表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

あーかい部! 65話 怖がり

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。



3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!


趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!

同じく1年、青野あさぎ!


面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!


独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河(しろひさすみか)



そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。




「……お、ハエトリグモ……だったか?」




ひいろは1匹のクモと邂逅した。




「ええっと、朝グモは殺したら不味いんだよな。……今ってどうなんだ?」




時計を見ると現在の時刻は3時半よりは少し早いあたりを指していた。




「殺すのも後味が悪いし、逃してやるか。」




ひいろが立ち上がると、小さなクモは小刻みにジャンプして部屋の隅っこへと向かって行った。




「ああ……やっぱり逃げるよな。このまま外に誘導するか、捕まえられればいいんだが。」




ジリジリとクモを部室の隅へと誘導していると、




「……?」




ほんのり冷たい風がひいろの髪をなで通り抜けていった感触があった。




「……気のせいか。クモは




部室を見回すと、もうクモの姿は無かった。




「……いないか。ドアを開けておいたし、うまく外に逃げてくれているといいな。」




ひいろは開けっぱなしのドアを一瞥(いちべつ)して椅子に座った。




「あれ?ドアが開いてる……。」




部室の外から、開いたままの部室のドアに反応するあさぎの声が聞こえてきた。




「開けっぱなしだとけっこう筒抜けなんだな……。」


「ひいろ!もう来てたんだ。換気?」


「まあ、そんな所だ。……ところで、その『手』は?」




あさぎの両手は、まるでおにぎりでも握っているかのように何かを包み込んでいるようだった。




「これ?捕まえた。」


「『捕まえた』……?」


「可愛いんだよ?」




あさぎがゆっくり手を開くと、中にいたのはさっき逃そうとした小さなクモだった。




「戻って来ちゃったか……。」


「戻る?」


「部室のドアを開けておいたのはこのクモを逃がすためだったんだが……。」


「なんか、悪いことしちゃったね……。戻してく




あさぎが部室の外に身体を向けると、小さなクモはあさぎの手のひらから元気よく飛び出した。





「またか……。」


「ごめんごめん、また捕まえるからさ。」




小さなクモはまた小刻みに跳ねて、いつの間にか部室の隅っこにいた。




「すばしっこいなぁ……。」


「あのクモ、あそこが好きなのか?」


「そうなの?」


「ああ、さっきもあんな感じで隅っこに一目散だ。」


「何か好きなものでもあるのかも……風?」




あさぎが自分の襟足を撫でた。




「ドア開けっぱなしだからな。……まあ、いつか出て行くか。」


「気長に待とっか。」




ひいろとあさぎは席について談笑の体制に入った。




「あのクモが可愛い、ねえ……。」


「可愛くない?」


「可愛くは……ないな。」


「そっかぁ……。」


「まあ、見た目はともかく仕草とかは愛嬌ある方なんじゃないか?」


「さっすがひいろ!」




目の前で手をパンと叩くあさぎの襟足がかすかに靡いた。




「わかってるね♪」


「……あさぎの座ってる方、風来るのか?」


「え?」


「いや、なんだかさっきからちょっとだが襟足がゆらゆらと……。」


「ドアに近いからじゃない?」


「そんなもんか。」


「それより、ひいろも……お、登ってきた。」




気がつくとクモが机の上でヨチヨチと歩いては留まり、コシコシと脚で頭を撫でていた。




「毛づくろいっぽいこともするんだな。」


「なんか見られて照れてるみたいだよね。」


「このサイズだから見られる感はあるよな……。」


「大きくなったらそれこそ…………、っ!?」


「……あ、『スパイダーパニッシュ』っていう映画があるみたいだぞ。戦車くらいの大きさのクモが群れて街に侵攻してくるみたいだな。」


「おお〜!」




ひいろのスマホの画面に食いついたあさぎが前のめりになると、それに驚いてクモが部室の外まで小刻みに跳ねて行った。




「まあ現実のクモはあんなもんか……。」


「いきものってなんであんなに臆病なんだろうね。」


「そりゃ、危険に敏感な方が生存率が上がるからだろう。」


「でもクモって追いかける側でしょ?」


「体格差が無ければな。」


「カマキリはネコとか車にシャーってやるよね?」


「やってるなぁ……。」


「でもカマキリは生き延びてるよね?」


「警戒心の薄いドードーは絶滅したし、カカポは絶滅がもうすぐそこってところでまで来てるけどな。」


「くぅ……、」


「B級映画だって、軽率なヤツから食べられてないか?」


「確かに……!?そう考えると、怖がりも悪いことじゃないのかぁ……。」


「そういうことだ。」


「…………じゃあ、ちょっと怖い話してもいい?」


「な、なんだ急に……。」


「……、」




あさぎが無言で指差した先には、さっきのクモより体格も、スピードも何倍もある、黒光りする『恐怖』があった……。






あーかい部!(4)




ひいろ:投稿完了だ


あさぎ:ああもう最悪……


白ちゃん:何があったのよ


ひいろ:口にするのも恐ろしい……


あさぎ:私だって言うの嫌です


白ちゃん:わかったわよ、読んでくるわね?




白ちゃん:は……?


きはだ:こいつぁ"グレートだぜ“の〜〜「G」ィ〜〜!!


あさぎ:きはだも他人事(ひとごと)じゃないんだよ?


きはだ:え〜?だってもう2人で退治してくれたんでしょ〜?


ひいろ:してないが?

あさぎ:してないよ?


きはだ:は?

白ちゃん:は?


ひいろ:というわけで各々、明日は準備を怠るなよ?


あさぎ:帰るまでが遠足だからね


白ちゃん:待て待て待て待て待て待て待て待て


きはだ:もうダメだ……終わりだ……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ