番外11話「ゆきちゃんのお正月」
これは友紀がアイリスと契約するおよそ四ヵ月ほど前の出来事である。
正月というものはいいものだ。
この季節がやってくるたびに、俺はそう思う。
何ってたって、たとえ見知らぬ人物であってもそれが親戚でさえあればにこにこしているだけで簡単にお金が入る。
そんな儲け話の転がっているこの季節は、基本的に年中金欠の学生にはありがたいのである。
もっとも俺のクラスの中には、親に全てを回収されるという不運なものたちも少なからずいる。
だが、俺の家はそう言ったケチくさいルールはない。
そう、そんなルール“は”ないのだ。
だが、俺たちにはお年玉を獲得するために毎年課せられるイベントがある。
まあ正月だし、少し浮かれ気分なのもわからなくもない。でもだからといってさ、流石にこれはどうよ?
「うん。やっぱり私の娘たちだわ。成実ちゃんもさわやかな感じのする美少女にまとまったし、友紀ちゃんについてはもう言わずもがなよね」
そう言って母がにこやかな顔で手にしているカメラのシャッターを押す。
現在の時刻は午前五時をまわった頃合いだ。
当然辺りはまだ闇に閉ざされており、視界は不明瞭。
そんな中で俺たちは神社に来ていた。それも男の俺も含めて全員振り袖姿で。
「さあ、急がないと日が上っちゃうわよ」
そんな感じでせかす母はいつにもまして楽しそうだったりする。
今は手にした缶ビールをあおりながら日の出を今か今かと楽しみにしている。
ちなみにこれは昨日の夜からカウントして7本目。一体どれほどの量を飲むのだろうか? まあ、いつものことだが。
「いや、急ぐも何も俺たちずっとここにいるわけだし、急がなくてもいいんじゃないか?」
今俺たちが行っているのは二年参りだ。
でもさ、確か二年参りって大晦日の深夜零時を境に前後にお参りすることから、2年にまたがってするためそう呼ばれてるんだよね。
でも俺たちは昨日の7時ぐらいからずっとこの神社にいる。
しかもはたしてこれをお参りというのだろうか?
そして正確に言うと振るそでを着ていたのももはや昨日のことである。
今俺の着ている格好。それは世間一般的に巫女服と呼ばれるあれである。
そんな服を着て俺たちは今破魔矢を売っている。
そう、これが俺たちに課せられた使命なのだ。
とはいっても、もう毎年のことなので慣れたものだ。
例年どうり仕事をこなして、お金を稼ぐとしますか。
そして例年どうりに破魔矢を買いに来た阿倍をはじめとしたクラスの連中に写真を撮られたあげく、男女間で謎の争奪戦が繰り広げられるという事態に遭遇することとなるのだが、それはまた別のお話。
皆さま、あけましておめでとうございます。
ほかの更新分を先に読んだ方には少しくどいかもしれませんね。
しかし、私が皆様の読む順番は操れません。
致し方のないことと、なにとぞご理解ください。
さて、今回のお話は全く物語の進展しないただの番外編となっています。
一昨年(2011年)のクリスマスのときとまったく一緒です。ただ単に作者が適当に妄想した産物です。
あまり気にしないでください。
さて、次回の更新はいつかはわかりませんが、おそらく2月12日には何かあげます。
俺望かこっちかのどっちかは更新します。
それではみなさん、また会う時までしばしの別れと行きましょうか。