砂嵐
風の音が強くななり、ごうごうと耳に鳴り響く。
目を細め、後ろを振り向くと、遠くに空が茶色く濁り始めたのが、微かに見えた。
異変に気が付いた私は、直ぐに足を止めた。
ボルドも私につられて足を止め、
「砂嵐?」
と不安げに聞いてくる。
私は小さく頷き、
「そうね。ここで足止めね」
と言いながら、バイクからテントを取り出し、それに加えて、長い釘を砂の奥深くまで打ち込んだ。
さらにバイクをそれにくくりつけ、タイヤが埋まらないように板をに置く。
これがこのテントの本来の姿。砂嵐避けのたてめのテントだ。
普通のテントでは、砂嵐の砂と風ですぐにだめになってしまう。
だから、普通ならただじっとか風と砂の中で耐えるか、もしくは急いで抜けきるかのどちらかぐらいしかない。
しかし、これがあれば快適に待っているだけでいい。
私はボルドの背中を、
「さぁ入って。少し狭いけど」
と押す。
テントに入ると、直ぐに風の音が大きくなる。
もう、何回も砂嵐は経験しているが、二人でこすというのは、初めてだ。
過去に1番長い時では、三日間もこの狭いテントで過ごしたせいで、軽くのノイローゼになりかけた、嫌な思い出がある。
記録の書物も1日目で充電が切れて、外へと出てバイクに充電することも出来なく、ただただ、ぼぉっとするしか無かった地獄のような時間だった。
まだ、歩いていた方が心は楽だ。
人間、何もしないのが1番辛い。
視界が茶色で埋まりだすころ、何故か分からないが、私の昔話をするという流れになっていた。
旅人の話しというのは貴重である。だからこそ、聞いていて楽しいし、ためになるらしい。
寝っ転がる私に、ボルドが肩をゆすり、
「で、なんでねーちゃんは旅に出たの?」
と話をせがんでくる。
さっきからうるさくて、ろくに小説も読めない。
しぶしぶと記録の書物をしまうと、
「私は生まれながらにして旅人よ」
と言いながら、ボルドに向かい合うようにして座り直した。
「生まれてから?」
「そう。あなたは、あまり他の旅人に会ったことが無いのね。旅人は沢山いるのよ。私みたいに生まれながらにして旅人の人もいれば、貴方のように興味本位で旅を始める人もいるわ」
生まれながらにして旅人。
別に父や母が旅人だったというわけではない。
子供のころ、ある日、リュック、水筒とレーションを渡されてこう言われたのだ。
「旅をしなさいそれが貴方が生まれた義務よ」とね。
特に生きている理由が無かった私は、なんとなくそのまま旅に出た。
「え?じゃぁ、ねーちゃんは旅人やりたくてやってないの?」
ボルドは驚いた。
「いえ?オーパーツは大好きよ。旅をしていくうちに、何も感じなかったものとかに趣味が湧いてくるんだよ」
「へぇ。じゃぁ、なんで好きになったの?」
オーパーツとの出会いは語れば長くなる。
最初に出会った記憶は確か、この記録の書物だった気がする。
実はこれ、バイクが手に入るまでは、ただの板きれだった。
手元にある記録の書物を、くるくると回し、
「まぁ、この記録の書物が、何かを調べる知識欲がオーパーツ集めや見学の趣味の最初かもね」
と彼に見せた。
気分が何となくのっていた私は珍しく、その中身を彼に見せてあげることにした。
画面を覗き込んだボルドは、
「すごい」
と目を輝かせる。
文章が読めないのだから、写真でしか楽しめないとは思うが、それでも充分だろう。
そこに写っていたものに、ボルド興味津々だ。
「これが、海にかかる大きな吊り橋の残骸。そしてこっちが、倒壊したビル群。空飛ぶ乗り物のフレームらしきもの。水の無くなったダム」
など、、彼の街いるだけでは、絶対に見れないようなものばかりだ。
「凄いや、ねーちゃん。俺もこの事が終わったら旅人になりたい」
まるで、解答の見本のような感想に私は少しがっかりした。
何故なら、それ行く先々で聞く台詞であって、私のせいで旅に出た人が何人死んでるかと思うとやるせない気持ちになる。
だから、、私は旅の話をあまりしない。
私はボルドの頭を、ポンと叩き、
「貴方はまず、無事に街まで帰ることが目標よ。それができたら、旅人になるか長と一緒に考えなさい」
と言った。
それにボルドは、
「はーい」
と狭いテントの中で、小さく手を上げた。
砂嵐は予想より長く、そして強いものだった。
テントが何回かもっていかれそうな強風にあい、その度にボルドと頑張ってテントを押さえ付けた。
夜になっても風は収まる気配を見せずに、ただただ私の静かな睡眠を妨害してきた。
かくいうボルドは、横になると直ぐにスヤスヤと可愛い寝息をたてて夢に中だ。
何処でも寝れるとい素質は羨ましい。私は以外と神経質なのだ。
ちょっと強い風の音が成る度に、目が覚める。
いつもこうだ。
危険察知能力は高いのは良いことだけど、精神衛生上とてつもなくよろしくない。
こいつ、蹴っ飛ばして起こしてやろうか。
是非とも快眠を与えてくれるオーパーツが欲しいものだ。
今回は短いです