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予兆(仮)

拙いながらもフェアリーキス大賞応募に間に合わせようととりあえず投稿しましたので、加筆修正ありまくるとおもいますが、どうぞお付き合いください。






ここは、エストレア国。


自然と人間、魔物と精霊が共存する、摩訶不思議な世界の国のひとつである。


人々は日常的に魔法を使い、より高度な魔法が使える者が国の権力者となる。



この国の子どもは、両親の属性のうち火・水・風・雷・大地の五つの属性からより相性のいい属性を1つだけ授かる。




そして、自身の属性を磨くことのみを考え、必死に鍛練を重ねている。



例えば、火の属性を極めて炎の最上級魔法が使えれば国民の生活を支えるエネルギー供給や教育機関での活躍、軍事戦力の要になる可能性があり、公的な職を得ることも可能だろう。



どの属性においても極めれば極めるだけ自身の生活の豊かさにつながる。





しかし、私セーラは、生きていくえで不可欠の『魔法』が使えないでいた。いや、正確には《使えなくなった》のだ。


父から雷の属性を継承していたはずだったのに、幼い頃突然魔法そのものが使えなくなってしまった。その時のことはあまりよく思い出せない。




両親は、それぞれ水と雷の最上級魔法の使い手として国の軍事を取り仕切る部署に勤めているのだが、魔法の使えなくなった私に生きていく術として剣や弓、体術のほとんどを習得させてくれた。



もちろん、鍛練は大変だった。


しかし、それよりも強くなりたいという気持ちの方が勝っていた。魔法に打ち勝つほどの力が欲しかったのだ。


だって、生活の一部である魔法が使えないことがどれだけ子どもの間で異端で好機の対象だったかは言うまでもないでしょ。




だから、私は人一倍剣や体術の稽古に励んだ。







そして、王宮の近衛兵として雇われることとなった今、何故かとても王宮勤めの女性達にモテていた。



「まぁっ!!セーラ様よ。今日もお美しいわ。」


「ええ、本当にお美しい。紅い髪が太陽に照されて輝いているようですわぁ。」


「今日もメレナ高原の魔獣を倒されたそうよ。」



「「「なんて勇敢で、素敵なのかしら。」」」



父がよく言っている。


女性ほどよく情報収集能力が高く、他者を観察し機転と推測が働く生き物はいないと。


つまり、味方にすると最強であり敵にすると最悪だといいたかったわけである。


私はできるだけ満面の笑みを浮かべて彼女達に微笑みを向ける。



「まぁ、セーラ様が微笑んでくださりましたわ////。」


「私、本日のお勤め頑張れますわ。」


「はぁ、お美しい。」



女性達に喜ばれたのなら安心である。



サクサクと近衛隊司令官のヴァンの元へ魔獣討伐の報告に行こうと歩みを進めていると嫌な気配がした。



とっさに剣を引き抜いて振り向き様に降り下ろす。


バンッと何かの弾ける音がした。


火の粉が舞って霧散した。

炎の遠距離魔法・・・上級魔法だ。





「さすが、セーラ。今のよく防げたな。」


声は背後、すぐ近くから聞こえた。



振り替えれば、上級魔法の使い手を示す紺色の制服を身にまとった、ただの背の高くて、ちょっとばかし顔がいいくらいの幼馴染みのレオンがいた。


小さい頃から、何かと、いたずらをしかけてくるくせに人前では愛想をふりまく腹黒い幼馴染みだ。

それに、何事もないように私の後ろに気配なく立つことが、本当に気に入らない。


「レオン、いきなり魔法攻撃しかけて来ないでよ。」


「お前、剣技は最強でもたまに何もないところでこけたりするだろ?だから、注意力散漫になってないか訓練してやってんの。」




「なっ!レオンだって魔法は使えても剣の腕はからっきしじゃない。このまえの剣技大会でも結局私に勝てなかったし。」


「あれは、運がお前に味方しただけだ。」



「くーー、素直に負けを認めたらいいじゃない!!」


「嫌だね。」


ベッと舌をだして微笑むレオンは相変わらず憎たらしい。



「この腹黒魔法使い!!」



「はいはい、腹黒で結構。それよか、総隊長が呼んでるぞ!」


「え、シーフ総隊長が?」


用件はそれだったのか。

そらなら、早く言ってくれればいいのに。


シーフ隊長は魔法衛兵の総隊長で私たちとそんなに歳も変わらないのに圧倒的な魔法のセンスや技術がかわれて昨年からエストレア国の軍事魔法衛兵隊の総隊長に任命されていた。


とても落ち着いた雰囲気の方で、優しさと知性の塊みたいな人だが、私はどこか苦手だった。



「あぁ。ほら、いくぞ!」



シーフ隊長の部屋は王宮の一番北の棟にある。

すこし距離があるがレオンが話しかけてきた。


「そういえば、セーラ、今日メレナ高原の魔獣倒したらしいな。」


「倒したというか、人を襲ったときに害が出ないように爪と牙を落としただけ。ウルフ族の魔獣だったんだけど、いつもは大人しいはずの魔獣なのにやけに興奮してたというか。なんだか変だったんだよね。」



その時のことを思い出す。



-------




最近、エストレア国と他国の狭間にあるメレナ高原で貨物を積んだ馬車や旅行客が魔獣に襲われるという事件が多発していた。


被害にあった人々は皆、魔獣に襲われたと証言しているが、おかしいことがひとつあった。


魔獣といっても様々な種類がいるが、被害者全てがそれぞれ違う魔獣に襲われていたのだ。




複数の魔獣が人間を襲うのは、

人間も魔獣も上手く共存しあっているエストレアでは珍しいことだった。


このまま被害が続くと他国との貿易の難航につながり国の不利益に繋がる可能性があったため、セーラに解決の任の白羽の矢がたった。


司令官のヴァン曰く

「手っ取り早く片付けてこい。」


とのことだった。



セーラは魔法の使える使えないに関わらず自分の才を認めてくれるヴァンが尊敬の意味で好きだった。



期待に応えたくて張り切って出発した。



メレナ高原は見渡しがいいようで丘や石碑、湖、洞窟があちこちとあり意外と死角が多い。



セーラがわざと自分の存在をアピールするために鈴の音をならすと何十匹と魔獣がでてきたが、目当ての人に明らかな敵意をむけてくる魔獣はでてこない。




うーん、本当に貨物や人を襲う魔獣がいるんだろうか・・・。



ふと、高原の端に奥の見えない洞窟があることに気付いた。


みれば、そこだけ花も草も枯れており少しだけ妙な気配がした。



入り口から石をなげいれても反応はない。



何もいないのか。


けれども、奥をめざして

一歩ずつ進むと魔獣独特の肌を指すような、気配を感じた。



「うそ・・・・。」



そこには全長三メートルはあるだろうか、大きなウルフ族の魔獣が横たわっていた。


ガルルルル…ガルルルルル


ウルフ族は、忠誠心が強く人に一番尽くす種族であるはずのに、私に気付いたのかものすごく威嚇してきた。



奴の回りには人を襲ったときに手にいれたのだろうか様々な積み荷が散乱していた。



どうしてこんなことをするのかは謎だ。



近づこうとすると猛烈な倦怠感に襲われた。



なんだか、重力が増した気がする。



ガルルルルル…ガルルルル…ワン!


先にどちらが動くかお互いがそれを見定める時間が続いた。


あんまり手荒な真似はしたくなくて、人に害を与えないように鋭い牙と爪を切り落とすことを決めて地を蹴った。


「ギャインッ」


そのまま、奴は洞窟をでて森の方へ走っていった。



「うーん、とりあえずはよかったかなぁ。」


もぬけの殻になった洞窟を見渡すと魔獣のいた場所に奇妙な魔方陣があった。


これは、何の意味がある魔方陣なのかなぁ。



触れようとして・・・手が止まる。




安易に魔方陣に触れてはダメだ。術が発動しても困るし。





形だけ記録して帰ろう。


-----


「魔獣の凶暴化と変な魔方陣ね・・・・。見せろよ、その魔方陣。」


メモをした紙を渡す。


「レオン、見てわかるの?」


「・・・・いや、わかんねーな。」


少しだけ顔が曇ったのを私は見逃しはしなかった、

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