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不幸少女と普通男子  作者: 一ノ瀬楓
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捨てた思い出

夢の中で誰かに呼ばれてるような気がした、

誰かはわからない。

いや、思い当たる人間はいる。

でも、何故今更夢に<あの人>が現れたのか、正直検討がつかなかった。

もう忘れたはずなのに、なんで今になって。



朝だ。

午前5時。

いつも起きる時間より一時間と少し早い。

なにか、悪い夢を見ていたような気がした。

だから目覚めたのだと思ったけど、なんだかとても清々しい気分で目覚めた。

少し早いがいつもの様に朝食の用意を始める。

それと同時進行でお弁当の準備も。

今日の朝食はトーストにスクランブルエッグ、あとはベーコンとコーンスープとサラダで洋風に仕上げた。

食後のコーヒーの準備もして、一息ついたところで煙草に火をつけた。

いつもならそろそろ起きてきても良い時間なのだが、今日は目覚めた時間が早かったので少し時間を持て余した。

スマートフォンで流していた音楽を一旦止め、テレビを付けてチャンネルをポチポチと変えて気になるニュースがないか探す。

「昨日の午前2時、札幌市中央区にある高層マンションの一室で人が死んでいるとの通報がありました。亡くなっていたのはこの部屋の住人、頭を硬いもので殴れた跡があり、警察は殺人事件として捜査を進めています。この部屋のもう一人の住人の行方がわからなく、警察は重要参考人として捜査することを決定しました。隣人の話では…」

ガチャッ。

居間の扉が開く音が聞こえた。

それと同時に、おはよーという言葉も。

「今日起きるの早かったの?」

なんか目が覚めちゃったみたいで。そう返すと

「まぁそういう日もあるよね。美味しそうなな朝食だね。いただきます。」

どーぞーっという言葉と被りながら彼は朝食を食べ始め、スマートフォンでニュースのチェックをしていた。

ニュースといってもほとんど株価の情報だ。

私はまたテレビに集中してみたが、さっきのニュースはもう終わってしまっていた。

さっきの事件、ここからそんなに遠くないように思えたなぁっと心の中で言った。

「ふぅー」

彼がため息のようなものをつく。

これが彼なりのごちそうさま。

座っていたソファから立ち上がり、食器を片付けたあとに起きてから落としていたコーヒーを彼専用のマグカップに入れる。

彼はミルクも砂糖も入れないブラックを好む。

打って変わって私は大の甘党なので、砂糖とミルクをたっぷりと入れて飲むのが好き。

私のコーヒーを見て彼はいつも決まったセリフを吐く。

「そんな泥みたいな色の飲み物よく飲めますね」

この時だけ敬語なのがなんかムカつく。

しかし、彼は悪気があって言っているのではないことは私が一番よくわかっているので怒ることはまずない。

ただ、内に秘めるだけ。

そうして彼はコーヒーを飲み干すとそそくさと洗面台へ向かう。

寝る前に準備していたスーツに身を通し、歯を磨いて髪を整えて、準備が終わるとこれもまた寝る前に準備していたカバンが玄関に置いてある。

カバンを持ってコートを着て靴を履く、

「今日も一日頑張るね、家のことをよろしく。行ってきます。」

彼は家を出る前に必ずこの言葉を言う。

仕事の前日には必ず全ての準備を済ませてから寝る。

これは小さい時からの習慣らしく、今まで忘れ物というものをしたことがないらしい。

素直に凄いと思ったが、それがなんとなく少し疲れることも最近なんとなく気付いてきた。

それに一つ、私には疑問に思うことがあった。

彼にとっては、結婚指輪は忘れ物ではないんだろうか、と。

休みの日は必ず身に付ける結婚指輪。

でも仕事には絶対付けていかない。

深く考えると頭がパンクしそうになるので、

あまり考えないようにはしていたけど、気になるものは気になる。


こうして、寝室のタンスの上にキラリと光る結婚指輪を眺めながら今日も平凡な一日が幕を開ける。


そう、思っていた。


あの事を思い出す、その時までは。

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