番外2話「生徒会副会長の日常」
これは友紀たちが封装を手に入れた、その日の出来事である。
「如月か、ちょうどいいところに来た。それでだが、例の物は?」
生徒会室に入るなり、そんな声が私を迎えた。
私――如月風音――は、テーブルの角を挟んで生徒会長の右隣りに腰をおろし、自分の右腕にはめたブレスレットを机の上に置いた。
「会長、こちらが今朝お話した封装です」
「そんな会長だなんて役職で呼ばないで、本名で呼んでくれたまえ」
「では一つ聞きますが、その絶滅危惧種的に遭遇率の低そうな佐藤太郎という名前は本名なのですか?」
「偽名だけど、それが何か?」
「いえ、なんでもありません」
この人の相手をすると、相変わらず疲れる。私は、もう何度目か数えるのもバカらしくなってくるくらい考えたいつもの結論に達した。
私が生徒会にスカウトされたのはもう半年も昔のことなのだが一向に慣れる気配がない。
いや、この半年間でスルースキルが身についたのは慣れた証拠なのかもしれないが、それはこの際気にしない。このやり取り自体に疲れては全く意味がないのだ。
「それで、これが例の封装か」
会長は私をからかってご満悦なのか、封装を楽しそうにいじっている。
「ええ、それが昨日の放課後、普段ならただの空き地であるはずのところに突如現れた骨董店で入手した封装です」
会長は封装をテーブルに戻すと、おもむろに立ち上がり、普段会議のときに使用するホワイトボードを自分の席の近くに移動させた。
会長がマーカーを手に取り、ふたを開ける。
「それで昨日、如月が下校時店に立ち寄ったのが十八時四十分ごろ」
黒板に18:40、如月着。店を確認。と書かれる。
「その店で封装購入後帰宅。その後報告のために俺に電話をしたのが十九時十五分ごろ。その後連絡を受け俺がそこに行ったときにはその店はなかった」
19:50、佐藤着。店を確認できず。先の字の下に追記される。
「そして今朝、如月がもう一度訪れたが、その店はなかった」
翌7:20、如月着。店を確認できず。最後にそう書き、会長は再び椅子に座った。
「さて、憶測の域を出ないが、ここから考えるに、その店は特定の条件を満たしている者のみが入店を許されると考えるべきじゃないのか」
「何故思うのですか?」
「何、俺には契約精霊がいるし、こっそり派遣しておいたテツはフェーロがいるからな」
「そうですか。テツ先輩を派遣したんですか」
テツ先輩――阿羅々木徹也――は生徒会メンバーの一人だ。役職は会計。何でも会長に無理やりスカウトされたとか……。自身の生徒会入りも拒否権などなかったので、いくらあちらが先輩とはいえひそかに同情しているのだ。
閑話休題。
「まあな。もちろんテツにもあの店は確認できなかった。それでだ、」
会長はそこで一度言葉を切った。そして、おそらく昨日から聞きたかったであろう質問をしてきた。
「ついに如月も精霊と契約したのか」
最初から予想していた質問だ。今日はこのために来たも同然なのだから。
「ええ。私ととても相性の良い属性の精霊です。あの時、私を呼んでいるような気がしていたのでもしかしたらと思っていたのですが……」
「そうか。名は何と言う」
「ブローヴォ、それが私の精霊の名です。出てきていいよ、ブローヴォ」
そのとき、窓は閉まっているはずなのに、生徒会室に一陣の風が吹いた。
またしても投稿するのを忘れてた。
どうも、なんか最近有言不実行な気がするマチャピンですがなんとか風音さんの誕生日に投稿することができました。
初出キャラが数人いますが、今後しばらくはこの人たち出てこないと思いますのであまり気にしないでください。
最後に感想お待ちしています。おもに誤字報告とか誤字報告とか誤字報告とか。