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王国との国境線へ

 開拓星系の第3惑星で建築の手伝いをするうちに、伯爵を連れた子爵がやってきた。伯爵は開拓の進行度が早い第4惑星の衛星軌道上にあるステーションで開拓状況を管理する事になった。

 そして子爵へとシャルロッテを紹介すると、かなり驚いた様子で保護を引き受けてくれた。というかハイドフェルド侯爵からも探索、保護の指示が出ていたそうだ。それが権力争いに利用するためなのか、単に皇族として保護しようというのかまで分からないが、ヴェルグリード公爵に降嫁されるよりはマシだろう。


 シャルロッテはリリアに側仕えの職を勧めていたが、リリアはきっぱりと断り王国行きについてくるという。安全を考えても、栄達を考えても、シャルロッテの提案は魅力的なはずなんだけどな。

 ただ侯爵がどうなるか次第では、シャルロッテの側も安全とは言い難くなるので、自由に動ける状態を保つというのも身を守る事につながるかもしれない。


 子爵の商用船が開拓星系へやってくるまでの2か月では、戦況に大きな変化はなかった様子。2つほど王国の星系を掌握したと帝国ニュースで流れているが、リアルタイムかは分からない。

 なので戦況に動きがないと思っていても、実際は既に王国の反撃が始まってるという可能性もあったりはする。

 辺境は帝国でも最奥の位置にあるので、星系間通信でのニュースもタイムラグがあるのが現状だ。

 遷都が必要というのは、権力争いの種でなければ考えても良いとは思うな。


「ユーゴ兄、置いていこうなんて考えてないよね」

「リリアの索敵能力の高さは実感したからな。これから戦場に向かうならその力は必要だよ」


 俺の事を観察していたらしいリリアにそう告げると、リリアも納得したように頷いて満面の笑みを浮かべていた。




 辺境から公爵領や寄り子の領地をたどりながら国境線を目指す。ロガーティ子爵が用意してくれた手形で特に問題もなく進むことができている。

 一応、通信時は顔を誤魔化しながらの旅程だった。指名手配は残っているからな。


 到着した国境星系ではあるが、戦線が王国側に押し込んでいるので、戦争の気配はない。逆に戦線への輸送路となっているから景気が良くなっているくらいだという。

 戦況の情報も入ってきているが、王国の反抗は消極的で無理せず引いている感があった。

 国力の差もあるし各戦線で対抗するよりは、どこか守りやすい星系で待ち受けている可能性が高いだろう。


 皇帝軍を中心として、左翼に元第2皇子派、右翼に元第3皇子派が配されている様だ。突出地点を作らないように、足並みを揃えての進軍を続けているようだった。

 中央を進む皇帝軍が最も数が多く、距離的にも王国の首都星に近いが、下手に突出してしまうと挟撃を受ける可能性があるだろうし、皇帝軍としては一定の戦果を稼げれば地位を守る上でも問題はない。


 一方で逆転を狙う第2、第3皇子派としては、目立つ活躍をしてアピールを考えているだろうが、功を焦って先行するとリスクも高くなる。

 適度に足並みを揃えて進み、タイミングを図って首都星への一番乗りを狙っていくのが妥当なところだろう。


 しかし、戦争は相手がいる。帝国側の思惑通りに進むとは思えない。王国側から見ると、3軍に分かれての進軍に活路を見出すはずだ。

 連携を取りにくい地点で1軍へと戦力を集中、各個撃破を狙うのが常道となる。


 帝国は国境線から着実に支配領域を広げながらの進軍なので、補給線を絶って殲滅を図るような策は使いづらい。わざと隙を作って戦線を引き伸ばし、薄くなった補給線を狙う様な策が考えられるが、その辺は帝国側も警戒しているだろう。

 じりじりと領土を削られながらも、反転の一点を探る。そんな攻防が戦況から伺えた。




「侯爵の本陣はこの辺りまで進んでいるらしい」


 国境線から5つほど星系を支配した先に布陣していた。そこから先遣艦隊を派遣、占領域を増やして安定させてから本陣を移す。堅実な用兵を行っている。

 今の本陣は王国側のターミナルとなっていた星系の1つで、星系間移動の要所となっている星系だ。

 各設備が整えられていて、補給線が太く確保できている。反面、多くの星系からアクセスしやすい位置でもあるので、どの方面からも攻められるリスクはあった。

 周辺の星系は制圧下にあるが、どこかに伏兵艦隊がいてもおかしくはない。星系外の宇宙は広く、動いていない艦隊を見つけるのは至難。転移門1つで本陣へと攻められる位置に迫ってくる危険はある。


「ま、追いつく立場としては、周囲を警戒しながら慎重に進んでくれている方がありがたい」


 問題となるのは王国側の反攻のタイミングと場所だな。3軍の中央にある皇帝軍は狙いにくいので、左右のどちらかを狙ってくるはず。

 大侯爵家を主軸にしている元第2皇子派と、中伯爵家の連合である元第3皇子派。強弱で言えば、第3皇子派の方が弱くて攻めやすい。ただ右翼の第3皇子軍を破った所で、帝国軍全体としてはあまり揺るがない。

 逆にそちらに兵を割いたと見て、進軍ペースを上げて王都へ迫る事もできる。


 となると狙われるとすれば、第2皇子軍、侯爵が率いる軍の可能性が最も高い。

 帝国内でも第2勢力である派閥を撃破されれば、皇帝軍も危うく感じられるし、右翼の第3皇子派閥が好機とみて攻めに転じても第2皇子軍ほどのまとまりがないので、守りやすいはずだ。


 第2皇子軍の本陣がある星系は多くの星系に隣接していて狙いやすいが故に警戒もしている。攻勢を掛けるとするならば、次の星系へと本陣を移すタイミングが、分かりやすいが守りにくいだろう。


「なのでさっさと追いついて、攻めてくるポイントなどを絞り込んでおきたいところだな」

「この料理はなかなか美味え」

「ワイルドだけど素材の味が活かされてて」

「もう一工夫欲しい」


 戦況分析する傍らで、アイネ、デッド、リリアは国境星系のステーションで王国料理と銘打ったレストランの食事を論評していた。

 手は込んでいるが辛口一辺倒の帝国料理と違って、王国の料理はシンプルな味付けが多い様だ。塩で揉み込み、胡椒で仕上げた肉料理や、レモン系の果汁で酸味を効かせたサラダ。主食に位置するものは、ジャガイモの様なふかした芋を潰したマッシュポテト。

 小麦を練って生地にするといった手間がかからない料理となっていた。


「ソース類があまり発達してないのかな。スープも淡白な感じです」


 料理研究を進めているリリアはしっかりと吟味しながら食べて素材の良さとそれの活かし方を学んでいる。テッドはとりあえず食べて満足といった雰囲気。アイネには手抜き料理感が強いようだ。


「魔力補充が終わり次第移動するから、食料の補給なんかは早めに済ませておけよ」

「了解です」

「あっちの屋台も見てみようぜ」


 アイネがついていれば大丈夫だろうから、俺はもう少し情報を集めておくことにした。ウィザードとの契約が終わり、その後は音信不通。何回かメッセージは飛ばしたが返答はない。例のガス惑星に潜んでいたナニカの解析に集中しているだけだと信じたい。


 裏技的な情報収集ができないので、地道に足で情報を集めていく。帝国からの補給線としては、軍の輜重隊しちょうたいがメインではあるものの、民間の輸送船も商機とみて嗜好品などを売り込みに行っている。

 開戦から半年が過ぎようとしているので、前線の兵士へ帝国からの嗜好品は良く売れる事だろう。

 そうやって前線と行き来している民間船の人間から話を拾って、より詳しい戦況を分析していく。

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