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開拓船の故障具合

「う〜ん、マナタンクがダメか……」


 5日ほど空調を動かしてみた結果、変換機構は動いていてマナは生成されていたが、貯蓄量はほとんど増えていなかった。

 魔力から属性を抜いたマナの状態というのは、他の魔力に染まりやすいので、術式に使いやすい状態ではあるのだが、その分不安定ともなっている。

 バッテリー内のイオン化した原子みたいな状態に近い。


 そのため、魔力的に中性となるタンクへと閉じ込める必要があるのだが、その機密が破れると、どんどんマナが放出されてしまう。

 なのでマナタンクには、魔力を通さない金属でメッキ加工されている。それが歪みや経年劣化で剥がれてしまい、マナが漏れる様になってしまう。


「この金属がレアなんだよな……そういえば、ここで産出されてる希少金属もそうか」


 このウルバーン星は、鉱山惑星として開発された星で、定期的に帝国本星に向けて産出された希少金属を出荷していた。

 それを頂戴できれば修理に使えそうだが、上層部は帝国本星と繋がってる。そこに手を出すということは、帝国の最先端の兵装と事を構える事になる可能性があった。まともな装備を持っていない現状で相手をするのは馬鹿らしい。


 それよりも採掘場から自分で掘った方が確実そうだ。廃棄された採掘場でも少しは残っている可能性もあるしな。

 ベルゴとの悶着が片付いたら採掘場へ行ってみよう。

 何か掘るための道具とかあるかなと格納庫を調べていると、思わぬ装備が転がっていた。多少のメンテナンスは必要だが、古いながらもちゃんと動くのが確認できる。

 これは奥の手として使えそうだからと、空間収納に確保しておくことにした。




「むう、ここも修理が必要か」


 液体燃料から火の魔力を抽出する燃焼炉もかなり大きく穴が開いていて、まともに動きそうになかった。一番出力を得やすい火の魔力だけに、墜落時に無理をさせたのだろう。魔力過多で魔法陣が焼き切れ、暴走した痕跡があった。

 これはもう修理するよりも新しいのに載せ替えた方が早そうな感じだ。中層に良いのが転がってないかな。


 開拓船は数百年前に墜落したはずなので、技術レベルとしてはかなり前の代物。ただこの星の中層もあえて技術を進歩させないような政策がとられているので、マッチングさせる事もできるのではないかと考えている。

 規格などは当然、ズレがあるだろうがその辺は調整で何とかできるはず。ただ出力に大きな差があると、どこかで歪みが出てくる事になる。


 船の出力が大きければ、出力不足でそもそも船が動かないだろう。逆に中層の燃焼炉の出力が大きいと、変換用魔法陣に負荷が掛かって焼き切れるなんて可能性もある。

 中層のどの規模の燃焼炉を持ってくるかが大事になるだろう。そのためには中層の工場区画を詳しく調べる必要があるな。


 燃焼炉を運び出すとなると、俺の空間収納にはサイズ的に入らないので、トラックなどで運搬しなければならない。

 そうなると中層を制圧してからでないと無理か。かなり回り道を強いられる事になりそうだ。

 上層にケンカを売る前提なら、上層の持つ宇宙船を奪うのも考えるのだが、奴らの宇宙船は衛星軌道上にあるらしい。軌道エレベーターで繋がっているので、わざわざ地上に下ろす事がないのだ。


 産出された希少金属の運搬に便乗して宇宙そらへ上がるというのも一つの手ではあるが、そこに連れていけそうな人材はいないので、単身で乗り込むしかなかった。

 それはやはり無謀だろう。


 それに情報屋のおっさんとの約束で、宇宙に行きたいという子供を連れて行く可能性もあるしな。

 だから軌道エレベーターで宇宙で上がるというのはナシだ。


「急がば回れ……かね」


 千里の道も一歩から、やれることを着実に進めるしかない。結果、それが一番早く目的に到達できるだろう。




「ベルゴの様子は?」

「目立った動きはないな。この場所もバレた様子はない」


 引っ越した先のアジトへと帰還して、最新情報を仕入れる。ベルゴの幹部連中は拠点に集まって会合中。

 下っ端連中はスタルクのアジト探しに派手に動き出しているらしい。広範囲に多数の人数を動かしているので、動向を探るのは楽らしい。そして、多くの人がまだ探しているということは、アジトの場所がバレていない証左となりうる。


 それがフェイクでもう位置を特定されてるというのも、相手の方が人数的にも戦力的にも優勢な状況であえてそんなフェイクを行うとは考えにくいからな。


「スタルク側の対応は?」

「こっちの幹部連も拠点に集まって会議中だが、どうにもまとまりそうにない。相手の出方次第の待ちに入りそうだ」

「数で負けている以上、自分達から仕掛けた方がマシなんだけどね」


 受け身に回るというのは、相手が準備万端で攻めてくるって事になる。相手の足並みが揃う前に仕掛けたい所なんだが、幹部達にとっては自分の手駒を消費したくないってところだろう。


「スタルクのボスってどんな人なの?」

「ボスはなぁ……」


 スタルクは中層から追い出された人々の子供の世代が、元の生活を目指して集まったのが始まりらしい。

 ボスにあたる人物や幹部連中も情報屋と似た世代ということだ。中層での暮らしをおぼろげに覚えていて、それを取り戻したいという思いがある。


 ボス自身、7才頃に下町に落とされた。両親はその事に絶望して生きる気力をなくし、下町の生活に馴染めず長生きできなかった。それを見て、自分の力で中層を目指すと決意し、同じ志を持つ仲間を集めていく。

 本人もまた力をつけようと努力し、武の中心としてグループを引っ張っている。ただ背中で引っ張るタイプなので、全体的な計画などはずさんな部分があるらしい。


 それをフォローしているのが情報屋やその直属の上司幹部だが、どうしてもボスに近い武力派とは摩擦が大きい。

 今回のベルゴとの騒動についても、総力戦を行おうとするボス一派は、かなり積極的に仕掛けようとしている。


 一方で、その下の世代、20代後半の若手衆は、下町での生活しか知らない。下町で安定した勢力を築く事を重視している。

 この辺の一派は、俺を差し出してでもベルゴとの融和を計っている奴らだ。直接ベルゴとやりあう事が多く、その勢力の差を実感している世代でもある。そのため最悪、ベルゴの下部組織となることも画策しているらしい。


「結構ガタついてる感じだね」

「元々世代間ギャップはあったからなぁ。それが自分達からなのか、ベルゴからの工作なのか……」

「そんな状況で中層をひっくり返せるの?」

「そんな状況だからこそ、当初の目的に向かってまとめ直すんだよ」


 古参の方が上を見て、新参者が安定を求めていると。それでベルゴに対抗できるのか、ちょっと不安になってくるな。

 元々勢力として追い込まれている所だったから、内部も割れがちではあったのだろう。


「思っていた以上に時間がなかったか」

「いや、坊主が派手に動き過ぎなんだよ」

「ベルゴからは呼び出しがあったからだし……それとも大人しく向こうに雇われた方が良かった?」

「そりゃ困るがよ……」

「なるようになったってだけだね。早いか遅いかの差だよ」


 とはいえ、全体的に準備不足で行き当たりばったりになってるけど。


「そういや、下っ端ーズはどうしてる?」

「下っ端ーズ……ああ、坊主が構ってた連中か。奴らは若手世代でも俺等寄りで向上心がある方だったからな。とりあえず、銃の練習をさせてる」


 一応、若手衆の中で育てたい一派らしい。ただ色々と足りないトコがあるので、時間は掛かると。


「何か面倒だな。グループをまとめ上げるにも、状況打破するにも、一番てっとり早いのは、ボスを中心にベルゴとやり合って勝つか」

「簡単に言ってくれるなぁ」

「とりあえず、ボスと会わせてよ」

「本当はもっとすり合わせしときかったが、仕方ねえか」


 問題が色々と詰まりすぎて身動きが取れなくなりつつあるし、一気に物事を進めるしかないだろ。

 急がば回れ?

 そんな事、言ってられないな。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです [気になる点] 宇宙船の燃焼魔道具を作れるデカい生産魔道具って、自作出来ないのでしょうか?
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