状態で送り返されてきました」


 「さっきの追っ手はルベウス様の刺客か?」


 「おそらく。うまく巻けたと思っていたのですがすみません」


 「追っ手については、まぁ仕方ないとして。

 お前は、不満は無いのか?

 その神託について」


 「それ、冗談ですか? それとも嫌味ですか?」


 苦笑がセージから漏れる。

 

 「王族と言えど、過去庶民から嫁いだ者がいて、その血が入っていようと俺に対する風当たりはキツいんですよ。

 元々、妹のバジルが王位継承権は俺より下ですが、次期女王として期待されていました。

 文武両道才色兼備の妹は、素質も資質も、そしてその外見も充分でしたから。

 俺は、この黒髪に黒目でしょう?

 貴族やその子息達の目も白かったですし、妹と違って俺は優秀ではなかったですし。

 努力をしてもそれはけっして埋まらないものでした」


 そこでセージは言葉を切りトールとレイナが住んでいる家を見る。

 そして、続けた。


 「俺は、この色嫌いじゃないんですけどね。

 今の母のことは好きですけど、それよりも本当の母親の色というのはやっぱり特別だったんです。

 そして、嫌な思いもしたけれどこの色で良かったと俺は今日、心底思いました」


 「知ってるのか」


 「はい。レイナさんが俺達双子の産みの親だということを、本当の母親だと言うことを俺は知っています。

 ただ、俺が知っているということを、父や妹、おばあ様は知りません。

 それは言ってはいけないことだと、なんとなく子供の頃の俺は悟っていたんです。

 俺、物心がつくの早かったんですよ。そして記憶力だけは良かったんで。

 これが文武の方に活かされていたら、もう少し学院での成績も良かったんでしょうけどね」


 「そうか」


 「実際、俺は王位については興味がありません。

 時が来たら父に廃嫡を申し出るつもりでした」


 セージは自分のことをよくわかっていた。

 だから、いずれ一般人になることを想定してそちらのほうの勉強も下手なりにしていたのだ。

 そのためか、今までの王族や貴族と違って彼は自分のことは自分で出来るし、祖母もその勉強に協力していたので家事なども得意である。

 こんなことになるなど予想もしていなかった頃は、よく祖母に平民になったら表通りにあるケーキ屋に弟子入りして働くのだと言っていたほどだ。


 「そうか。まぁ、それは殿下の人生だから俺が何か言う筋合いはないな。

 それよりも、殿下の願いというのは?」


 「育ての母であるリト様の救出、あるいは暗殺をお願いにきました」


 「暗殺とはまた物騒だな」


 「............」


 「それは、誰の案だ?」


 「俺です」



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