28
やっとのことでドラゴンを見つけた。
ドラゴンは開けた場所で眠っていた。
「で、どうやって獲るの?」
すでに試験一日目は過ぎ、二日目の朝である。
レンはこう言った狩りは初めてなので、やり方をアルストレーナに聞く。
「お手本を見せるから、ここで待ってて」
そうしてアルストレーナだけが気配を殺して眠っているドラゴンに近づいていく。
手にはエステルから渡された剣があるだけだ。
他の荷物はレンに預けている。
と、そんなレンに話しかけてくる人物がいた。
「お、ドラゴン狩りか」
敵意も殺意も無かったので、レンは声のした方へ振り向いた。
「あ、オオグ先生。先生も担当だったんですね」
捜査委員会の本来の顧問であり、この学校の教師であるオオグはどういうわけか出張が多く、あまり学校にはいない。
だから久しぶりにその姿を見て、レンは驚いた。
しかし、それをあからさまに態度に出すことはなく、至って普通にそう返した。
オオグは外見年齢は三十代にも二十代にも見える年齢不詳の男性だ。
乱雑に伸ばした茶髪を無理矢理首のところで束ねている。
「担当っていうか、使いっぱしりをエステルに命じられたんだ」
「パシりですか」
「そ、試験はついさっき終了になった」
「え、またなんで?」
「エステルが仕込んだ、馬の被り物をした奴と遭遇しなかったか?」
「しました。アンがビックリしてしばらく泣いてました」
「アンって、あのちっちゃい銀髪の子か?
まぁ、そりゃ泣くわな。
あの馬な、もう一度言うが仕込みだったんだわ。予想以上のことが起きてちゃんと行動出来るかどうかってのを見たかったらしい。
んで、ここで結果を言うのはアレだが特別クラス選抜には全員落ちた」
「マジですか」
「マジマジ。理由はやっぱりどんな事態にも冷静に対処できなかったことが大きいな。
ただ、お前らには秘密の任務を頼んだらしいな?
その関係上、一応予定の日数はここで過ごしてもらうそうだ。
予想以上に脱落者が多く出たから、問題のある生徒達の証拠が押さえられていないらしい」
「なるほど」
レンが呟くように、そう言ったとき。
オオグの視線がドラゴンの方に向けられた。
釣られて、レンもそちらを見た。
瞬間。
少しドラゴンの周囲で砂埃が舞ったかなと思ったら、次の瞬間にはドラゴンの首が落ちていた。
遅れて、ドラゴンの血が舞い上がりその場に、まるで池のような血だまりが出来る。
「魔法を使わずに首落とすとか、よく出来るなぁ」
オオグの声が弾む。
「けっこうエグい」
生物のこう言った断面図を見慣れていないのか、レンが顔を歪めた。
「で、ドラゴン狩ってどうするんだ?」
「アンが、ドラゴンの尻尾のステーキ食べるんだって言ってるんです」
「そりゃまた、豪勢だな。俺もご相伴にあずかろうかね」
「私、ドラゴンって食べたことないんですけど美味しいんですか?」
「ここにいるのは、たぶん美味しいぞ、食物連鎖で結果的にヒトの残飯食ってるようなもんだし」
「はい?」
「学食の残飯だよ。あれを餌がわりにしてる。生物委員会が面倒見てて少しでも餌代と学食の雑損をなくそうとした結果、ここを含めた第九庭園にいる魔物の餌やりに利用してるんだ。
寮でも残飯は出るしな。部活の方だと家庭部や料理研究部の生ゴミを貰ってきてる」
そこで言葉を切って、オオグは尻尾を切り落とし、体から離れてもまだ生きてビッタンビッタンと蠢くその尻尾を意気揚々と担いでこちらに持ってくるアルストレーナを眩しそうに見た。
「俺の時は、巨大なイナゴとかカエルとか捕ってたなぁ。懐かしい」
「えっと、それは食べる目的で?」
「最初はそうだった」
最初は?
そう聞き返そうとしたとき、アルストレーナが瞳をキラキラさせて戻ってきた。
「レン、見てた?
けっこう簡単だったでしょ?」
「見てた。簡単そうではあったけど出来るかな?」
オオグは微笑ましいとばかりに二人を見ていたが、アルストレーナがオオグに気づく。
そして、何故か一歩後ずさった。
「あ、オオグ先生とは初対面だったよね?
普段は出張でいないんだけど、この学校の先生の一人だよってどうした?」
「?なんか体が勝手に動いた。
鳥肌もたってる」
「え、風邪? それとも呪い?」
「うーん? 寒気はないし、変な感じはしないかな?」
野営は久しぶりではあったが、そこまでストレスを感じてはいなかったし、体調もかわりない。
自分の体が勝手に動いたことをアルストレーナは不思議がっている。
そこでオオグが口を挟んだ。
「食べる気満々なのは良いけど、あのドラゴン全部解体した方が良いな。
アルストレーナさん解体は?」
「あ、出来ます!」
「よし、じゃあレンさんへの授業も兼ねて皆で解体しようか」
「え、私もですか?」
「覚えておいて損はないと思うけどな」
「わかりました」
「骨だと思うが、支給されたサバイバルナイフをつかえば解体できる。
簡単だよ」




