35 ラーメン作り(前半)
さて、ラシュレー領に帰ってまいりまして、お父様とお母様にもしこたま怒られたわたくしは――ブリジットが二人のぶんも怒っていたはずですのに――ひとまず「厄災がまだ続くかも」という報告をいたしました。
お父様は難しい顔で「そうか」と呟きました。
「"黒獅子"が、ムギがすべてではないのか。……いいかい、レオノル。次に厄災が来ても、自分で殴りかかったりしてはいけないよ」
「そうよ、レオノル。あなたはラシュレー領を継ぐかもしれないの。他人に任せること、自分の身を守ることをおぼえなさい」
「ていうか、跡継ぎなら男児を産めばよいのでは? 育てる余力がないわけでもないでしょうに……」
「それは弟が欲しいって意味かな? どうだいルイーズ、そろそろ二人目を……」
「あらやだルシアンったらもう駄目よこんな昼間からレオノルが見てるわでも今夜はアナタの好きなあの服を用意しておくわねキャッ」
わたくしだけでなく、ブリジットとムギも半目で見ておりますけれども。
さておき、これでようやく、念願のラーメン作りに取り掛かれますわね。
……ところで、あの服ってどんな服ですの? いえやっぱり聞きたくないですわ。結構でございます。
ラーメン作りは、お屋敷のお庭に天幕を張ってやることになりました。
食材は王都市場で買い込んだもので、持ち帰るにあたって丸鶏や野菜の保存が問題だったのですけれど、そこはブリジットの魔法で凍らせて対応。
魔法、とても便利でございます。
「いやー、それにしても、あっついですわねぇ」
「そうですね、レオお嬢様。ムギのもふもふも、この気温では堪能できません」
天幕で日差しを遮っているとはいえ、夏の気温に加えて即席のかまどで薪を燃やしているわけですから、ファッキンホットでございます。
たまらずブリジットが魔法の杖を使って大きな氷を作り、天幕の隅において涼めるようにしてくださいましたけれど、それでも激アツですの。
なぜ外でやっているかというと、わたくしの、いわば子供の自由研究じみたおこないに厨房を使うわけにはいかないからですわ。それに……丸鶏とはいえ、けっこうな臭いが出るでしょうし。
地球の鶏とは違って、いろんなものを食べて育ってきたわけで、その臭みは野生のものに近いと考えたほうが良いでしょう。
「レオお嬢様、なにから始められますか?」
「まず丸鶏の処理からですの。とはいえ、見よう見まねですから、まずは一羽で試してみましょうか」
ゆっくりと流水で解凍した丸鶏を解体して――料理長ドニにやり方を教えていただき、四苦八苦しつつやりました――塩を振って、小一時間ほど氷の傍に置いて待ちます。
すると、表面に水が浮いてきますので、きちんとふき取ってから寸胴鍋の中へ。
臭み消しの野菜としてネギの青いところも入れます。品種はおそらく地球では西洋ネギやポロネギ、リーキと呼ばれるものに近いでしょう。生姜とニンニクもスライスして入れておきます。
「で、こちらを一旦沸騰させて……」
火については即席で組んだかまどが頼りです。火の強さを細かく調整できないので、鍋の方を動かして火力調整する必要がございますわね。
沸騰したら、浮いて来たアクや細かい肉片、油を丁寧に掬い、火を弱火に落とします。じっくりコトコト、くらいの温度ですの。
「そうしたら、アクを取りつつ三時間ほど煮込んでいきますわ」
「なるほど、待ち時間ですね。それではレオお嬢様、アク取りはほかのものに任せて、お勉強をいたしましょう。王都へ行っていた間のぶんが、たんまりと溜まっておりますので」
「いや、これはわたくしが責任を持ってやるべき仕事でぇ」
「レオお嬢様」
「はいですの」
……ブリジットは、たまーに、とっても怖い笑顔になるんですのよねぇ。
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