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滅び行く世界は不思議で溢れている  作者: ゆーうに
滅び行く世界にりんごの木を
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針の無い時計

 

 前日と同じように、しかもそれより早く、日が登らないうちに外へと出た。

 長を起こさないように荷物をまとめると、そっと扉を開く。

 本当は、最後に別れの挨拶を言いたかったのれど、起こしてしまってはボルドを連れていく事がばれてしまい、オーパーツを手に入れることが、出来なくなってしまう。

 外へと一歩出た所で、

「あ!」

 と重大なことに気が付いた。

 少年ボルドの家が何処にあるのかを、聞いていなかったのだ。

 本当のまぬけとは、このことを呼ぶのかもしれない。このままでは、1日出発を遅くしなければならないかも。

 しかし、せっかく出発の準備までして、外へに出たのに。

 長の家へとおめおめと戻るのも、なんだか癪にさわる。

 あるわけがない奇跡を信じて、街の東へと足を進めた。

 薄暗い街を、二つの月が照らす。

 目を凝らしてやっと見える道を進んでいくと、

「旅人のねーちゃん!」

 と暗闇の中から手を振るシルエットが浮かび上がる。

 この少年は預言者なのか、と思ってしまうほど、ベストなタイミングで彼は現れた。

 しっかりと背中には、荷づくりがされている

 まさに、私が今日出発するのを知っていたかのような格好に、驚きを隠せない。。

 彼の顔が見えるほどまで近づくと、

「ボルド君だったわね。よく私がこの時間に今日出るって分かったわね」

 と話しかけた、

 それにボルドは、にこにことした表情で口角を上げ、

「うん。ねーちゃんが来てから毎朝この格好でここに立ってたから」

 と首を縦に振った。

 想像を超えるほどの、気合の入れようだ。

 どうやら、彼は本気で私についていきたいらしい。

 こうなったら、ちゃんと目的地まで連れて行こう。どうせ、そこに私も行くのだし、オーパーツが手に入るなら、文句は言わない。

 私は手を差し出すと、

「で、オーパーツは?」

 と尋ねた。

 ボルドは鞄の隙間に手を突っ込むと、

「これでいい?」

 と何かを握り、こちらへと差し出した。

 開かれた彼の手の平の上には、腕時計があった。いや、時計の形をした腕につけるブレスレットのようにも見える。

 なぜなら、時計としては重要な、針が付いていなかったからだ。

 しかし外観と感触は、確実にオーパーツそのものだった。

 見たことないものだと、私は顔を近づけて、

「これ、何?」

 と尋ねた。

 ボルドはそれを私に渡すと、

「分かんない。ねーちゃんが分からないなら、俺にも分かんない。でも、絶対これオーパーツでしょ?」

 と少し不安げな表情を作る、

 改めてそれをよく見る。

 時計…をかたどった何かである。

 この針がある所、その感触に何やら見覚えがある。時計の裏をひっくり返して見ると、そこにはよく見たことがあるロゴが彫られていた。

 蜘蛛の巣を基調とするデザイン、そっと手で暗くするとうっすらと青く浮かび上がった。

「これは…」

 私はくるくると時計をまわす。すると、記録の書物と同じように、充電するための穴が開いているのが見つかった。

 それにコードを指すと、ピタリとはめ込まれて、一部が小さく赤く光った。

 大正解だ。

 不思議がるボルドの手を取ると、

「ボルド君、、行くわよ」

 と引っ張った。

「え?何?何だったの?」

 その疑問に、私は無視した。

 街の外へと向かって歩きだす。

 なんとなく何かは分かったし、これ以上あそこで騒いでいては、誰かに見られても面倒だ。

 本当なら、このままバイクで一気に行けるところまで行きたいんのだが、大きな音を立てることはよろしくないから出来ない。

 いまいち私の思考がうまく伝わっていないボルドが。

「ね?連れてってくれるんだよね?いいんだよね?」

 と騒ぎ立てる。

 私は人差し指を唇に当てる。

「連れてってあげるから静かにして。街の人に見られたら面倒でしょ」

「ほんと!?ありがとう。ねーちゃん」

 私は小さくガッツポーズをするボルドを見て、少しだけ可愛く感じた

 速足で歩いていると、道の端に2つの大きな石が置いてあるのが見えた。

 そこから先は建物がなく、何もない荒野が広がっていた。

 街の東側の出口に違いない。

 ここからなら、見つかっても逃げ切れると思うし、この街に来ることも無いだろうし大丈夫。

 問題ない。

 私はバイクを指差し、

「乗って」

 とボルドをバイクへとまたがらせた。

 親指でアクセルのレバーをグッと押すと、静かな街にバイクのエンジン音が響き渡る。

 さぁ、いこう。りんごの木を見に。そしてりんごを食べに。


 バイクは、大きな音を立てて荒野を走る。

 ボルドはバイクのような乗り物に乗ったことは無かったのか、大興奮だ。

「おねーちゃん、見てみてあの岩」 

少々うるさいが、多少のことは大目に見てあげよう。

なにせこの少年は、オーパーツをくれたのだから。


 数分走ったところで、想定通りだが、さっそくタイヤが回らなくなった。

 しぶしぶとバイクから降りると、エンジン切った。

 気が付くと太陽も昇り始め、辺りには日の光が差し始めた。太陽によって砂が温まり、これからは徐々に暑くなっていくはずだ。

 バイクを降りたボルドは、

「ねーちゃん。このオーパーツは砂に弱いの?」

 と指さす。

 しょうがない。これでも、砂には強い方だけれど。

 私は、残念そうな表情で、

「そうよ。もっとタイヤが大きい乗り物ならいけるだろうけどね」

 と返した。

 タイヤを動かすために、バイクから板を取り出そうとした時に、赤色の光が緑色に変わっていることに気がついた。これで充電が終わったということだだろう。

 時計をくるくるとまわすと、ボタンらしき箇所が見つかった。

 そのボタンを押すと、黒いかった画面が白く輝いた。

 やはり、記録の書物を同じようなものらしい。

 画面に色が付くと、そこには数字が映し出されていた。

 なるほど、記録の書物と同じように充電する機能をもった時計らしい。ニコニコと私はそれを腕えと付けた。

 太陽にかざしてみると、きらきらと輝き非常にかっこいい。気に入った。

 よくやったと、ボルドに時計を見せてやった。

「それ何?」

 ボルドは、それを不思議そうに見つめた。

 自慢げに私は、

「時計よ」

 と答える。

「時計?何それ?」

「時間っていうのは分かるわよね?普通は太陽の位置でしか分からないけど、これを使えばもっと正確なものが分かるのよ」

 私の腕につけた時計を、

「え!凄い!!」

と服の袖は引っ張る様にボルドは興味深くのぞき込んだ。

 が、どうやら文字が読めないらしく頭の上に?のマークが浮かんでいるような気がした。



書き忘れ

嘘、書き忘れって分かっててのせてない


1、街の名前:セルスク

2、バケツ:植物のつると粘土で作られてる

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