表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/175

武器作成

 ひとまず修理するにしても、生産用魔道具を使ってパーツを作るには、まず何が必要なのかを分析する所からはじめなければならない。

 なのですぐに魔道具を使う状況ではない。


「分析できそうな人も探す所から始めなきゃだし、とりあえず生産用魔道具については作れる物から作っておこうか」


 情報屋と共に開拓船の格納庫へと移動する。そこへ生産用魔道具を設置する。大きさ的には2m四方と言ったところで、内部には複雑な術式の魔法陣が組み込まれている。

 それらを元に、素材を入れれば製品が作られる仕組みだ。


「基本的には作るものの素材を使うのが一番効率がいい」


 武器を作るなら鉄を集めて素材にして、剣などを作る感じだ。銃なども基本的には鉄などで作る。まあ、銃なんてのは弾の方が本体だから、そっちを用意する方が難しい。


 地球科学では火薬を詰めた弾丸を作っていく訳だが、この世界の場合の飛び道具は魔法だ。使用者の魔力を使って、術式を起動し、魔力で弾を作る。

 メジャーなのは火の術式だな。火の玉を撃ち出せば、殺傷能力が高い。その分、対抗する術式も多いので、戦う職に就く者は防弾ジャケットみたいなヤツの魔法版を着ていて、無力化されやすい。

 なのであえて属性の違う氷の弾丸や、衝撃で倒す事を狙って風の弾丸なども使われる。


 生産用魔道具で作れるのは30cm四方なので、1回で作れるのはハンドガンサイズだな。これに弾を生成する術式の魔法陣を刻み、使用者の魔力で撃ち出せる様にする。

 ただ撃つ度に魔力を吸い出されると、訓練していない者では数発が限度。それでは到底、戦闘には向かない。


 なので魔力を貯めるタンクをグリップに仕込み、使用者の魔力は起動のきっかけに使うだけ、弾を生み出すのはタンクの魔力を使う方法が一般的な仕様になっている。

 まあ、タンクに魔力を込めるのも最終的に人力なので、手分けして込めるか、時間をかけて込めるかしないといけないのだが。


 ソーラーパネルの様に太陽光から魔力を生み出したり、風力を魔力に変換したりという手法もあるので、中層などは人力というよりはそうした発魔施設の魔力を使うんだろうけど。

 基本的には電力の代わりに魔力を使ってる感じだな。

 自転車を漕いで発電するよりは、直接補充できる魔力の方が便利ではある。


「とりあえず一丁作ってみるか」


 格納庫に放置されていたパイプやネジといった予備部品を集めてきて魔道具にセット。魔力を込めていくと、徐々に制作が始まる。

 ただ一瞬で出来上がるなんで事はなく、必要なパーツを組み上げ、術式の魔法陣を刻み、魔力タンクを作成するにはそれなりの時間がかかる。


 そもそも魔道具を動かす魔力も、一般人なら何日もかけて充魔力する必要があるだろう。この辺、生まれた時から魔力量を増やすための訓練を課されてきたのはチートと言える。


「何か怪しい機械にかけられた事もあったなぁ」


 研究所での日々を思い出すと、遠い目になるのは仕方ない。魔力を使う訓練はもちろん、魔道具を使って強制的な魔力の絞り出しやら、変な薬品を飲まされたり、注入されたりして、常時乗り物酔いの様な吐き気やら平衡感覚を失う様な状態になったりした。

 お陰で魔力量自体は伸びたとは思うが、またやりたいかと問われれば、全力で逃げ出したい。

 この星に来てからの体を使った戦闘訓練の方が楽しんでやれた。


 とりあえず銃の方は丸一日くらい掛かりそうだ。過去に作った経験がなかったので、キャッシュの中に情報がなく、一から術式を構築していく事になる。

 魔道具に任せておけば、自動的に術式を組んでくれるので、魔力さえ注いでおけば放置で問題ない。


「という事で今日やれることはこんなもんかな」


 焼き切れた回路の分析なんかは、腰を据えて取り組まないとできないからな。子供達が騒ぎ出したら集中できないかもしれない。

 俺の持つ情報端末と開拓船へのリンクを繋いだので、調査自体は街の中でも続けられるので、しばらくは原因究明と修理が必要なパーツの選定などを進めていくしかないな。


「この船を知ってる人はどれくらいいるんです?」

「ワシが把握してるのはスタルクの幹部連中くらいだな。ベルゴにはバレてないはずだ」

「入るには方位磁石(コンパス)がいるんだよね?」

「ああ、これが鍵になっとる」


 頻繁に通ってると、バレる危険は高まるからな。生産用魔道具は現在、俺が認証を通さないと動かないから、奪われたとしても使うことはできない。

 認証プログラムをクラックされたら使う事もできるだろうが、この星のレベルなら不可能だろう。

 なので魔道具自体を奪われる危険は少ないが、船自体に価値を感じて抑えられて、近づけなくなると面倒になる。

 修理が終わるまでバレたくはなかった。


「通うとしても週一くらいに抑えるべきだろうね」

「そんなもんだろうな。一応、フェイクを用意はしとるが、ワシ等が目を付けられる可能性は否定できん」

「なら10丁分位を仕掛けておくかな」


 かなりの魔力を込めなきゃならないが、何とか足りるだろ。


「そんなにポンポン作って大丈夫か?」

「初級魔術の銃なんて多少の装備があれば防げる代物だからね。多分、中層の警備兵には効かないよ。下町を制圧するのには使えるだろうけど」

「なるほど……中層を攻略しようとするとどうすればいいんだ?」

「飛び道具に対しては、基本的に防御結界で止められると思った方が無難だよ。だから、近距離で白兵戦に持ち込み倒すしかないと思う。そのためにも、下っ端連中を鍛えとかないと駄目だね」


 攻撃魔法と防御魔法はイタチごっこで進化していくが、どうしても術者から離れていく攻撃魔法と、術者の周囲に展開される防御魔法では、防御魔法の方が強靭な場合が多い。

 なので、ある程度の装備が揃った部隊同士の戦闘となると、白兵戦での切り合いで決着を付ける事が多くなる。

 防御結界を剣で切り裂き、その内側で魔法を炸裂させる様な戦闘だ。星の戦争で光る剣でチャンバラするのと似たような戦いが繰り広げられる。


 銃主体で戦えるのは、対ベルゴ戦くらいだろう。もちろん、中層でも一般市民に対しては威嚇になると思うけど、戦うとなれば警備兵。接近戦を考えておかないといけない。

 当然、相手の銃器を無効化する防御結界も用意しないといけないだろう。


「魔道具を作るには素材も良いほうが当然強くなる……けど」

「そうだな、中層のゴミ捨て場から拾ってくるような素材は劣化品ばかりだろう」

「かといって、精錬にまで魔力を使ってる余裕はないな。下町で魔力持ちを探したいところだけど」

「そんなの居るのか?」

「さあ」


 俺の生まれた場所は特殊で、周りは魔力的に鍛えられた人しかいなかった。知識として一般人は魔道具を起動させる程度しか魔力を使わないため、魔力量は少ないままというのが常識。


「車の魔力はどうやって貯めてるの?」

「持ち回りだな。魔力を込めた次の日はどうしても頭が重くなるから、連日は無理だ」


 魔力を出しすぎると精神的な疲労感に襲われる。一晩寝た程度では取れないだろう。でもそこから更に絞り出すようにしていかないと、魔力量は増えていかない。

 魔道具に絞り出されると、気絶するなんてのは日常茶飯事だった。回復薬でもなければ丸一日寝込むなんてのもザラだ。

 でも下町で丸一日使い物にならなくなる人を出すなんて余裕は持てないだろうから、鍛えている人はいないだろう。


 かといって子供達を育てるというのも自分の経験から避けたい。前世の記憶があって何とか耐えられた。幼い精神のまま、何も考えられないほどの疲労感に落とされたら、トラウマを抱える事になるだろう。


 ソーラーパネルなど自然から魔力を吸収できる機器を作れたらいいんだが、そういう物ほど希少金属が必要になるので、素材を集められそうにない。


「開拓船の装置が使えるか?」


 長い年月をかけてだが、墜落するような大穴の空いた装甲を自動修復できる魔力を貯めてきた装置があるはずだ。

 それを転用できれば、銃器や防御結界を作るのに使えるし、発動用の魔力を貯める事もできるだろう。


「何かやるべきことがどんどん増えていくなぁ」


 アイネを蘇らせる為に宇宙を目指したいのに、なかなかスムーズにいきそうになかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ