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生き残っている生徒のなかには、アルストレーナ達を一方的に目の敵にしている三組の面々も残っていた。
その生徒達に、試験官である教師の一人は情報を流した。
念のため、話を聞かれないように、見られないように結界を張ってある。
本来、エステルやこの学校の最高責任者であり権力者であり、そして創設者の許可なくこう言ったことをするのは違反になる。
つまりは処罰の対象になる。
しかし、この教師はそれを違反だとは考えていなかった。
正しいことをしているのだと、欠片も疑っていなかった。
その頭の中にあるのは、ただ劣等種や落ちこぼれを排除しようとする考えである。
そもそも、この学校はもっと上の存在にならなければいけないのだ。
潤沢な資金があり、一定の条件を満たせばどんなに貧しく卑しい平民や、平民以下の農民、そして奴隷ですら勉学の場を提供できるようになっている。
学費の完全免除である。
貧しく本来なら一生読み書きすら出来ない者ですら条件を満たせば国のよっては借金扱いとなる奨学金も、返済の義務がないという徹底ぶりだ。
どんな存在にも勉強する権利と場所を与えてくれるのだ。
しかし、これに反発する者は多い。
貴族や知識人にのみ許された音楽なども教える必要がどこにある?
生まれた身分のまま一生を過ごすのが、世界を平和にしているというのにそんなことをして何の意味があるのか、この教師もそうだが同じ考えの者は生徒や教師を問わず一定数いた。
優秀で能力があると判断されたら、その身分に関係なく優良な就職先を優先して斡旋していることも気にくわなかった。
何度か、この学校で一番の権力を持つ創設者や、二番目に権力を持っているエステルに学校の改革を提案したが却下され続けていた。
それがようやく、特別クラスの新設と生徒の選抜にまでこぎ着けられたと言うのに、おそらく創設者とエステルの横槍らしい邪魔が入った。
その邪魔もたいそうふざけている。
変質者を投入してきたのだ。
その件でエステルを問いただしたが、飄々とかわされてしまった。
彼女に下手に喧嘩を売ると、先日問題が発覚し退職させられた選民意識を持っていた同僚と同じ結末になりかねない。
教師の何名かはこの学校を乗っ取りたいのだ。
潤沢すぎる資金に、地上では考えられないほどの技術力を有している、今のところ学校という形を取っているこの空に浮かぶ施設は国と言っても過言ではないだろう。
魔王ではないが、世界を手にすることだってできる設備と人材が揃っているのだ。となれば夢をみたくなるというものだ。
しかし、いつからか呼称されるようになったこの学校の代名詞でも実力主義。
この学校を支配する創設者とエステルのそれは、人間族でありながらこの世界のどの種族の、どんな強者とも一線を画している。
この教師もそうだが、雇われている教師と生徒のほとんどが創設者の顔を知らない。
もし知っていたら、他にも手を打って取り入るなどしているところだ。
しかし、側近であるエステルがいて完膚なきまで叩きのめされるのだ。
なら、どうやってこの空の国とも呼ぶべき学校を手に入れれば良いのか?
搦め手ではあるが、エステルの地位を追い落とすしかない。
では、どうすればいいのか?
弱味や醜聞で、生徒や中立の教師達からの信頼を無くせばいい。
と、そこまでは考えた。
しかし、醜聞も弱味も見せない。
それらをさも真実の如く作り上げた同僚もかつてはいたが、手痛い反撃にあい学校を去ったあと、首を吊ることになったと聞いた。
自殺に追い込んだ、と訴えた者もいたがやはり完璧な反撃にあい撃沈した。
そうして機会を窺っていた矢先に、ようやっと今回の話にこぎ着けたのだ。
お誂え向きに、人脈だけで入学したらしい生徒に肩入れしているとも聞いた。
これを利用すれば、エステルを追い落とすことができると思ったのだ。
しかし、その生徒はいまだに脱落することなく生き残っているらしい。
試験の結果、特別クラスには一年生全員が落ちた。それは別にいい。
しかし、実力がないのにエステルが気にかけている生徒ーーアルストレーナが生き残っているということにその教師は内心で怒りをためていた。
推薦者こそ賢者トゥオーフだが、その成績は並み。
教養もなにもかもが、この教師が目をつけている生徒に比べて劣りすぎている。
すぐに脱落すると思っていたのに、それが生き残っているのだ。
化けの皮を剥いでやる。田舎の肥やし臭い娘に現実を見せてやる。
そんな考えが、他の三組の生徒達十数人をけしかけるという行動に走らせた。
生徒にとって不利になっていた特殊な術式も、考えを同じにする他の教師によって解かせた。
「もう魔法は使える。あの田舎娘にお前らの実力を教えてやれ」
実力のない生徒に肩入れしていたという明確な証拠を握って、突きつければ少なくともエステルの地位は地に堕ちる。
あとは一気に実権を掌握すれば良いのだ。
無駄に自意識が高く、他人を見下している者ほど、何故か自惚れる傾向にある。
その様子もエステルは、しっかりと監視していた。
監視している対象者達は結界を張っているからと気を抜いているようだ。
こう言ったタイプは自分にならできる。自分だからできる、と自信に満ち溢れている。
では、その自信が崩された時どうなるのか?
それを想像して、エステルはやはり楽しそうに笑った。




