お仕事見学、再び
誘拐されたあの日から、イクスはリーアのそばを離れない。
買い物や食事はもちろん、湯浴みのときも、浴室の外で待っているし、リーアが何をするにも、まるで監視でもしているみたいに、目を離さない。
ものすごーく、心配性になってしまった。
まあ、イクスがずっとそばにいてくれるのは嬉しいからいいのだけれど。
そんなわけで、当然、リーアを一人にしてイクスが仕事に出かけるはずもないわけで。
「リー。仕事を請けに闇ギルド行くから、支度して」
イクスが出かけないと行けないときは、リーアも一緒だ。
「あ、この間買った服は駄目だよ」
この間買った服、というのは、この街の民族衣装で、結構上半身の露出度が高いものだ。
イクスが買ってくれたのに、着るなというのもおかしな話だと思うんだけど、あの格好はリーアも結構恥ずかしいので、着ないのは別に構わない。
足を出すのは、別に抵抗はない。
貴族のお嬢様なんかは、足を徹底して隠すみたいだし、平民でも、あまり足を出すのはよろしくないとされている。
でも、リーアとしては、所詮「足くらい」なのだ。
それより、上半身のほうが恥ずかしい。
だって、リーアはまだまだ発育途上で、胸も大きくないし(今後も大きくなるかはわからないけど)、お腹も少しポコンとしてる。
つまり、幼児体型なのだ。
毎朝、鍛錬しているから、腹筋はついているし、腕にもそこそこ筋肉はついている。
でも、食事を終えると、お腹がポコンとなるのだ。
すごく、恥ずかしい。
だから、胸元やお腹のあたりが露出しているものは、あまり着たくない。
(でも、イクスさんはすごく喜んでたよね)
リーアが民族衣装を着たときのことを思い出す。
腰やお腹のあたりを、ものすごくサワサワされた。
何かのスイッチが入ったみたいで、宿に戻ったらベッドに連れ込まれたし。
それはともかく。
リーアは言われた通りに、闇ギルドに行く準備をした。
黒っぽい服を着て、ローブのフードをしっかり被る。
このままだと結構暑いので、ちゃんと魔法で身体に冷気を纏う。
闇ギルドまでは手を繋いでいくのかな、と思っていたら、横抱きにされてしまった。
横抱きのまま、この街の闇ギルドへ向かう。
イクスはとても背が高いので、視線が高くなるのは少し楽しいけど、恥ずかしい。でも嬉しい。
複雑な乙女心なのだ。
闇ギルドに行くと、受付らしい人が少し目を瞠ったけれど、すぐに普通の顔に戻った。
こういうところ、すごく闇ギルドらしい。
「今夜中に終わるような仕事あるー?」
「シュバルツ様に指名依頼が来ています。期日の指定はないですが、早ければ早いほどいいと」
「ふぅん。内容は?」
チラッとリーアを見て、それからイクスを見た後、どうやらリーアに聞かせるつもりだとわかったみたいで、そのまま依頼内容を話しだした。
今回の仕事は、とある闇オークション団体の殲滅。
依頼主からみて、ライバル関係にあるらしい。
「ちょうど今夜、オークションが開かれます。出品されるものと客については放置でいいと。団体の頭からつま先まで潰してほしいそうです」
「おっけー。今夜中に片付ける」
「ありがとうございます。こちら、闇オークションの場所と時間です。招待状は必要ですか?」
「いらなーい。じゃ、またねぇ」
潜入するのには、普通、招待状があった方がいい気がするけれど、イクスにはそんなものなくたって潜入できるから、必要ないのだろう。
もしかしたら、場所と時間すら必要なかったかもしれない。
実際、イクスはチラリと目を向けただけだったし。
その後、二人で軽く食事をして、早速闇オークションが行われる場所へ向かった。
リーアは、邪魔にならないように、会場の隅の席で気配を消す。
あ、ちなみに入り口で入場者のチェックをしていたボディガードらしきムキムキの人たちは、イクスが一瞬で始末した。
それから、イクスが淡々と主催者たちを始末していく様を、リーアはしっかり見ていた。
(やっぱり、仕事中のイクスさん、かっこいい)
会場にいた人たちをあっという間に始末すると、唯一息があった人に、アジトに連れて行かせて、今度はリーアを抱いたままで、アジトにいたすべての人を殲滅した。
この団体は、貴族がバックにいることもわかったので、その貴族の家に行って、ひっそり暗殺もした。
依頼達成の「証拠品」を持って、また闇ギルドに向かったのだけど、イクスは少しピリピリしている。
多分だけど、闇オークションの「商品」が、幼い子どもばかりだったからだと思う。
子供の人身売買なんて、よくある話だし、そこはイクスも気にしないと思ってたけど、どうやら、リーアが誘拐されたときの事を思い出したみたい。
なんの力もない幼い子どもが売りに出されればどうなるか。
落札者にもよるだろうけれど、まあ、よくも悪くも「おもちゃ」にされることはほぼほぼ間違いない。
才能があれば、イクスのように暗殺者の訓練を受けさせられるかもしれないし、幼いうちに洗脳することで、絶対に逆らわない従者を作り上げるかもしれないし、子供の「おもちゃ」にする場合もあるし、性奴隷にすることも結構多い。
イクスの話によれば、「壊してもいいもの」で、「壊れてもいいもの」らしい。
初めてその話を聞いたとき、趣味の悪さに吐き気がしたことを覚えている。
リーアがイクスの頭をそっと撫でると、少しだけイクスの殺気が収まった。
「確かに。依頼完了を確認しました。こちら、報酬でございます」
受け取った皮袋の中身を確認してから、イクスは無造作にボックスの中にしまった。
「バルさん。早く戻ろう?それで、一緒に寝よ?」
きゅっ、と首に抱きつくと、イクスの空気が柔らかくなって、横抱きにしているリーアを自分の身体に押し付けた。
「口直しに、リーを堪能してもいい?」
そっと囁かれて、ドキン、と胸が跳ねた。
この聞き方は、ずるい。
リーアが真っ赤になったのを確認すると、イクスは機嫌を直したらしく、鼻歌を歌いながら宿へと戻った。




