はじめてでんをわつかいます
四人は草原に居た。あまりに唐突な出来事の連続に、誰も口を聞く事を忘れたようだった。
フレッドがまず、口を開けた。
「それで俺達、これから何をしたらいいんだ? 」
誰も答えなかった。強い風が吹き、キャシーがなびく髪を押さえた。
「腹が減ったな。俺、まだ食ってない内に撃たれたらしい、」デイヴが言った。
「ヌガーバーならあるよ。」とフランシス。ズボンのポケットから、ヌガーバーを二本取り出した。ありがとよ、とデイヴが一本受け取った時、どこかから腹の虫が鳴った。キャシーの方から聞こえた。デイヴが手に持った一本を半分に折り、キャシーに差し出すと、キャシーはありがとう、と答えた。
やっとかないと、後からうるさいだろうな、と思い、フランシスは残った一本を同じように半分に折り、フレッドに差し出した。フレッドも礼を言い、ヌガーバーを口に運んだ。
「そうだ、あたし、あなた達の名前まだ聞いてない。」キャシーが言った。
フレッド、フランシス、デイヴが順に自己紹介した。フレッドがビッグ・ブルの中身をやっていると聞いた時、ああ、あの……キャシーは納得したようだった・
自己紹介を終え、たわいもない話が始まった。何をしているのか、聞いている音楽は、誰と友達なのか……? そしてフランシスがヌガーバーを食べ終えた頃、音が鳴った。
You Got Mail!
「悪い、俺だ。」二秒くれ、とフレッドが携帯電話を取り出した。
「ちょっと、ちょっと待って、フレッド。携帯持ってるの? 」フランシスが聞いた。
「ああ、うん……知らないアドレスから。」とフレッド。
「違うよフレッド、なんでもっと早く言わなかったの? 助けを呼べるだろ! 」フランシスが言った。
フレッドは心底驚いた顔をしてから、落ち込んだ。「ダメだ、圏外。」フレッドは姿勢を変えたり、携帯の高さを変えたりしたが、圏外のままだった。
「圏外でも入るメールってなあに? 大体は料金の催促さ。」フレッドはメールボックスを開いた。そして、心底嫌そうな顔をした。
「諸君、我らが偉大なる神からの激励の言葉だ! 今から読み上げる! 静粛にお頼み申す! 」
はじめてでんをわつかいます
こんにちわ。メル、とどいていますか
あなた達は今 オンアプレインへいげんにいます。
そこから北「あなたたちがさいしょ見ていた方こうです」にしばらくすすむと、みちがあります。
そこを、Eastにすすんでください。
大きい王国の、しゅと、あります。
そこで、わたしの名前、だして、謁見してください。
はしめてメール使うので、読みにくくてすみません。お願いします。女神スパンゲン
「どう思う?」フレッドは読み終わった後、全員に携帯電話を回した。とりあえず、とデイヴが言った。アップルストアの店員にも解決できるか怪しいな。
一行はその、北へと歩いた。北と行っても、"多分北"ぐらいの意味だが。しばらく歩いても、その道は見つからなかった。
進んでいく内に少しずつ、あまり背が高くない木が目につき始めた。それでもその"多分北"へと歩いて行った。ついに、林のような、木々生い茂る場所へと出た。それでもその"多分北"へと歩いて行った。
「あのさ……」フランシスが息を切らしながら、先頭を歩く、デイヴに言った。「僕ら、ひょっとして迷ってる? 」
「ああ、まあ、そうとも言えるかな。」デイヴが歯切れ悪く答えた。
「フレッド、メールに返信できないの? 」」とフランシス。「ダメだ。圏外だってよ。」
「ダメだ、少し休憩させて欲しい。」息も堪え堪えに、フランシスが言った。「なんだあ、だらしない。」フレッドが言った。息を切らしながら。
「あたし、賛成。随分歩いてるわ。少し休憩して、太陽の見える所に向かわない? 方角がわかるでしょ。」と、キャシー。
いい考えだ、とデイヴ。一行が腰を降ろした時、少し離れた所からガサガサ、何かが動く音がした。
「ちょっと、やだ。もし熊でも出たらあたし達もう一回死んじゃうわよ。」とキャシー。
フレッドが音がした方にそろそろと歩き、覗き込んだ。「おい、お前ら、来いよ! 」フレッドは小声で、しかし興奮した様子で、三人を手招きした。三人が立ち上がった時、静かにな! と付け加えた。
四人が茂みから覗き込むと、そこには緑の肌をした、小人が居た。こちらに、左半身を向けていた。
「おい、見ろよあれ! 腰に藁まいてるだけだぜ! 」フレッドは笑っていた。
「丁度いいじゃない。道、聞きましょうよ。」キャシーが言った。
「正気かよ! 見ろよ、あの肌の色! あいつに道を聞くなんて考えられねえ。アフリカの人喰い族みたいなもんだぜ、きっと。それに……」
「それに? 」とデイヴ。
「小男は性格が悪いんだよ。」フレッドは忍び笑いをしていた。
「あんたって、本当最低ね。一生言ってなさいよ。」そういうとキャシーは茂みから飛び出し、エクスキューズ・ミー。と話しかけた。
フランシスは呆然としていた。キャシーが茂みから飛び出た時、いけない、と声を出した。
緑の小男が振り返った。右手に棍棒を持っていた。小男は声にならない叫びを発し、棍棒でキャシーを殴りつけた。
それみろ!だから小男は性格が悪いってたんだ!とフレッドは言った。茂みから飛び出したタイミングはデイヴと同じぐらいに早かった。
最近は延々凛をのんでいる。