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American Idiots  作者: アホイサック・デジマ
ああ、素晴らしきN.F.L
2/10

フレッド・ベラドナの場合

目覚ましのベルがけたたましく鳴る。フレッドはベッドから上半身がずり落ちた状態で目覚めた。前の日に飲んだビールの缶が目に入り、次に二日酔いと血流が頭に集中したせいで頭がガンガン痛んだ。ああ、クソ。やっちまった。寮のルームメイトはすでに出かけていた。あのガリ勉野郎、せめてベッドに引き上げてくれてもいいだろうに。フレッドは悪態をつきながら起き上がり、前の晩から開きっぱなしになっていたジーンズのジッパーをあげた。何度目のスヌーズだ? 時計に目をやると、五度目だった。洗面所に向かい、顔を洗い、水を一口飲んだ。髭を剃ろうと思ったが、やめた。どうせ、今日は顔が見えないんだ。


フレッドは財布と鍵をひっつかみ、食堂に向かった。プレッツエルとコーヒーを頼んだ。待っている間視線をうろうろ動かすと、ルームメイトのフランシスが目に入った。フレッドは腹が立った。プレッツエルの載ったプレートを受け取ると、フランシスの方にズカズカと歩いた。フランシスはフレッドと目が会うと、おろおろうろたえ出した。

「おい、ガリ勉野郎。なんで俺を起こさなかった? 」フレッドは強い口調でそう言った。

「ご、ごめん、フレッド。君、昨晩ひどく騒いでいたから、疲れてるだろうと思って……」ガリ勉野郎と呼ばれた青年、フランシスは気弱そうにそう答えた。

「疲れてるもクソもあるか! おかげで俺は頭に血が登って気球みたいに飛んでいきそうなんだぞ! 」とフレッドは怒鳴った。

「ごめん、フレッド……今度から気をつけるよ。」とフランシス。フレッドはぶつぶつ言いながら、フランシスの向かい側に座った。「でも……」フランシスが小さく口を開いた。「その頭が気球みたいに飛んでいけば、フレッドも少しは落ち着くかもしれないね。」

参った、これは少し面白いぞ。フレッドはそう思ったが、今は怒っている所を見せたかったので、口に出すのはやめておいた。プレッツエルをかきこみ、舌打ちをして席を立ち上がった。フレッドの考えを察したのか、フランシスはおどおどするのをやめていた。口の両側を少しあげて、微笑を浮かべていた。


フレッドはフットボール場へ向かっていた。途中、よう、フレッド! 今日も期待してるぜ! と声をかけられた。フレッドは声の方向へ向かって、右手でサムズアップしてやった。


フットボール場につくと、フレッドは用具室へ向かった。用具室は、選手用のロッカールームよりも更に奥まった所にある。用具室のドアを開けると、いつも通り、埃っぽい臭いがフレッドの鼻をついた。フレッドは鼻を一すすりすると、部屋の中心にある、ストーム・ブルズのマスコット、ビッグ・ブルの着ぐるみへと歩いていった。軽く埃をはたいてやり、こう囁いた。今日も頼むぜ、相棒……


試合開始二十分前。ビッグ・ブルは今、コートに降り立った。ストーム・ブルズ選手用ヘンチから口笛が鳴った。ビッグ・ブルはそちらを向き、その場で思い切り飛び跳ねてやった。そうしてから、敵チームのベンチへ振り返り、尻を向け、左右に激しく振った。右手で中指をたてるおまけ付きだ。いいぞ、ビッグ・ブル!客席から声援がとんだ。


試合開始のホイッスルが鳴る。一進一退の緊張感溢れる試合だった。ブルズが点を取るとビッグ・ブルは飛び跳ね、相手が点を取るとブーイングをした。膠着するかと思われたが、ブルズにはデイヴィッドが居た。一回、二回、三回のタッチダウンを決めた。三回目のタッチダウンの時、ビッグ・ブルは宙返りまでやった。チアリーダーが黄色い声援を上げるのを聞いて、フレッドはあいつらアホと違うかと思いながらも、少しデイブを羨ましく感じた。


試合終了のホイッスルが鳴った。ブルズの勝利だった。両チームの選手同士が健闘を讃え合っている時、デイブに近づき、この後はチアリーダー連中に何度タッチダウンを決めるんだ? と囁いてやった。三回だよ! と言われ、試合と同じだけか、と思った。試合場からひきあげるテイブに両手でセックスのジェスチャーをすると、笑いながら何か言われたが、着ぐるみの中なのでよく聞こえなかった。


フレッドは着替えとシャワーを終え、もう一眠りするために寮へと帰っていた。中庭を抜け、廊下を進んでいた時だった。背後からおい、腰巾着野郎! という声が聞こえた。フレッドは腹がたったので、もう一回言ってみろ、と怒鳴りながら振り返ろうとした時、何かの破裂音が聞こえた。


そして次の瞬間、フレッドは何か、煙の漂う空間に居た。

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