番外1話「友紀ちゃんのクリスマス」
これはとある町のとある家での出来事。
「お姉ちゃん、朝だよ早く起きて。はーやーくー!」
やや肌寒い気温の中、最初に聞こえたのはそんな言葉だった。否、その前にノック音が聞こえたから最初に聞こえたわけではないが、言葉として認識したのはそれが最初だった。
もっと寝ていたいといった衝動をこらえながら目を開けるとそこには、一人の少女が……といっても妹なんだが。
「……いつも勝手に入ってくるなと言っているはずだが?」
おかしい。昨夜きちんと鍵をかけたはずなのに。どうやって入ってきたというのだ?
「だって今日はあのクリスマスなんだよ!」
困惑している俺と対照的に成実のテンションは高い。まあ、入ってきた本人が侵入経路についてあれこれ考えるわけないか。
「あのって何だよ」
とりあえず、聞き返してみる。嫌な予感しかしないのだが。
「あのって、その、あれだよ」
成実はなかなか答えを言おうとはしない。しかし、答えに窮しているというよりはむしろこちらに思い出させるのを楽しんでいるといった表情だった。
「だからあれってなんだよ」
ためしにもう一度聞いてみる。
「お姉ちゃんが、あの服を着る日」
結果、予想通りもっとも思い出したくない思いでも一幕が返答された。
「……もう絶対に着ないと去年誓ったはずだが」
確かあの服は昨年こっそりと処分しておいたはず。まさかあの母さんでのごみを回収するなんてことはしない。……はず。うん、しないでほしい。
「え? でもお母さん昨日押し入れから取り出してたよ。何でも万が一のために予備まで買っておいてよかったとか言いながら」
「俺は何も聞いていない、俺は何も聞いていない、俺は何も聞いていないんだぁー!」
俺は逃げ出した。何、捕まらなければ問題ない。しかし、そこまでは頭が回らなかった。母さんはどこまで俺にその服を着せたいんだ。
「お姉ちゃん、現実逃避はやめなよ」
「そうだぞ、諦めろ」
現実逃避に対する批判は2方向からやってきた。2方向?
「俺は絶対に、着ないんだー! つうか、何故に阿倍、お前がいる?」
走るスピードは緩めず、部屋から飛び出し俺は叫ぶ。
そのとき唐突に何かにぶつかった。
「それは私が呼んだからよ」
しかもその何かは、ご丁寧にも阿倍がここにいる理由にも答えてくれた。
「さ、早く着替えちゃいましょう♪」
さらにその何か――――母さんは笑顔で俺の前に一着の服を差し出してきた。
「いやだ、離せー! え? これよりももっとかわいくて、露出度も高いのもあるって? わ、わかった。これでいいから。むしろこれを着させてください。お願いします」
その後、結局もう一着も着させられてしまうのであった。
完全にこれの投稿のこと忘れてました。
こんな時間に投稿してすいません
ちなみに時系列的に言うと物語開始以前のクリスマスです