城外にて
籠城戦になるが、門外でイーヒスト軍を食い止める必要もある。民衆を城に避難させ、わたしたちは城壁の外で隊列を組んだ。父上と母上も城にいる。
東西にある門を守るように軍が配置されている中、わたしとアルベールは一番敵から遠い西門にいた。姫であるわたしは本来城にいるべきなのだが、城内にいては先ほど発破をかけた兵士たちに示しがつかない。
「姫様。本当に、私たちと戦うつもりなのですか」
アルベールがまた聞いてきた。
「当たり前よ。何度も言っている通り、わたしはここにいてみんなを鼓舞するのが仕事なの。それに……」
わたしはアルベールに一歩近づいた。
「わたし、死ぬときはアルベールと一緒がいいの」
「ひっ、姫様?」
アルベールの声が上ずる。こっちまで顔が赤くなってきた気がした。
「……もう。そういう意味じゃないってば。アルベールはわたしの剣でしょ? だったらわたしも、側にいたいだけ」
「そう、なんですか? 」
「うん。わたし、アルベールの側から離れない」
「……僕も」
「えっ? 」
「僕も、命ある限りセレーナ様をお支えしますから」
えっ? ……えっ?
いや、何考えてんだわたし! 騎士としてだから! 家臣として、支えてくれるって意味だから!
横を向いてしまったアルベールの顔は耳まで真っ赤になっている。
「ほら、これで恥ずかしくないでしょう! 姫様はお一人ではありません。私のことも道連れにしてください」
「……そうね。ありがとう」
アルベールは優しい。だからこそ、わたしを置いて死んでいってしまいそうだ。怖い。
「ちゃんと二人で、生き残りましょう」
アルベールに言った、そのとき。
「敵襲ー!」
「えっ、もう?」
目を凝らすと、確かにものすごいスピードで物影が近づいてきているのが見えた。しかもかなりの数だ。
先ほどから吹いていた向かい風が強くなり、敵軍の旗がたなびく。
「……どういうこと? 敵軍は東にいるはずなのに」
アルベールは望遠鏡を取り出し、敵軍と思われるものを見た。
「しかし、間違いない。若さからみて、あの軍の先頭にいるのはイーヒストの皇太子です。フードを被っていなかったら、茶色い髪が目立って分かりやすいのですが」
まさか、こっちが敵の本隊? ……だとしたらまずい。東から敵が来ることを想定していたから、西にはあまり人員を置いていない。この兵力差、一瞬でペチャンコにされる。
どうしようか相談しようと思い、わたしはアルベールの方を向いた。
望遠鏡で敵軍を見ていたアルベールは、なにかショックを受けて硬直している。
「……アルベール? ねぇ、アルベール! なにか見たの?」
望遠鏡を下げたアルベールは、弱々しい声でこう呟いた。
「──軍隊長? 」
嘘、軍隊長が?
急いでわたしはアルベールの手から望遠鏡を取り、物影を見た。
皇太子の側に、追い風を受けるイーヒストの国旗を掲げた軍隊長がいた。




