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二十日目

 俺の朝は妹の声を聞いて始まる。

「兄貴、おはよ」

「おう、おはよ」

 若干不満げに挨拶をされた。

理由はわからないが心当たりはある。

今日は珍しく可憐が起こしに来る前に目が覚めたのだ。

目が覚めてしまったものはどうしようもない。

そう思い身支度を済ませ部屋を出た。

タイミングが悪かったのか、可憐に開けた扉が直撃してしまったのだ。

これが原因で不機嫌なんじゃ無いかと思ってる。

当然、実際の事はわからないが心当たりはこれしか無かった。

特に会話も無いまま朝食を終え、学校の荷物を取りに戻った。

家を出ようとしたタイミングでインターホンが鳴る。

恐らく、優香ちゃんと玲奈ちゃんだろう。

 ベストタイミングだな。

「はいはい。 おはよう二人とも」

「「お兄ちゃん(玲君)おはよう」」

「今から家を出ようと思ってたところだったんよ」

「そうだったんだね。 あ、可憐ちゃんもおはよう」

「おはよう優香、玲奈」

「可憐、どうしたの? 不機嫌だけど」

「別に、何でもないわよ」

「嘘ばっかり。 後で、聞かせて貰うわ。 昨日の件と一緒にね」

「なんで玲奈が知ってるのよ」

「お姉ちゃんから聞いたの」

「優香ぁ〜」

「ずるかったんだもん。 誰かに聞いて貰わないと落ち着かなかったんだもん」

「ここで立ち話してたら遅刻するぞ」

 会話に夢中になっていた三人に警告する。

時間自体には余裕はあるが、このままだとずっと喋ってる気がして一旦話しを遮った。

三人は歩きながらも昨日の件の事について話ししていた。

俺がたまたま立ち聞きしてしまった事についてなのだろうか。

可憐からすると恐らく聞かれたくなかった内容だろうし、俺も可能な限り忘れようと思ったが、簡単に忘れられる内容ではなく、結局忘れられなかった。

どうしても気になってしまった。

いつかわかる日が来れば良いなくらいで今は心の内に止めておく。


可憐と玲奈ちゃんとは下駄箱で別れ、優香ちゃんと一緒に教室に入る。

普段通り席に着こうとするが、今日からテストだと言うことに気づき出席番号の席に着く。

今日のテストは現代文、コミュ英、世界史の3教科だ。


 1、2限のテストが終わり一息ついていた所に優香ちゃんが俺の席の方まで来た。

「玲君テストの調子はどう?」

「まぁまぁかな。 見直し間に合わなくて何点か落としてるから、いつもより低いかもしれない。 優香ちゃんは?」

「そっかぁ。 私は見落としは無いと思うけど凡ミスとかしちゃってそうで不安かな」

「凡ミスしてないといいな」

「うん。 あ、少し先の話にはなると思うんだけど、夏休み何処か泊まりがけで出かけない?」

「泊まりがけか、楽しそうだな。 何処か行きたい所とかはあるの?」

「あるんだけど、いくつか候補があってまだ決まって無いし、玲君や可憐ちゃんの行きたい所とかも知りたいなぁって思って」

「そっか。 俺は、自然が豊かな所とか行ってみたいかな」

「自然豊かな所って大雑把過ぎない?」

「そうだね。 でも、今は特別ここに行きたいって思う所が思いつかなくてさ」

「そっか、そうだよね。 いきなりの提案だったし」

「単純に思いつかないだけだから。 そんなに、気にしないで。 優香ちゃんの行きたい所とか気になるし、行ってみたいって思うから」

「うん、わかった。 残りのテスト頑張ろうね」

「おう」

 

 三限目のテストも問題無く終わり、いつもの様に四人で帰宅する。

テストの話を来ていると可憐はどうやらいつも通り出来てそうみたいだ。

 玲奈ちゃんはいつもより点数が取れている自信があるみたいで、自慢げにテストの事を語っていた。

「私、可憐よりも取れてる気がするし、勝負は私の勝ちね」

「まだ気が早いんじゃないの? 後、三日もテストあるよ」

「後のテストだって今日の調子が出せれば余裕だって」

「そーいう油断が凡ミスとかして失点するのよ」

「大丈夫だしぃ」

「玲奈になんか負けないから別に油断してくれてもいいのよ? でも、それだと私の圧勝かしらね」

「また、そうやって直ぐに馬鹿にする。 お兄ちゃぁん、可憐がいじめてくる〜」

「可憐はあぁ言ってるけど、多分同じ土俵で戦いたいだけだから気にしなくていいと思うよ。 それに、多分油断せず頑張ってって言いたいだけだと思う」

「兄貴、余計なこと言わないでよ!」

「痛っ。 ごめんって」

「可憐ちゃん、玲君のこと叩かないの」

「知らないわよ」

「可憐図星だったんだぁ」

「玲奈ぁ〜!」

「可憐が怒った〜」

「玲奈待ちなさい!」

 可憐と玲奈ちゃんがどんどんと離れていく、じゃれている姿を見るのは微笑ましく思う。

俺と優香ちゃんは可憐たちを遠目から目で追いながらゆっくりと歩いている。

特に会話はなかったが、ちらっと優香ちゃんの方を見ると嬉しそうに笑顔を向けてくれた。

その笑顔に俺は少し魅入ってしまった。

純粋な笑顔は俺には眩しく見えた。

母親とその姿が少し重なって見えた。


俺の母親は、笑顔が綺麗な人だった。

いつも笑っていて、いつも楽しそうに毎日を過ごしていた。

俺はそんな母親が好きだった。

しかし、母親は病気で寝込んでしまうようになり、笑顔が減ってしまった。

偶に見せる笑顔はもちろん綺麗だったが、何処か寂しそうな目をしていた。

それから数年が経って、母親は他界し、あの笑顔は二度と見れなくなってしまった。


 ふと、そんなことを思い出してしまい、心が少し沈んでしまう。

「玲君?」

「ど、どうしたの? 優香ちゃん」

「どうしたのはこっちの台詞だよ。 急に涙流すんだもん」

「うそ、俺泣いてた?」

「今も、泣いているよ。 ほら、こっち来て」

「え、でも……」

「ほら、早く。 可憐ちゃんと玲奈ちゃんが気付く前に」

「う、うん」

「これでよしっと。 何で、急に涙を流したのかわからないけど、理由は聞かないでおくね」

「うん、ありがとう」

(亡くなった母親に笑顔が似てたからなんて言えないしな……)

 

「おーい。 お兄ちゃん、お姉ちゃんいつまでゆっくり歩いてるの〜」

「兄貴、早く来なさいよ〜」

「今日は二人とも妙に子供っぽいな」

「玲奈はともかく可憐ちゃんまで玲奈に影響されちゃったかな?」

「どうだろ、可憐もまだ子供っぽいところあるからな。 あれが、可憐の素なのかもしれない」

「そうかもね」

「優香ちゃん、可憐たちの居るところまで走ろうか」

「え、私も走るの?」

「たまには二人みたいにはしゃぐのもいいかもって思ったんだ」

「うーん。 それと、私が走るのは関係ない気がするなぁ」

「細かい事は考え無くていいんだよ。 さっ、行こう」

「あ、ちょっと。 そんな急に走り出さなくても良いじゃない」

 可憐たちの所につく頃には完全に息を切らしていた。

普段余り運動はしないが、この短距離でもこんなに疲れるとは思ってなかっただけに運動不足だと思い知らされる。

優香ちゃんも同じく息を切らして、少しふらついていた。

そんなこともあり、四人は俺の家で勉強会という名目でくつろいでいた。

もちろん勉強もするが前日にちょっとやったところで大して変わらないからがっつりでは無く、軽く復習をしていた。

だらだらとしているうちに時間が過ぎ気がつけば、日は沈み始めていた。

昼食は簡単なもので済ませたが、晩飯はしっかりとしたものを作るつもりだ。

優香ちゃんと玲奈ちゃんに晩飯をどうするか尋ねると、ここで食べて行くみたいだ。

どんな料理を作ろうか悩んだが、冷蔵庫と相談したところたいした物は作れそうに無かったため、ハンバーグとサラダを作ることにした。

 ハンバーグの中にチーズを入れてみようと思い、入れて見たが思いの外難しく少しじかんがかかってしまった。

「お待たせ。 ハンバーグ定食です」

「美味しそう」

「定食っぽいけど、わざわざ言わなくて良いじゃない」

「私もうお腹ぺこぺこだし、早く食べようよ」

「そうだな」

「「「「頂きます」」」」

 四人でテーブルを囲んで食べると食卓が賑やかになって楽しくなる。

三人が美味しいと言ってくれるだけで作ったかいがあったなと自分を褒めてしまう。

他愛の無い話しから、夏休みに何処に遊びに行かないかという話しになった。

やはり、夏だからと言うべきか、可憐と玲奈ちゃんは海に行きたいと言い出した。

もちろん、俺と優香ちゃんも賛成し海には行くことになったのだが、泊まりがけで行くとなると折角だから遠出してみたいと言うことになった。

このときには何処に行くか決まらなかったがいくつか候補は挙がり、夏休みに入った頃具合に改めて日程と場所を決めようという事になった。

 程なくして、食事を終え、俺は優香ちゃんと玲奈ちゃんの見送りに行っていた。

「私達まだ仲良くなって間もないのに、なんだかずっと昔から知ってるみたいな気分」

「確かに、そうだよな」

「私も、昔から知っている様な気がする」

「もしかしたら、何処かで出会っていたのかもな」

「そうだといいなぁ」

「そうだね」

「あ、ここまでで大丈夫だよ」

「おう、じゃあ、また明日」

「おやすみ、お兄ちゃん」

「おやすみ」

 二人と別れて家に帰る。

家に帰ると食器の片付け等が終わっていた。

可憐はと探して見ると風呂に入っている所みたいだ。

可憐が風呂に入っている間は歯磨きも出来ないし、特にやることも無いからリビングでテレビを見ていた。

 それからしばらくして、可憐が風呂から出てきてリビングに来た。

「兄貴、お風呂空いたよ」

「わざわざ、悪いな」

「別に……。 兄貴、今年は実家に帰るの?」

「そうだな。 今年は、帰ろうか」

「また、墓参りだけして帰るみたいなことはしないよね」

「わかった」

「それじゃあ、私もう寝るね」

「おやすみ」

「おやすみ」


風呂に浸かりながら、実家に帰ったときのことを考える。

正直、実家には余り帰りたく無いのが本音だ。

だが、可憐が去年から来るようになって帰省せざる終えなくなった。

去年は実家に少し顔を出した後に母親の墓参りに行ってそのまま帰ってしまった。

そうするつもりで、新幹線の予約を取っていたし可憐には事前に話して居たのだが、可憐が帰ってくるなりこっぴどく叱られてしまった。

別に、父親との仲が悪いわけでも無ければ、新しい母親との仲が悪いわけでは無い。

ただ、俺が新しい母親を受け入れ切れなかっただけだ。

だが、そのせいで実家には居心地があまり良くないと感じ始めた。

だから、俺は一人暮らしが出来る何処か遠い高校を選んだのだ。

そんなつまらない事を考えていると若干のぼせてきたのかぼーっとし始めた。

風呂をあがり、寝間着に着替えて歯磨きを済ませて布団に入る。

可憐は実家に2、3日は滞在するつもりだろう。

その間俺は、普通に過ごすことが出来るか少し不安だった。

そんな不安から逃げるように俺は目を瞑り、眠りに着いた。

はい、恋夢です!

やっと二十日目ですね! 自分でも、こんなに長続きするなんて思って居なかったので正直驚いています。

今回の話しは少し暗めの話しも含めてのお話でした。

もう少しすれば夏休みという事で、色々なイベントを考えていますので楽しみして頂ければなと思います!

それではまた次の作品でお会いしましょー!

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