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新たな寝床探し

 岩山の麓に着く頃には太陽が直上に来ていた。自転周期が20時間なので、正午と言っても少し早い時間だ。

 この辺、惑星ごとに違うのは面倒だな。といって、1時間を50分にして24時間を維持するというのもややこしい。

 4時に日の出、10時に正午と考えるしかない。まあ、朝が早かった分、10時に昼食となってもそこまで違和感はないか。


 ケルンに周辺を見回ってもらいつつ、俺は昼飯の準備をする。途中で採取した木の実を調理してみる事にした。

 野イチゴはなかったが、小さい柿の様な果物が木になっているのを採ってきている。オレンジ色の皮に包まれた果肉は、多少熟し始めている気配。

 少し切って口にすると、やはり渋い。このままでは食べられそうにないので加工する。


 装備品に混ぜておいた高濃度アルコールを取り出し、柿に切れ目を入れてそこへと垂らす。そして加熱用魔導具で少し温めてやれば、タンニンが変質して渋みが消える。

 これを少し厚みのある葉で包み、軽く火を通す。葉のエグみが少し消えて、ミニ柿の甘さと合わさってサッパリとしたサラダ感覚で食べてみる。

 肉や乾パンだけだとビタミン不足になるからな。


 トカゲ肉が思ったより臭みがなかったので、少し厚めに切ってステーキ風に調理した。味付けが塩と香草なのは変えようもないが、ミニ柿で甘めのソースを作ると、サラダと同じ風味になるので止めておいた。

 前世の感覚だと毒の有無も分からないものを食べるというのは度胸がいるが、魔導具で治療できると思うと冒険もできてしまう。


「後はウリ科っぽい実だな」


 少し太めのキュウリっぽい実をスライスして火を通す。キュウリほどの青臭さはないが、味もあまりないので、単品の塩焼きだとちょっと弱い。

 なのでトカゲの肉を焼いて出た脂を絡めて風味を移してみた。ホクホクとした食感は、肉とは違うので箸休め程度にはなるだろう。


「相変わらず、旨そうな匂いさせてるな」

「ありあわせの創作料理だがな。それより、周辺はどうだった?」

「食べながら話すよ、腹減った」


 見回りから帰ってきたケルンと共に昼飯を食べながら、報告を聞くことにした。




 岩山は一枚岩というよりは、複数の岩が重なり合って固まっている感じだった。直径が800mほどで標高は300mくらい。岩同士には隙間もあるので、ロッククライミングの様に登る事はできる。

 ただ草木も生えていないハゲ山なので、登ってもメリットはなさそうだった。


「寝床にできそうな隙間はあったか?」

「まだ全周囲を見た訳じゃないが、幾つか洞窟っぽい隙間はあったな」


 1人で深入りするなと伝えていたので、中までは確認していないそうだ。昼食を終えたらさっさと調査して、眠れそうな場所を確保しよう。


「生き物は?」

「岩山の隙間から飛び出していく鳥っぽいのはいたな。それ以外は特に見かけていない」


 外から見ただけだけどなと注釈をつけつつケルンが答える。中に入っていけば、そこに住む生き物がいる可能性もあるだろう。

 食事を終えたら探索再開だ。




「物足りない」

「食材の確保ができない間は、節約しないといけないからな」

「トカゲを狩りに行くか!」

「寝床を確保してからな」


 食事を終えた俺達は、岩山の隙間の洞窟になっている箇所へと入っていく。入り口付近は隙間からの木漏れ日で、それなりに見通しがきいたが、奥に進むにつれて見えなくなってくる。

 頭にセットした魔灯を使って周囲を照らす様にした。青白い光はLED電灯を思わせる。


 道は当然真っ直ぐではないので、岩に手を掛け、足元を確認しながら進んでいく。思っていたより奥が深い。単に岩が重なってできた洞窟ではなく、何らかの生物が拡張している可能性もあるな。


「何かいる」


 ケルンの声に歩みを止める。魔力感知してみるが、特に引っかかるものはない。ただの生物なのだろう。


「調べてくれるか?」

「おう」


 万一に備えて術式も準備しておく。命の危険があれば、マイナス評価にこだわっている場合ではないからな。

 先行するケルンが慎重に歩を進めて、徐々に姿が見えなくなっていく。俺も少し遅れてついていった。




 ガツッという音が響き、俺は足音を忍ばせるのを止めて、急いでケルンに追いつく。と、俺の足元を複数の獣が通り過ぎていった。視覚強化もなく、魔灯の明かりのみでその姿はほとんど見えなかった。


「大丈夫か!?」

「おう、何とか2匹は仕留めた」


 ロッドを片手にしゃがみこんでいるケルンの側へと近づく。足元には丸っこい塊が2つ転がっていた。

 魔灯で照らされた姿は、哺乳類っぽい。短めの毛で覆われた30cmほどの獣。顔を見るとネズミかうさぎかという印象。ただ長めの耳が4本生えていた。


「草食系か雑食系か。肉食には見えないな」

「寝てたら耳を齧られるかもな」


 口を開けて確認すると、葉を噛み切る前歯とそれをすり潰す臼歯が並んでいた。獲物を仕留める犬歯などは見えないから、草食系だとは思う。


「ここで行き止まりか?」

「俺等が通れなさそうな小さな穴はあるけどな」


 この獣の巣穴だろうか。手は入りそうだが、中が見えない所に突っ込むには勇気がいる。無理に調べる事もないだろう。

 装備セットから設置用の魔灯ランタンを取り出して置いてみる。小部屋の範囲が照らし出された。


 直径5mほどのやや歪な円形の空間で、壁や天井は組み上がった岩肌が見える。すぐに崩れることはないだろうが、地震がきたらどうなるかわからない。

 脱出艇に積んであったテントはかなり頑丈ではあるものの、岩が降ってくるのを防いでくれるほどではないしな。


「テントを置けば寝ることはできそうだが……」

「すぐに崩れてくることはないだろ」


 そう言いながらロッドの先で、岩肌をコツコツとケルンが叩く。


「おい、止めろ。崩れたらどうするんだ!」

「大丈夫だって、それくらい分かってるって」


 肩をすくめてみせるケルンに頭が痛くなる。本能的な勘が鋭いのは認めるが、こうした構造物に対しても効くのかは怪しい。あくまで戦闘向きの勘のはずだ。

 ただまあ、多少小突いた程度で崩れないのは分かった。2週間で地震がくるとも思わないが、来ないとも言い切れない。地震大国で育った前世の記憶が慎重な判断を求めている。


 魔法で地質調査をすれば多少の安心感は得られるんだが。というか、身の安全と学校の評価を天秤にかけるってのもおかしい気がしてきた。

 魔法がダメだというなら、もっと不要な場所に降ろしてくれと文句を言いたい。


「という事で、僕の精神的安心の為に魔法を使う」

「そういうとこ、ホント臆病だなぁ」


 ケルンが呆れたように言ってくるが、命あっての物種だ。2度目の人生でそこまで生に執着はない気もするが、それでも無駄死にをしたい訳ではない。


 俺は音響ソナー魔法を使って、周辺の構造体を把握する。岩盤の強度や組まれ方、隙間の有無や上層にどれだけの岩が乗っているか。更には地下に向かって変な空洞やマグマ溜まりの様なモノがないかを探る。


「ふむ……一応は安全そうか」

「そりや良かった」


 俺も専門家ではないので、構造が分かった所で、本当に安全なのかは分からない。それでもすぐに崩れそうな隙間がなさそうな事が確認できれば安心もする。

 ついでに周辺の岩の材質も調べて、火山岩ではなさそうなのも確認した。少なくともこの周辺に火山はなさそうだ。


 一度魔法を使ってしまったら、無理に制限する必要もないと割り切って、ケルンが仕留めた獣の解体も魔法を使って行っていく。

 血抜きなど、周囲に肉食獣を呼び寄せる臭いを撒き散らさないように、風魔法で結界を作り、その中で解体。抜き取った血も水魔法で処理して、空間収納へとしまう。


「相変わらずの手際の良さ」

「サバイバルは初めてじゃないからな」


 ウルバーンに不時着した時も、周辺の動物を解体しながら生き延びていた。錬成で鶏肉にする事もできたが、生活に余裕が出てくると現地の味というのも気になったりしたのだ。

 そんな事を思い出しつつ、居住環境を整えていった。

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