初恋ショコラと初恋?ショコラ
初恋?ショコラに出てきた彼女視点のお話。甘めを目指してみました。甘いかどうかは私にはわかりません。
私のツレは愛い奴だ。
そして馬鹿だと私は思ってる。
ツレは、私が「名乗れ」と言ったときが出会いだと思っておるが、それ以前に出会っておる。私が、気に入ってもない奴に名乗れというはずもなかろう?
あれは、小学を卒業して、中学入るまでの休みにじゃったの。
私が小学生だということを信じようとしない、軟派してきた阿呆に困っておったらの、ツレが「困ってる人に言い寄るなんて、男らしくない!」と突入してきて、ボコボコにされとった。当時からちまかったからの。
結局、軟派してきた阿呆は、周りの目から逃げるようにさった。周りの冷ややかな目に耐え切れんかったのじゃろう。軟派というだけあって、軟弱だったわ。
でだ、地面に倒れとる当時のツレに助かった礼をしようと思ったら、急に立ち上がったと思ったら「やったー!俺でも男らしいこと出来たぞー!」と叫んで走っていってしもうた。
私はしばらく呆けたが、直ぐ面白い奴を見つけたと楽しくなった。次に遇うことがあったら、逃がさんとおもっとったの。私も若かった。
中学入学したら、同じクラスにツレがおった。とりあえず「名乗れ!」と言ったら、眉間をもみ始めた。
しばらく間が空いて「あなた、誰です?」とツレは言った。私は思ったの、やはりこいつ忘れとると。
忘れてとるなら仕方がないと、こちらが名乗った。眉間を揉むのをやめなかったので、「名乗るがいい!」と追い討ちをかけたら、ため息を吐きながら名乗り返してきた。
私は嬉しくなって、「いい名だな」と笑いながらいったら、ツレは顔を赤くしてしどろもどろになっとった。可愛かったの。
高校入ったあたりだったか、何故いきなり名乗れと言ったのかとツレが問うてきたから、「実際、長い付き合いになっとるじゃろ?」と胸を張って言うたら、ひざを突いて泣き始めた。
私のせいだということはしっておったから、いつもどおりツレの頭を私の胸に埋めるように抱きしめてやった。私に、愛しとる奴を泣かして楽しむ趣味はないからの。慰めてる間のツレは、いつも以上に愛いから役得ではあったんじゃがの。
抱きしめながら、頭をなでとったら、ちくしょうと小さくツレが言っておるのが聴こえた。いろいろ思うとったんじゃろうが、一生離れる気はなかったでの、心の中で諦めろと言っておいた。直接言ったらまたなくでの、ツレは泣き虫じゃから。
ツレを振り回し始めてから、初めてのバレンタインに、ツレの家までコンビニで買ったケーキを持っていった。
その頃にはもう、ツレを一生離す気はなかった。なんだかんだ言いながら、私についてきてくれる奴なんぞ、珍しいからの。
そのケーキは、初恋ショコラというケーキでの、キャッチコピーは『ケーキと私のキス、どっちがすき?』じゃった。今でも変わっておらんがの。
カバーを外して、皿に持って持っていたら、案の定気づいておらんかった。世間の流行に興味がない奴じゃったからの、ツレは。美味しそうに食べてる姿が愛いかったから、そのときはそれでよしとした。今も変わらんが、小動物みたいな奴じゃたからの、ツレは。
それからいつ気づくじゃろう?と思いながらバレンタインのたびに持っていったが、結局気づかんかった。
期待はしとらんかったとはいえ、カチンとこないわけではなかったからの、同じ大学に進学したことじゃから、やってやろうと思うたの。
関係を変えようと思うとらん奴に対する意趣返しもこめて、男装はせんが、誘ってやろうと。泣いとるのを慰めるたびに顔を赤くする初心なツレのことじゃから、耐え切れんじゃろうと思ったからの。
で、ツレと過ごす7年目バレンタインの日。精一杯に自分を飾って、ツレの一人部屋に向かった。
普段、飾り気のない私じゃから、恥ずかしかったの。インターホンを押して、ツレが出てきたときから緊張しぱなしじゃった。
いつもどおり、美味しそうにケーキを食べてるツレの隣にこっそり移動した。食べてる間、ツレは周りへの注意が薄れるからの。
で。食べ終わったツレに向かって「このケーキのキャッチコピーをしってるか?」と問うた。いつもどおり「しらん」とツレが答えたのを聴いて、思わず笑いがでた。
なあと言った瞬間、ツレの体が少しこわばった。こういう勘だけ鋭い奴じゃったから、予感しておったんじゃろう。そんなことを私は気にしてられなかったがの、私かていっぱいいっぱいだったからに。
内面の緊張を隠しながら、『ケーキと私のキス、どっちがすき?』というんだそうじゃと言って、ツレの腕に私の腕を絡めた。微妙に湿気っぽかったのは、冷や汗が出ていたからだと、のちのちツレから聴いて知った。
そっと耳にささやきかけるようにどっちなんだ?と問いかけた。ぎこちなくこっちを見たツレのあの顔は、今でも思い出せる。見たこともないくらい引きつっておったしの。
さて、7年経ったなと言ったら、小さく、あ…ああ。という返答がかえってきた。
畳み掛けるように、初恋の味はどうじゃった?いったら、返答が帰ってこなかった。
止めとばかりに。ククク、どうした?答えられんのか?といいながら、あいつの顔を見たら、耳までまっかにしてフリーズしておった。
とりあえず、勢いに任せて、キスした。勢いに任せないとしり込みしそうだったからの。
今思い返しても、よくあんな大胆なことをしようと思ったのと恥ずかしい。ツレの方が衝撃が大きかったらしいから、訊かれんのは助かったの。顔が赤くなかったかとか訊けんから、お互いさまなのじゃろうけれども。
でだ、のちのち訊いたら頭が真っ白になってたらしいツレにいただかれて、朝を迎えたのだが、起きたら隣でツレが泣いていた。とりあえずいつもどおり抱きしめておいた。胸が涙で濡れた。
ツレがいつも以上に愛いかったから、頭を撫でようとする手を抑えるのが大変じゃった。追い討ちをかけたらツレが可愛そうだったしの。
今目の前で、涙を流しながら初恋ショコラを食べているツレがいる。思い出のケーキなのだから味わって食べてほしかったのじゃが、未だに吹っ切れていないようだの。悔しそうにしているから、食べ終わったたら膝枕でもしてやろうかの。
―――ケーキと私のキス、どっちがすきじゃ?―――
―――不本意ながら、キスの方だ―――
―――おい、やめ・・・むぐう!?―――
―――相変わらず、愛いやつじゃのー○○は―――
―――………―――
―――そのままでいいから、聴いてくれんか?―――
―――………(コクリ)―――
―――私はの、○○と出会えて幸せなんじゃよ―――
―――私の行動をみて、私自信を見てくれたのは家族以外ではお主が始めてなんじゃよ―――
―――なあ、○○。お主は私といて幸せか―――
―――…いつも振り回してる癖に、何でこんなときだけ弱気なんだよ―――
―――俺はな、不幸だと思ったことは一度もないんだよ―――
―――泣くなよ、こんちきしょう。俺がわるいみたいじゃないか―――
―――じゃって…じゃって……――
―――ああ、もう!幸せだよ!幸せだから泣くなよ調子狂うな―――
―――…ありがとう―――
―――…こっちこそ、だ―――
筆がのったので、連投してみました。前作を読むと、少しだけ多めに楽しめるかもしれません。よかったら読んでみてください。