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十八日目

 俺の声は妹の声を聞いて始まる。

「兄貴、起きて。 早く」

 いつもと違って優しく起されている気がする。

「あ、あぁおはよう可憐」

 しかし、返事はしてくれない。

いつもなら何も言わずに立ち去って行くはずなんだが今日は俺の目の前に立っている。

なにやらいつもと違う雰囲気な気がして妙に落ち着かない。

しばらく見つめ合っていると、部屋を何も言わずに出て行った。

どんな意図あったのかわからんが、考えても仕方が無いと思った。

 可憐に聞く気にもなれないから、この答えがわかる日は来ないのかもしれない。

「いつまで、部屋で着替えてるの。 朝ご飯出来てるんだけど」

「悪い、今すぐ行く」

 少し急ぎ気味で着替えを済ませリビングに向かった。

ここ最近の朝が賑やかだっただけに、今日は静かに思えてしまう。

 この間まで、これが普通だったのにいつの間にか周りの環境が変わっていたんだと思い知らされる。

「ねぇ、今日はほんとに二人でテスト勉強するの?」

「昨日言っただろ? 俺は、約束はちゃんと守る人間だ」

「そう、ならいいわ……」

「そうか」

 朝食の会話はこれ以降無かった。

午前中はお互いそれぞれのことをし、午後から勉強を始めることにした。

それぞれのことをと言っても俺は、掃除等の家事をするくらいしかない。

家事が終われば部屋で、読書をする。

俺がいつも一人でいるときのパターンだ。

一種のルーティンのようなモノなのかもしれないな。

 部屋の掃除をし、ベランダから洗濯物を取り込んでいると可憐の声がした。

「兄貴、何か手伝える事無い?」

「お前が料理以外で手伝いたい事聞いてくるなんて珍しいな」

「そんなの私の勝手でしょ」

「そうだな。 じゃあ、この取り込んだ洗濯物畳むの手伝ってくれ」

「わかった」

 どういう心境の変化なのかわからないが、これは俺と可憐の距離が縮まっているって解釈でいいかな。

というか、勝手にそう思っておくことにする。

何でって? そりゃあ、妹との距離が縮まったって思う方が気分いいし、なにより嬉しいからな。

 こんなこと可憐に言ったら、ビンタされそうだけど。

「なに、ニヤニヤしながら私の下着畳んでるのよ」

「可憐、これはちが……」

「変態……」

「うっ」 

 縮まったどころか、遠ざかってしまったのではなかろうか。

別に可憐の下着を畳んでニヤけていたわけでは無い。ただ、距離が縮まったかもしれないのが嬉しくて、それが顔に出ていただけなんだ。

そんなこと、可憐に言えるはずも無くただたんに変態のレッテルが貼られただけのように感じる。

チラッと可憐の様子を見てみると、なんだか顔が赤かった。

 どうやら、俺の下着を畳んで赤くなっているらしい。

「可憐は俺の下着畳んで赤くなってるじゃないか」

「なってへんわ」

「いやいや、なっとるで」

「っ〜〜!!」

 可憐が声にならない悲鳴を上げて何処かへ行ってしまった。

俺の下着畳かけなんだけど。

まぁ、何処かに行ってしまったものはしかたないしちゃっちゃと終わらせてしまうか。

そんなことがありつつ一通りの家事を終え、昼食を済ませた。

 昼食を食べるなり、部屋に引き下がってしまった可憐を呼びに行くべく、可憐の部屋をノックした。

「可憐。 勉強やるんじゃ無いのか?」

「……」

「さっきは悪かったって」

 ゆっくりと扉を開け、俺の様子を伺うように出てきた。

「早くやろ」

 ぶっきらぼうにそう言ってリビングに行ってしまった。



「いいか、可憐。 ここはこうすると簡単に解ける」

「ほんとだ」

久々の二人の時間。

最初は二人で、いまよりもお互いの口数も少なかった。

少なかったというより、可憐が余り俺と会話してくれなかった。 ただ、それだけだった。

優香ちゃんが家に来て以来、俺と可憐の周りが少し賑やかになりお互いの距離も近づいた様な気がする。

玲奈ちゃんが加わってからは更に賑やかになり、四人でいる時間が長くなった。

それから、二人の時間というのは減ってしまった。

お互いの口数が少なく、静かだった休日懐かしく感じてしまう。

可憐を二人で勉強しようと誘ったのは、以前の静けさが少し恋しくなったのかもしれない。

ふと、可憐を見ると勉強に集中して疲れてしまったのかノートに顔を埋めて寝てしまっていた。

そんなに、長く勉強していたのかと時間を確認すると、19時を回っている。

多少休憩していたから実際の勉強量はそんなに多くない気はする。

寝てしまった可憐を部屋まで運び、寝かせて晩ご飯に取りかかった。

今日は、簡単に作れるパスタを作ろう。

どんなパスタを作ろうかと調べていると、カチャトーラというパスタがあるらしく、作りがいがありそうだったから作ることにした。

羊肉を使うことが多いそうだが、鶏肉でもいいらしく鶏肉を使うことにした。

麺を茹でているあいだにソースを作る。

作り方を見ながら作っているが、唐辛子の量が少し多かったらしく、若干辛味が強くなってしまった。

これはこれで美味しいとは思うのだが可憐の口に合うか少し気になってしまう。

 可憐を起こしに部屋に入って行くと、今目が覚めたのか目を擦っていた。

「おはよう可憐」

「おあよう兄貴」

「晩ご飯出来てるし、顔洗ってリビングおいで」

「わかった……ふあぁ……」

 可憐に伝える事を伝え、リビングに戻った。

テーブルの上に散らばった勉強道具を片付けて、作った料理をテーブルに並べる。

 全て並べ終えたくらいに、タイミング良く可憐がリビングに出てきた。

「目は覚めたか?」

「うん。 わざわざ運んでくれてありがとう兄貴」

「気にすんな。 ご飯が冷めないうちに食べよう」

「「いただきます」」

「味どうだ?」

「ちょっと辛い」

「やっぱりか。 唐辛子の量が少し多くなった気がしたんだよな」

「でも、食べれないワケじゃ無いし、これはこれで悪くないよ」

「それなら良かった」

 

食事を終え、食器を洗いテーブルを拭く。

何気ない一日だったが、何故か一番落ち着いた一日だった気がした。

湯船に浸かりながら、一日を振り返る。

可憐と二人きりで過ごした休日がものすごく新鮮に感じた。

明日は日曜日だし、まだ休日だ。

今のところこれといった用事はなく、今日みたいな一日になればいいなと思う。

 湯船から出て、風呂の扉を開けると、歯磨きをしている可憐がいた。

「ちょっと、なんて格好してんのよ」

「今、風呂上がったばっかなんだ仕方無いだろ」

「仕方無くない。 いつもは、もっと早くに出るくせに今日に限ってなんでまだ入ってるのよ」

「そんなん俺の勝手だろ」

「いいから早くパンツくらい履いてよ」

「わ、悪い」

 ささっと、着替え俺はその場を後にした。

可憐が入ってる時は近づいたらダメなのに可憐はいいのかよ……。

そんなことを思いながらベットに倒れ込み目を瞑った。

しばらく、色々考えごとをしていたが、気がつけば眠りについていた。


はい、恋夢です!

お久しぶりですね。

リアルが忙しく、中々時間が取れなくて、やっとの思いでの投稿です。

これからは、定期的に上げて行ければなと思います。

それではまた次の作品でお会いしましょー!

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