表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/60

暗闇の光

 気がつくと、わたしは真っ暗などこかを漂っていた。体に力が入らない。

 目を開けても閉じても暗い。ここは──コランタンが、キネロと一体化したときに来た場所。


 きっと今頃、あの男は死んでいるだろう。それどころか、わたしは大量虐殺をしているかもしれない。せっかく戻ってきたのに。こんなところでおしまいなのか。


 いや、まだ諦めたくない。


 まだこの島に生きている人がいるかもしれない。

 だったら、止めなくちゃ!


 最後くらい醜く足掻いてからがいい。希望を絶やしちゃだめだ。諦めるな、わたし!


 力を振り絞って、わたしは手を握りしめた。


 そのとき。


 じんわり胸が温かくなり、か細く光った。


 今にも消えてしまいそうな光は、血流に乗って全身に広がり、動かない体をほぐしていく。

 もうこの場所は真っ暗闇ではない。心臓の鼓動に合わせて点滅し、わたしが金色に光っている。


 すると、遠くで呼応するように青色の光が見えた。


 ゆっくりゆっくり点滅し、ゆっくりゆっくりこちらへと近づいてくる。


 手を伸ばせば届きそうな距離に来たその人は、わたしと同じ金髪をしていた。


「初めまして。君がセレーナだね 」


 優しい優しいその声は、先ほどの叫びとよく似ていた。


「あなたが、コランタン」


 少年は困ったようなそぶりを見せて言った。


「よしてくれよ。僕はもう、その名前を名乗る資格なんてないさ」


 遠い遠いどこかを見て、少年は続けた。


「僕のことはリュシーから聞いたよね。──あのとき、僕は諦めてしまったんだよ」

「何を?」


 少年は、大きなため息をついた。


「誰も、傷つかない世界を。それがキネロの入り込む隙を与えたんだ。数百年一緒にいたから分かったよ。あいつは、魔力そのものだ」

「どういうこと?」

「数百年前の島は魔力であふれていた。でも、リュシーのおかげでそれがなくなって、キネロは一度、死んだ。そして、君のように転生したんだよ。人間じゃなくて虫だったけどね。どうやらキネロは魔力の代わりに、宿主と同じ種族の生きものを殺すことで力を得るみたいなんだ」


 なるほど……? 分かったような、分からないような。

 そんなわたしを察したのか、少年は苦笑いをした。


「理解できないよね。そもそも、なぜキネロというものがいるのか。転生の基準も分からない。君やキネロ以外に、転生した例はいないから」


 少年は自分の胸を指した。


「正直ね、僕はこのままでもいいと思っていたんだ。キネロが何をしたって僕には関係ない。好きにすればいいさって。──だけどキネロは、君やリュシーを殺してしまった 」


 ん? リュシーさんを殺したのは知っている。けれど、わたしまで?

 詳しく聞こうと思ったけれど、また体が動かなくなった。


「そろそろ時間だね。でも、これだけは話させて」


 少年は自分を嘲笑った。


「君はリュシーが書いた本で僕のことを知った。だから僕のことを聖人君子とでも思っているかもしれない。だけど、僕は君みたいな眩しい正義の光じゃないよ。自分の感情も制御できない子ども。……時間はかかったけれど、そろそろ成長するときだ」


 少年はわたしの手を優しくとり、微笑んだ。


「大丈夫。安心して。君は今日、誰も殺してはいないよ。ジェラールが助けてくれた」


 そう言ったとき。強烈な緑色の光が見えた。闇を呑み込み、こちらに迫ってきている。


「これはリナのものだね。リュシーにそっくり。強い意志のある光だ」


 少年はわたしの手を引き、光の方へ誘った。


「今まで迷惑をかけてごめんね。もう大丈夫。お日様の下で笑っている方が、君にはよく似合うよ。ほら、行ってらっしゃい」


 ついに光がわたしたちを呑み込み、眩しくて何も見えなくなった。


 温かい両手も、いつしか離れていってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ