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American Idiots  作者: アホイサック・デジマ
What the Hell?
9/10

たぶん、ゴブリン、だと思う。

デイヴとフレッドが茂みから飛び出し、フランシスも続いた。キャシーは、小人の眼前で死んだように倒れていた。


フレッドが懐から飛び出しナイフを取り出した。「どうすんだ、デイヴ! 」

デイヴは答えず、小人にタックルし、馬乗りになった。小人は激しく抵抗したが、デイヴがしっかりと体重をかけているので、どうする事もできなかった。

「こうするんだよ! キャシーを! 」デイヴが二人に叫ぶ。フランシスとフレッドはキャシーに近づき、小人から引きずって離した。フレッドが声をかけると、キャシーは小さく頷いたので、二人は安心した。


「そいつ、ゴブリンだ! ゴブリンだよ、デイヴ! 」フランシスが言った。

「なんだって? クソッ! 」小人はなおも暴れた。「おい、動くんじゃない! 」デイヴはそう言い、頸動脈を絞めにかかった。抵抗はなおも弱まらず、デイヴは絞め続けた。その内、小人はぐったり、動かなくなった。死んではいないようだった。


デイヴが小人から腕を離す。「レスリングなんてゲイ臭いこと、授業でやってて良かったってはじめて思ったよ……」

「デイヴ、そいつ。たぶん、ゴブリン、だと思う。」フランシスがおずおずと話した。フレッドが何だって? と聞き返した。

「だから、ゴブリンだって! えーっと……TRPGなんかでよく出るんだ。セッションの最初の方、よく、はじめての敵として出るんだよ。」フランシスがそう言うと、フレッドは頭を抱えた。「おお、これが夢である事を祈るぜ。このフレッド様が、そんなナードくせぇ事に巻き込まれるなんてよ! 」


「その人、死んだの? 」意識がはっきりしてきたキャシーが聞いた。「多分、死んじゃいない。気絶してるだけだと思う。」とデイヴ。


「あの、ここから離れた方がいいよ。ゴブリンって、その……」フレッドが言うと、辺りの茂みから音がした。「大体、群れで配置するから……」小人がキャシーに殴りかかった時発した叫びがまた聞こえた。四人は一目散に走りだした。


方向もわからず走っている内、木々が少なくなってゆき、少し開けた場所に出た、遠くに街道が見えた。「ああ、クソ! あのビッチ以外の神に感謝! 」フレッドが叫んだ。


街道に着くと、四人とも倒れるように座りこんだ。フレッドは倒れた。

「これが、その、街道か? 俺たちは南から来たから……俺たち側から、右に行けばいいんだな。」デイヴが言った。

「もしかしたら違う街道かもしれないし、あたし達が回りこんでしまったかも。方向だけは合わさるし、太陽がもう少し沈むまで待った方がいいと思うわ。」と、キャシー。太陽は丁度、真上にあったので、もっともだ。とデイヴは同意し、太陽が沈みはじめるまで休憩する事にした。


「中世の街道って、盗賊なんかがよく出るんだ。大丈夫かな……」と、フランシスが言った。四人は少し、茂みのある場所に移動する事にした。ゴブリンは怖かったが、盗賊の方が怖かった。


移動中、キャシーが前を歩くフレッドに話しかけた。「ねえ」「何だよ? 」「さっきは、ごめんなさい。あたし、カッとなる事があって……皆を危険な目にあわす所だった。」「俺の言い方も悪かったよ。」フレッドは振り向かず、手を振って答えた。


太陽が沈みはじめ、デイヴの言う通り、右が東だとわかり、一行は街道に戻り、移動をはじめた。腹が減った、とフレッドが言った。


空が赤みはじめた頃、遠くに街が見えた。「あれかしら? 」と、キャシー。

「だったら良いがね。どっちにしても、何か食える。ゴミだって今なら御馳走に見えるよ。」と、フレッドが言った。


街道の脇に、一軒の馬屋があった。家屋の前に若い女が一人立っていた。緑の肌でなければ、それほど小人というわけでもなかった。


一行が近づくと、女は軽く頭を下げた。「すみません、あの、あれって、大きい王国の、首都ですか? 」キャシーが聞いた。


女は一瞬、変なものを見るような顔をした。女神と同じく、ビニールで出来たダッチワイフのような、大きい目をしていた。「ええ、まあ……そうですよ。」女神と同じく、耳につく、高い声だった。


「あなた達、旅人? 」女が聞いた。「ええ、まあ。そんなようなものです。」


フレッドがつぶやいた。おい、こんな調子じゃ、いつその、魔王を倒せるんだよ……。


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