十七日目
俺の朝は妹の声を聞いて始まる。
「兄貴起きて……起きてってば!」
「痛っ。可憐、なにすんだよ」
「いつまでも起きないから」
「お、おう。ありがとうな」
「……うん」
可憐が起してくれなかったら危なかった。時間が無い……。
急いで着替えて、リビングに出ると焼いた食パンが置いてあった。
可憐の気遣いに感謝し、食パンを食べる。
玄関では可憐が待ってくれている。
というか、いつも早く出るのに待ってくれてる何て何かあるのだろうか。
「可憐お待たせ……。あ、優香ちゃんと玲奈ちゃんもおはよう」
「おはよう!お兄ちゃん!」
「おはよう」
相変わらず玲奈ちゃんは元気がいいなぁ。
「お兄ちゃん聞いてよ。可憐が家上げてくれないの」
「何言ってるのここは私達の家なんだから当然でしょ」
「お兄ちゃんまだ寝てるって聞いたから私が起すって言っただけで何でそんなに怒るのよ」
「怒って無いって、兄貴を起すのは私の仕事なの!」
あぁ、また始まった。いつもの、口喧嘩。
もう、聞き慣れてしまった。
俺と優香ちゃんが苦笑いするのもなんだか定番化してきている。
「二人とも、ここでそんなことしている場合じゃないぞ」
「誰のせいだと思ってるの!」
「ご、ごめん……」
「玲奈、この続きは学校で」
「わかったわ」
この二人は学校で一体何をする気なんだ……。
時間ギリギリだな。危ない……。
「優香ちゃん。あの二人大丈夫かな?」
「なんだかんだで仲良いから大丈夫だと思うよ」
「そうだな。あ、先生来たし席に着くよ」
「うん」
今日も、自習だろうし大変だなぁ……。
授業が始まれば俺が予想していた通り、囲まれた。
「お前ら……。そろそろ、自分で勉強をだなぁ……」
「だって、成未に聞いた方が先生よりわかり安いし」
「お前……、良く先生近くに居るのに言えたな……」
「え?!あ、先生こんにちわ……」
「日村、お前はこっちで先生と一緒に勉強しようか」
「い、いやぁ。結構です」
「遠慮するな。あぁ、お前達も勉強頑張れよ」
「は、はい!」
あぁ、あいつ終わったな。よりにもよって田中先生の授業で言うなんて馬鹿だなぁ。
周りにいた奴らも先生に捕まりたく無いからって必死で勉強始めるし、これは面白い。
さて、この時間は平和に過ごせそうだ。
日村と田中先生には感謝だな。
平和になったはいいけど、これはこれで暇だな。
優香ちゃんは女子メンバーと勉強しているっぽいし、苦手な教科でも自習しとくかな。
「玲君ちょっと良い?」
「優香ちゃんか。どうしたの?」
「ちょっと来てほしいの」
「わかった」
優香ちゃん言われ連れられたのは女子メンバーの所だった。
「えっと、俺は何で呼ばれたんだ?」
「成未君に聞きたいことがあってさ」
「勉強か?勉強なら、中井さんの方が俺より教えるの上手だろ?」
「そんなことないって。そんなんじゃ無くて優香のことどう思ってるのかなぁって思ってさ」
「え、いや……。良い友達だと思ってるよ」
「それだけ?」
「え?うん」
「いつも昼食食べたり、最近は登下校も一緒なのにそれだけなの?」
「優香ちゃんは仲の良い友達だからそれくらいは普通だと思ってるのだけど」
なんか、凄い変な目で見られているんだけど。結局何が聞きたいのかわからなくなってきた。
その後も何個か質問されたけど質問の意図が読めないまま時間が過ぎて言ってしまった。
気がつけば授業が終了している。
休み時間俺はなんとも言えない睡魔に襲われて軽く寝てしまった。
目が覚めれば授業が始まっていた。
それから、普段と変わらず勉強を教えることに慌ただしくしていた。
「日村、生きてたか」
「なんとかな。あの人スパルタ過ぎる……。俺はもう限界だ」
「お疲れ様だな」
限界だとか言いつつちゃっかり俺に教えて貰おうとわざわざ移動してくる気はあるんだな。
少しだべりながら勉強をしている間に午前の授業が終了していた。
「優香ちゃん行こう」
「う、うん」
返事が曖昧だな。何というかあの質問攻めをを聞いていた辺りから元気が無いように思えた。
一体何があったのか気になってしまうが、俺は敢て聞かずそっとしておくのが一番だと何段した。
いつもの所に行くと可憐と玲奈ちゃんが仲良くご飯を食べていた。
「あ、兄貴やっと来た」
「おう、俺の事待ってたのか?」
「別に……」
「なんだよその反応は……」
「別に……」
「そうか」
朝はあんなに言い合ってたのに今は普通に会話してるし、一体何が原因で言い争うのだろうか。
俺関連なのがいつも不思議で仕方無い。
特に何事も無く昼食を食べ他愛無い会話で時間が過ぎていく、可憐を始め優香ちゃん、玲奈ちゃんこの三人と喋っている時が一番落ち着くし楽しい。
「玲君予鈴鳴ったし教室に戻ろう?」
「お、おう。もうそんな時間か」
「お兄ちゃん、また放課後ね!」
「おう。また、あとでな」
可憐は何か言いたそうにこっちを見ているけど、どうしたのかな。
数秒くらいお互いに見つめ合っている状態が続いたが、そっぽ向かれて終わってしまった。
可憐との距離は近づいたように見えてまだ遠いのかな。
午後の授業は絶え間なく来る質問ラッシュに悲鳴を上げていた。
1から10まで聞いて来るなんか教えるのがだんだんめんどくさくなってくる。
学年順位が真ん中よりも上にいるとなんだか大変だな。
今更そんなことを実感していた。
今日は珍しく終礼が長引いた。担任が来るのが遅れたせいなのだが、可憐と玲奈ちゃんを待たせているんだと思うと早く終わらせて欲しいと思ってしまう。
やっと終礼が終わったと思ったら急に玲奈ちゃんが俺の方に駆け込んでくる。
「お兄ちゃん。終わった?」
「今、終わったよ。わざわざ教室まで来てくれなくても良かったのに」
「ちょっと玲奈。何してるのよ兄貴から離れて」
「えぇー。少しくらい良いじゃん」
「だ・め・・で・す!」
「何でよぉ−」
「二人ともここ教室だし、ね?」
今自分に向けられている視線がものすごくしんどい。早く、ここから抜け出したい。
「あ……」
自分達が今どこで言い争っているのか理解したようで二人とも黙ってしまった。
「帰ろっか」
コクりと頷く。
校門を潜った辺りでようやく落ち着いたのか話し始めた。
「流石にさっきのは恥ずかしかったね」
「そうね。大体、玲奈が変なことしなければあんなことにはならなかったのに」
「私が悪いみたいじゃん。それは、違うよ−」
なんだか、二人とも落ち込んでる感じで……。
「玲奈、可憐ちゃん。気持ちはわかるけど周囲の目は気にしようね」
「「うん」」
やっぱり優香ちゃんはしっかりしてるよな。
さて、家に着いたけど特に何も無い。流石に連日家に人が来ただけあってお菓子などは無くなってしまっている。
優香ちゃんと玲奈ちゃんは一回荷物を置きに帰ったけど、何も出せないしどうしようかな。
迷っていると優香ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし、どうしたの?」
「あの、お母さんがうちに来ない?って」
「え、お邪魔してもいいの?」
「うん、お母さんがおいでって言ってる」
「ちょっとまってね」
「うん」
「おーい、可憐。優香ちゃんから家においで誘われてるけどどうする?」
「行くー」
「可憐も行くみたいだし、お邪魔させてもらうね」
「わかった。お母さんにも言っておくね」
「了解」
可憐と俺は勉強用意と道中で買ったショートケーキを持って優香ちゃんの家に向かった。
インターホンを鳴らすと私服姿の優香ちゃんが出てくれた。
「いらっしゃい。リビングまで上がって上がって」
「「お邪魔しまーす」」
「あら、玲君いらっしゃい」
「あ、どうも。これ、つまらない物ですがどうぞ」
「まぁ、ショートケーキじゃないのありがとうね」
「いえいえ。家に呼んで貰ってありがとうございます」
「そんな硬くならなくていいのよぉ〜」
と言ってはくれる物の何というか緊張感が抜けない。
人の家だししっかりしないとと言う気持ちがどうしても強くなってしまう。
「あ、そうだ。これ、良いとこの食パンなの良かったら貰って」
「え、良いんですか?」
「いいのよ。ちょっと貰いすぎて困ってたところなの」
「ありがとうございます」
「お兄ちゃんいつまでお母さんと喋ってるの!早く来て」
「今行く〜」
優香ちゃんのお母さんに一礼して皆の所に行く。
「お兄ちゃん聞いて可憐が……可憐の目が本気何だけど怖い」
「良かったじゃないか。可憐にしっかり教えて貰えよ」
「私を見捨てないでー」
「玲奈早くやるわよ」
どうしたんだ急にものすごいやる気だな。
「二人今回のテストで勝負するらしいよ」
「そうなのか」
「それで、今のままじゃ私の圧勝だから面白くないって言って可憐ちゃんが本気になったみたい」
「ほー、意外だな」
意外とそういう勝負に対しての熱意というかがあるんだな。
良いことだ。
それから何度かギブアップの悲鳴が聞こえてきたが何事も無く勉強会は進んで行った。
「玲君ここなんだけど、わかる?」
「ここか、ここはちょっとこうするだけで簡単に解けるよ」
「ほんとだ。ありがとう」
「一旦勉強道具片づけてー。ご飯持って行くわよ」
「もう、そんな時間か」
「あ、玲君と可憐ちゃんも食べて行って」
用意して貰ってるとこ悪いし、これは断れないな。
相変わらず可憐は食べて行きたそうにしてるし。
「すいません。色々して貰って」
「いいのよ」
こうは言ってくれるが少し申し訳ない気持ちになる。
少しでも出来ることと思って運ぶくらいの手伝いはさせて貰った。
出てきたのは、多様な刺身とご飯それから味噌汁と簡単なものの様に見えるが刺身は優香ちゃんのお母さんが捌いたらしくかなり綺麗に捌かれていた。
しかも、6人分の量を一人で捌くとなるとかなり大変だったのではと思ってしまう。
「おいしいな」
「うん」
「良かったわ。お口に合わなかったらどうしようかと思ってたの」
「いやいや、そんな事無いですよ」
「よかったわ」
賑やかな食卓、母親が居るというのはこんな暖かい物なのだろうか。
そんなことを考え少しぼーっとしてしまう。
食事も終え片付けも手伝い、優香ちゃんの家を後にした。
「可憐、最近楽しいことが多くて良いな」
「そうね」
「明日は何かあるのか?」
「特に何も無いけど、どうしたの?」
「明日久しぶりに二人で勉強するか」
「……」
「いや……か?」
「嫌じゃ無い。わかった」
「おう、そうか」
可憐の方を見ると軽く拳を握っている。
どうしたのかな。
家に着くと風呂をぱぱっと済ませ直ぐに寝てしまった。
そうして俺の一日は終わった。
はい、恋夢です!
十七日目です。何故か、文章が途中で切れてて慌てて再度上げ直しました。
気付くのがだいぶ遅かったです。
十八日目も一緒投稿されるので、是非読んでください