表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

第三回ゼロレギオン祭 お食事会

作者: 童想恋香

今回も参加させていただきましたああああああああああ!!

どうもみょん悟りです、長らくお待たせいたしました。いや、なんて言いますか。小説を書くためシリーズ休載してすいませんでした。許してください、何でもしますから(何でもするとは言ってない)。

今回の題材は飯テロ、でしたがほとんど無いです。ごめんなさい。

書いてたらいつの間にか約8000文字!やばいです。

延期させていただきましたゼロレギオンさん、本当にありがとうございました。

さてさて、ではどうぞお楽しみ下さい。

夜。突然、玄関のドアをノックする音が聞こえた。


「はい、います、入ってください」


そう返事したのは東方の綿月依姫と同じ容姿をした夢刀(ゆめがたな)ルミナ。彼女は訳あって異変を何度も解決した霊霧零(れいきりぜろ)の家にいる。


「あら、詠音ちゃん。お久しぶりね。今日はどうしたの?……あら、招待状。うん、零達を誘っておくわね、ありがとう」


家から出て行く少女の姿を見送ってから、渡された一通の手紙を眺める。

手紙、と言うより半分に折られた小さく白い画用紙。中を見てみると、綺麗に描かれた茶色の線画絵の上に、一番上に大きめに「招待状」と丁寧に書かれたものがある。

絵は詠音自身と純玲鏡が仲良く並んでいるところ。

そして、内容はこうだ。

『明後日お食事会を開きます。

零と漸ぎ様においしいご飯を食べてもらいたいので

来てください。

もちろん、夜月ちゃんとルミナちゃんも来ていいよ。

詠音より

ps うちの子が迷惑かけたらごめんね。』


「あらあら。可愛いじゃない。楽しみね」


手紙を閉じて、静かに部屋に戻って行くルミナ。明日、話そうと思った。



次の日。


「へぇ。詠音ちゃんが。可愛いところもあるんだねぇ」

「そうなのよー」


と、永江衣玖と同じ容姿をした癒福矢夜月(ゆふくやよづき)とルミナは談笑をしながら朝食を作っている時に、寝ぼけながら歩いて来る零と漸偽。


「あら、おはよう零、漸偽」

「あぁ、おはようルミナ、夜月」

「ねぇ零君。詠音ちゃんから食事会の招待状が来たんだって」


そんな風に会話を進めながら話して行く。会話の結論的には、行くということになった。

あの襲撃以来かなり仲良くなったな、と思うのは零の裏人格である博雨漸偽(はくさめぜんぎ)。たまたま助けて、好かれて、戦闘して。あれも一種の運命だったのかもしれない。そう漸偽は思った。


☆★☆★☆★


一方、純玲四姉妹の家。

喧騒、という言葉がよく似合う状況になっていた。


「明日よ明日!何で姉上様は明日に設定したのよ!おかげで私達副隣者(ふくりんしゃ)は大忙し!」

「仕方がないだろう、副隣者も最強ではない、所詮亜枠神(あわくしん)には敵わないということだ」


鏡と鐘は野菜や肉を切ったり、炒めたり、焼いたりしている。手は忙しそうに動いていて、口もかなり動いている。

こんな愚痴も言うのも仕方がない。何せ、『お食事会』を開くと決定したのは昨日、詠音が思いつきで他の三人の賛否も聞かずに勝手に招待状を書いて、勝手に渡しに行ったからだ。


ちなみに準備をしているのは純玲四姉妹だけではなく、自然組の幹部と、創作組幹部、あと第三勢力幹部だ。自然組亜枠神、副隣者の紀恵と季癒は自分は関係ないとのんびりしている。臨時演技者の者達は料理や、他の準備(テーブルを並べる、装飾品を取り付ける等)を出来そうな者が誰一人としていない。


臨時演技者全員の理由を言えば、まず第一として全員今は眠っているからだ。万が一起こしても、ms.actingは人形だから身体が小さくて物を運ぶどころか装飾をするにも背が足りない、全く足りない。大陽は設定が現時点で完成していない。メリーさんは大陽がいないと何も出来ない。ロロは武器の爪のせいでテーブルを持ち運ぶことすらできない。翆は全員見下してただ見ているだけで役に立とうとしない。飴綱は面白くしたいと命令を聞こうとしない。隼斗はms.actingと翆の理由が同じくある。というわけだ。

そのため詠音は自分で創造しておきながら、「役立たず作ったな」と後悔していたりする。


「何で詠音今回は世界創造しないんだ……!」

「作る方がダントツに時間と体力がかかるからだよ!しかもそれに加えて家具まで置いておけって!?私に過労死しろって言ってるようなものじゃん!」


と、詠音と彩歌は言っている。相変わらず創作組と第三勢力の亜枠神、副隣者の仲は悪い。

実際、前回パーティが異世界で開けたのは提案してからかなりの期間があったからだ。だからこそ、じっくり時間をかけてそこまで体力を使わずに済んだ。


「あら雪。何一味を大量に入れちゃってるのかしら?」

「琴葉こそ、砂糖を入れまくりやがって……零達が糖尿病になるだろう」

「……」


創作組幹部は、料理をしていた。だがしかし、超甘党の琴葉、超辛党の雪、そして自我を放棄した超苦党の芹華がやる料理はどこかの邪神までとはいかないがゲテモノ料理になっていた。


「もうお前達料理いいから姉ちゃん達を手伝ってこい!」


と恵利は三人に言う。恵利の言葉を聞いていた詠音は、芹華に二人が聞かなかったら脅すように命令して、しぶしぶ二人は準備と装飾の手伝いをする。


「あはははは……皆さん大忙しですねぇ……」


莉乃はと言えば、呼ばれたのに全く手伝うことが無くて暇していた。


「おーい。持ってきたよ、ダイヤモンド」


花乃はとにかく鉱石を持ってきていて、その隣に佐江が控えていて同じく鉱石を持って来ている。


「何であたしが鉱石を……」


そう文句を言いながらもしっかりやっている佐江。


明日はどうなるのだろうと、鏡は想像をしていた。


☆★☆★☆★


「え?私なんかが、行ってもいいのか!?」

「はい。お嬢様のご提案なので。もちろん、零様や夜月様達には見つからないよう、別室で行われます。大丈夫です、側に私めがいますわ」


暗闇の中に佇む二人の少女。片方の、稀神サグメの姿をした少女__紫黒矢瑠衣(しこくやるい)は、誰が見てもわかるほど驚いた表情をしながら、赤髪メイド服の少女、純玲鐘(すみれしょう)見ている。


「わかった。せっかくの誘いだ、断るわけにもいかないだろう」

「ありがとうございます。それでは、明日、お越し下さい」


そう言って、鐘は去って行った。瑠衣にとっては、とても楽しみだ。


☆★☆★☆★


次の日。

扉が開く音と共に、クラッカーの音が鳴る。

家の中に入って来たのは、道中を案内して来た鐘と、今回誘われた零、漸偽、夜月、ルミナの四人だった。


「いらっしゃいませ、漸偽様!」


詠音は零の後ろに続いて入って来た漸偽に抱きつこうとするも、するりと躱され壁に激突する。


「こらこら詠音。良い加減それをやめんか」

「は、はーい……」


漸偽の後ろにいたルミナと夜月は、思わず苦笑する。


「あはは、詠音ちゃんは相変わらずだね」

「そうそう、それでこそ詠音ちゃんとも言えるわ」


後ろが賑やかそうに話している時、零はある話し声が聞こえた。それは、さっき自分達を案内していた鐘の声と、恥ずかしそうにしている女の子の声だ。


「さぁお嬢様。念願の漸偽様達のご登場ですわよ。行かなくてよろしいのですか?」

「い、いざ会うとなると、恥ずかしくなっちゃうだろう……ぜ、漸偽さんと手合わせしたいのは今も同じだが……」


不思議な顔をしながら聞いていると、詠音が話しかける。


「零、どうした?あ、もしかして部屋の奥にいるいっちゃんと鐘ちゃんの会話聞いてるの?」

「ま、まぁ、そんな感じだけど……いっちゃんって誰なんだ?」

「純玲彩歌。私の妹で、同じく神様だよ。超が付くほどの脳筋だから、この間漸偽様は私を倒したんだ、って言ったら是非戦闘したいって言ってたね」


詠音には珍しい真顔で、彩歌を零に説明する。それもそうだ。詠音にとって彩歌とは妹でもあり、永遠のライバルでもあるからだ。本来なら厳密に隠しておくべき存在でもある。


「へぇ。彩歌ちゃんって言う子がいるのね。なんだか興味深いわー」


そう関心するルミナ。夜月はルミナに対して頷く。


「まぁ、入れ。せっかく昨日急ピッチで準備したんだ、楽しんでもらわなければ困る」


鏡に言われた四人は、早速中に入る。

中は、アンティーク風に飾り付けされていて、木の匂いが漂っている。

その木の匂いよりも、美味しそうな料理の匂いの方が強い。

テーブルには五つの椅子が用意されている。四人にはテーブルの上に置かれた花瓶に活けられた花は何かはわからなかったが、後から訊いて詠音によれば菫らしい。苗字の純玲とかけたのか、そう零は思ったがそこまで教えてくれはしなかった。

部屋に入ると彩歌がいた。側にはメイド服の、赤髪の少女がいる。


「ほら、お嬢様。零様達ですわよ」

「……!いらっしゃい、今回はゆっくりして行ってくれ、私は準備しか手伝っていないんだがな、あぁ、あとそこの扉は絶対に開くなよ、理由は言わんが開いたら発狂するかもしれんからな」


表情は澄ましているが、声は強張っている。四人の後ろで詠音が笑っていることが声でわかってしまう。

だが、扉は開くなという忠告に対しては夜月だけ真剣だった。その扉から懐かしい気配がするからだ。発狂覚悟で開いてみたいとも思ってしまった。


「では、私とお嬢様はこれで。どうぞお楽しみくださいね」


彩歌と側にいるメイド服の少女は、部屋から出て行ってしまった。


☆★☆★☆★


零達と別れた彩歌と鐘は、別の扉から入るなと言った部屋に入っていく。中には既に瑠衣がいて、テーブルの横に置かれた二つの椅子の一つに座っている。


「いらっしゃいませ、瑠衣様。短い間ですが、どうぞお楽しみください」

「あぁ、たっぷり楽しませていただくとするよ」


片方の椅子に彩歌が座る。

ここには窓があり、窓からの光を遮るように、大きな花瓶に入った色とりどりの造花の詰め合わせがある。背後に芳香剤があるのが丸わかりだ。


「一応言っておこう。瑠衣を招待するのは私の発案だ。加えて、これは鐘以外に話していない。つまり私と鐘以外お前が来たことは誰も知らないんだ」

「ほう。そこまでして私の存在を隠したいのか」

「本来であればお前の存在は既にこの世から無くなっている筈なんだ」


話を聞いた瑠衣は、少々黙り込んでしまう。昔の大親友を助けた自分はやはり……と、思いながら。

扉が開く扉とともに、いい香りがし始める。


「お待たせいたしました。一品目はチーズを満遍なく使った、グラタンとなります」


いつの間にか鐘は部屋から出て行き、料理を取りに行っていたらしい。

チーズを満遍なく、と言ったように、鼻に伝わる匂いで一番強いものはチーズ。


「今回出すものは完全に姉上様好みとなりますので、予めご了承ください」


机の上に置かれると、物珍しそうな目でグラタンを見つめる瑠衣。そんな表情に苦笑をしながら、予め置かれていたスプーンに手を伸ばす彩歌。


「グラタンとは、フランス語でおこげ、焦げ目をつけるという意味があるそうです」


そんな豆知識を聞き流しながら、彩歌の真似をしながら黙々と食べていく。

具材は、チーズはもちろん、他にもブロッコリー、牛肉、海老が入っている。

一回目。むき出しになっていたブロッコリーの部分を掬う。牛肉と海老は無いようだ。

ブロッコリーというのは開花する前の花の部分を我々は食べている。花が咲いてしまうと固くなり美味しくなくなるらしい。


そう思いながら口に運ぶ瑠衣。


食感。舌の上ででブロッコリーがごつごつとし、それでいて暖かい。チーズの、表面の焦げ目とは違い裏側のとろりとした所が当たり、ほんのりとある生臭さが鼻まで来る。

歯で押し潰そうとすれば、蕾はいとも容易く噛み砕かれ、茎は歯応えがあり野菜の汁が出て来る。茎の中心部分は熱くなっているが、それもまたいい。

飲み込む瞬間、彼女はこんなに美味しいものがあるのかと知った。


この一度で、どうやらグラタンに病みつきになってしまったようだ。

もうブロッコリーは無いことに少々の絶望を抱きながら再び掬う。


海老は小さめのものだった。ザクザクとした食感がいい。

牛肉は大きく切り分けられていた。ほくほくとした感触が心まで温かくする。


「……美味いな」

「ありがとうございます」

「おかわりは無いのか?」

「申し訳ありません、お一人様お一つまでなので。これは他の料理でも同じことです」


ちょっと悲しい。

恥ずかしながらもそう思った夜月は彩歌を見る。彼女はグラタンを綺麗に平らげていた。


「あぁ、そうだ。瑠衣と夜月はどのような関係なのか聞きたい」


いきなり言われたことで、驚きの表情が隠せない。


「えっと……それはその……」

「躊躇いか。ここには私と鐘しかいないぞ?」


瑠衣は一つ、ため息を吐く。


「わかった。言うとしよう」


こちらは静かに物事が進んでいるようだ。


☆★☆★☆★


一方。四人がいる方は、パーティのようになっていた。


「どうですか?漸偽様」

「あぁ、美味しいぞ」


周りからすれば失敗作の玉子焼きは、暖かさがほんのりと残っている。

何が失敗作なのかと言えば、一気に焼こうとして上手く焼けず、結果的に内側に液が残ってしまったというもの。本人曰く毎回こうなるらしい。

味はというと、美味しいのかまずいのか微妙なところなのだ。


ちゃんと焼き上がっている部分は白身のトロトロ感が残り、歯で噛むごとにプルプル感が広がる。だが液がその美味さをダメにしてしまっている。


「それならよかったです」


随分嬉しそうに微笑む詠音。

尚更不味いとは言えなくなってしまう。改善点を言えなくなってしまう。


「遅くなって申し訳ありません」


と、現れたのは、四人にとっては初めて見る顔だった。

華美なワンピースに身を包み、膝まである黒い髪。その女性は、容姿とは裏腹に詠音達に年齢が近いと説明されていた葉識紀恵。予め来るとは四人に言われていたものの、無断キャンセルか?と詠音の中で予想されていたそう。


「あー!紀恵さんおっそーい!」

「ごめんなさいね、詠音」


続いて現れたのは頭に髪飾りをしている女性。紀恵より大分大人らしい容姿をした女性。こちらは説明と来ることは四人には言われていなかった。


「おい紀恵。普段着でよかったんだぞ?」

「嫌ですよ季癒。私もたまには私服と制服以外着てみたいですもの」


そんな会話を聞き流しながら、詠音は四人に説明を始める。


「髪飾りをしているのは月陽季癒。私と同じ神様です。いつもあの二人は学生時代の友達みたいに仲良しなんですよ」

「なんだか微笑ましいな」


零はそう言う。鏡は苦笑の表情を浮かべながら皿の後片付けをしている。


「そうだ」


思いついたように斜め上を見ると、紀恵は零達がいる方を見る。


「初めまして、零さん、漸偽さん、夜月さん、ルミナさん」


手を前にし、深々とお辞儀をする。長い髪がふさりと落ちて影を作る。顔を上げた時手を使って綺麗な黒髪を後ろにまとめた。


「初めまして」


ニコニコと返す零だが、なんだか詠音達がいる前で礼儀正しいということがこれまでほとんどなかった他三人は戸惑いを隠せない様。


「うふふ。零さんは本当に鈍感なのですね」


手をで口元を隠しながらくすくすと笑う紀恵に対し、詠音も苦笑する。


「紀恵さんもやーっぱり他人の前だと緊張するんだー」

「しょうがないじゃない……!」


顔を多少赤くさせて反論する紀恵に、季癒は「まぁまぁ」と止める。


「なぁ漸偽。また鈍感と言われたが、そうだろうか」

「いや、今のは違うと思うが……」


二人のやり取りを聞いて、後ろで苦笑する夜月とルミナ。

若干空気になっている鏡は、豆乳を飲みながらその景色を見ている。

なぜ鏡が豆乳を飲むのか。それは自分の胸がまな板という現実


「ナレーター、それ以上言ったら存在を消す」

「あら、鏡ちゃん。どうしたの?」


鏡の突然の独り言にルミナはちょっと困惑していた。


「全く……いや、なんでも無いぞルミナ」


半分納得したようで、「そう」と返すルミナ。半分納得していない。


「本当にごめんねー?こっちにもいろいろあって……いろいろじゃ納得してもらえないと思うけど」

「大丈夫だ、詠音」


詠音は零にまた、謝罪する。それを笑顔で返す零。このくだりも実は三回目だったりする。


「ではそろそろデザートに行きますか」


詠音はそう提案すると、鏡は奥に向かって歩き出す。


☆★☆★☆★


『このスプーン越しからも感じられるプルンとした感触と心地よさ……何より見た目が宝石のようだから、私は魅入られてしまったのだろう……そして掬う時、掬い、スプーンを離す時に揺れる感触……病みつきになる……口に入れれば甘く、ほんのり苦い味が口に染み渡る……簡単に噛み砕けるこの食感は、いい匂いがする抱き枕を抱いている感触と同じ……飲み込めば味が永遠とも言えるほど残り、薬物のように依存症になってしまうだろう……。

嗚呼、こんなにも美味しい物を食べない奴はこの世に存在するのだろうか……もし居るなら言ってやろう』


「何故食べない」


『と……』


気まずそうな表情をしてプリンを見つめる瑠衣に、彩歌は言った。


「いや、その……これは……」

「見てわからないか?プリンだ」

「いや、そうではなくてだな……」


言葉を濁らせる彼女に対し、一瞬にして食べ終わった彩歌は真剣な表情で見て居る。

瑠衣は、一つため息を吐いてから喋り始めた。


「何故デザートにプルンなのだ?」

「何を言うかと思えばそんなことか。愚問だな。この世で一番美味しい物はプリンなのだ」

「は、はぁ……」


過去は結局、「やっぱりダメだ」と言い話してくれなかった。


「ふむ。食わんのなら私が食べるぞ?」

「いや、食べる」


焦りながらもスプーンに手を伸ばし、黙々と食べ始める瑠衣に、微笑みながら彩歌は見つめている。


「……美味しかったぞ」

「それなら鐘も喜ぶことだろう」


鐘は、彩歌の令により自室に戻って行った。


「では、膝枕をするとしよう」

「え、は?」


あからさまな驚きの表情をしながらも、彩歌の行動を見張る。

彩歌は椅子から立ち、床に正座する形で座る。座布団は無し。本当にそのまま。


「ではここに頭を乗せるといい」

「は、はぁ……」


しぶしぶ言われた通りにする。


「ふむ。では正直に過去を話してもらおうでは無いか」

「いや……その……」

「意地でも吐かせてやる」

「……わ、わかった……言う、から、その……解放してくれないか?」

「ダメだ」

「……私はな」


隣室は騒がしい中、この部屋は静か。


「比べられていたのだ。夜月とは姉妹。私が姉で夜月が妹。夜月は私より優秀で、誰からも認められていた。それに対し私は敗者。いつも誰かに褒められる夜月を見つめるばかり。だから世界が嫌になった」

「ふむ。敗者、か。ならば私も同じだ」

「え?」

「言わなかっただろうか。いや、言っていないな。私も同じ、格差社会の中で底辺に生き、何の努力も認められずに引き下がるばかり。そんな、人生だったよ」


沈黙が流れる。彩歌はただ、瑠衣の頭を撫でて居る。瑠衣は無抵抗にされるがままにされ、何の表情も見せない。


「……寝てもいいか?」

「私は一向に構わんぞ」

「では言葉に甘えるとしよう」


瑠衣は目を閉じる。本気で寝るらしい。


「おやすみ」


彩歌が一言声をかけると、規則正しい寝息が聞こえてくる。彼女にとってはいろんな人々に膝枕をしているため慣れたものだ。いろんな人々、と言っても数人程度だが。

規則正しい寝息をする彼女に、頭を撫でる。これも趣味だったりする。


隣の部屋から「そろそろ解散しましょう」という声が聞こえた。

廊下を歩く音が聞こえる。扉を開ける音が聞こえる。まだ、寝かせておいてあげようと考える彩歌。


「これでよかったと思うか?夜月。あぁ、お前には入ってはいけないと言ったのだな。だが……まぁ、誰かしら察したのではないだろうか」


実際、夜月は気がついていた。ここに、瑠衣がいることを。しかし来なかった所を考えると、遠慮したのだろうと考える。


「あぁ、そうだ、鐘。起きるまでに帰り道ルートを確定させておくように」

「御意」


この部屋は沈黙の流れる部屋。でも、ちょっと違うかもしれない。

瑠衣の目から涙が流れていることを、誰も気付かなかった。

どうでしたでしょうか?

私的には三ヶ月かけて書いただけあって、上出来だと思います。後味悪い気がしますけど。

では第四回が行われるならまた会いましょう!ではでは!


最後にオリジナル言葉説明


亜枠神(あわくしん)

簡単に言えば軍のリーダーである神。詠音、彩歌、紀恵のことを指す。


副隣者(ふくりんしゃ)

簡単に言えば軍の副リーダー。鏡、鐘、季癒のことを指す。


・自然組

四季の管理者紀恵が仕切る自然を愛する軍であり組。


・創作組

創造者詠音が仕切る創造をする軍であり組。


・第三勢力

力を一番の誇りとする彩歌が仕切る力の象徴の軍であり組。


・臨時演技者

普段は封印されている七人組。その名の通り、臨時に演技をする者。


・幹部

いつも面倒ごとを押し付けられる振り回され役。ある意味社畜。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ