表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
線路は続くよ異世界に!  作者: とくさ
魔法の森編
22/60

昔々、あるところに

 昔々、まだ島に人が住んでいなかった頃。

 この島は、魔力で満ちていた。

 鳥が歌い、花が咲き乱れる、正に楽園のような場所だったわ。

 人間が島に住むようになってからもしばらく、人と自然は共存することができていたのよ。

 人は生活のために魔法を使う。自然は増えるために魔力を蓄える。

 そうして、平和な日々が続いていたの。

 誰もが、こんな生活が明日も待っていると、思っていた。


 しかし。


 楽園は、たった二人の子どもによって崩壊した。


 子どもたちの名は、コランタンとリュシー。


 これは、ある二人の子どもが、世界を変えてしまう物語。




「コランターン!あっそびっましょー! 」

 僕が本を読んでいると、いつものように外から元気な声が聞こえてきた。

「ちょっと待ってー! あと少しだからー! 」

 僕も負けじと言い返す。

「そう言って、レディーを二時間待たせたのはどこのコランタンかしらー! 」

「……わかったよ今行くから! 」

 読みかけの本を閉じて、僕は外に飛びだした。

 声の主は、呆れ顔で僕を待っていた。

「もう! コランタンったら、休みの日になると勉強ばっかりで、よく飽きないわね」

「父さんに言われてるから仕方なくだって。リュシーこそ、たまにはお家でゆっくりしてみたら? 本を読むのも楽しいよ」

 短く切った黒髪を振り嫌がるリュシーは、僕の手を取って日向へと引っ張り出した。

「わたし、お家にいるのは大っきらいなの! こうしてコランタンとかけっこしてるほうが好き! 」

「フフフッ。僕も、リュシーとなら外に出るのもいいかも」

 僕の少し長い金髪が、風に乗ってゆれた。

「ホント? じゃあ、今日もあのリンゴの木まで競争ね! 」

「もー。そう言っていっつもリュシーが勝ってるじゃん! 」

 口ではこう言ってしまうけれど、遊びに誘ってくれることは楽しみなんだ。僕はリュシーの横に並んだ。

「じゃあ行くよ? 位置についてー! 」

「よぉーい? 」

「ドン! 」

 僕とリュシーは走り出した。コースはいつもと同じだ。坂を下り、草原にあるリンゴの木が生えた丘を目指す。商店街に敷かれた石畳が軽やかな音を立てた。

 足の速いリュシーは、あっという間に僕と離れていってしまった。

 ……ずっと、こんな暮らしが続けばいいのに。

 遠ざかるリュシーの背中を追いかけながら、僕は柄にもなく神様に祈った。

 僕の両親は、島の東にあるこの街で一番の魔法道具店を営んでいる。

 最近、両親の会話は「異民族が攻めてくる」という噂で持ちきりだ。

 西にある街が、農業や交易で潤ったここを狙っているとか、自衛するための武器として魔法道具の需要が高まっているとか、そんな話ばかり。

 それにお父さんは最近、神様からお言葉を頂いたと言い張っている。

 僕たちは、神様と亡くなった家族に守られてここまで栄えることができた。死んで神様の下に行ったときに役割を全うできたら、また人間として生まれ変わることができる。でも、生きている間に神様の言葉に従うことで、死んでもすぐに人間に生まれ変わることができる。

 ……ざっくり言うとこんな感じの「教え」を、あちこちに広げようとしていた。

 神は命じた。攻めてくる敵は排除せよ。祖先からの財を守れ。栄えよ。

 全ては、唯一神リザーヌ様のために。

 なんてバカらしいのだろう。そんな神様がいるなら、外敵くらいとっくのとうに破滅させているはずだ。祖先が僕たちを見守っているみたいなことは、街のおじいちゃんたちから聞いたことがあるけれど、お父さんが頂いたという「神様の言葉」は、僕たちに都合が良すぎる。

 だけど……西の街から人が攻めてくる話は、信じたくないけれど、信じた方がいい気もしてくる。

 もし、もしもその噂が本当だったらと思うと……考えただけで、僕は怖くなった。

 走りながら、僕は唯一神リザーヌ様とやらに願った。

 せめて、今だけはただ遊んでいたい、と。

「おーい、コランターン! 早くリンゴ食べようよ! 」

 リュシーが、大好物のリンゴを二つ持って待っている。

 先に食べちゃえばいいのに、僕が来るまでずっと待っている、優しいリュシー。

 リュシー、もしも噂が本当だったら。

 そのときは、僕がリュシーを守るよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ