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24 いざ"黒の森"へ(後半)



 というわけで、"黒の森"まで駆り出されたわたくしでございます。

 ……あれェ? 展開早くありません?


「あのお手紙から二週間も経っておりませんのに、もう討伐隊として森に送られるとは。びっくりですの」

「正確には討伐隊ではなく先遣隊ですねぇ。冒険者たちの尽力あって、"黒獅子"の痕跡は見つけられておりますが、本体位置は特定できていないもので、聖女様のご助力を賜りたいわけです」


 と、ヴァレリーさんが補足してきます。


 周囲は背の高い木々で埋め尽くされていて、めちゃくちゃ視界が悪いですの。これでまだ"黒の森"の中では安全圏だというのですから、自然っていうのは恐ろしいですわね。

 ヴァレリーさんのほかに同行してくれているのは、ラシュレー領の数少ない騎士様たちと、派遣されてきた討伐隊の騎士様たち。……お父様も同行するつもりだったようですけれど、領主としての責任があるとかで、止められておりました。

 ブリジットも、戦闘能力がないわけではないのですけれど、まだ十三歳なので同行できませんでしたの。……六歳児ワイのことは、一旦、棚に上げておきましょう。

 ともあれ、わたくしはいま偵察のために、ラシュレー領の騎士と共に馬に揺られているわけですの。


「収束した因果律、吉兆たるわたくしが偵察に加わることで、"黒獅子"の縄張りなり巣なりが特定できる可能性が高い……の、ですわよね?」

「さて、どうでしょう。実際に女神様と遣り取りした聖女様がわからないのであれば、アタシら凡俗にはもっとわかりませんねぇ」


 ンな無責任な。


「しかし、聖女様は体力がおありですねぇ。馬に長時間揺られて、疲れた様子もございません。ご両親の教育のたまものでございますか?」

「ま、そんなところですの」


 【飢餓】のことは秘密ですから、適当に誤魔化しておきましょう。

 "黒の森"は、安全圏から奥に進むにつれて、起伏が激しくなっていきます。これは奥側、北に"巨獣山脈"があるからで、ようは途中から山になり……ともかく、いまいる場所はさほど地面がボコボコしておらず、馬に揺られる負担は、さほど多くはありません。

 ……まあ、常時発動している【飢餓】由来の魔力を用いた身体強化のおかげで、わたくしが身体的な疲労を感じたことはないのですけれども。


「あ、でも、皆様が疲れたのであれば、きちんと休憩いたしましょう。ほら、そちらの騎士様なんて、とても疲れたご様子ですし」


 派遣されてきた年配の騎士様の顔色が、とても悪いのもまた事実。馬に揺られながら、時折、辛そうな咳をこぼされているのです。先ほどから気になっておりました。

 ……本当は、休憩時に食べられるおやつやお弁当が目当てなのですけれどね。常に感じる空腹感には、いつまで経っても慣れませんの。

 わたくしの内心を知る由もないその騎士様は、柔らかく微笑みました。


「おお、聖女様。ご心配ありがとうございます。ですが心配なさるな。この老骨、最近は特に持病がひどく、この討伐隊への参加が騎士として最後の勤めになるでしょうが、まだまだ音を上げる気はございませんぞ」


 あら、老騎士様の最後のお勤めであると。なんだか素敵ですわねぇ。

 ……ん?


「あの、それ、大丈夫ですの? たしか、"黒獅子"は、死期……じゃない、そのう、ええと、体調の悪い生き物の気配を嗅ぎ分けるとかなんとか――」


 がさり、と近くで音が致しました。はっとしてそちらを見れば、真っ黄色の巨大な瞳と目が合いました。

 その瞳の持ち主は、ちょっとした家ほどの大きさがある、黒い毛皮のバカでっけェライオンさん。木々の隙間からわたくしどもを見下ろしております。


 うん。ぜってェこのライオンさんが"黒獅子"ですの。


「……チョワァーッ!?」


 ブリジットがいたらドチャクソ怒られそうな悲鳴が出てしまいました。



面白い! 続きが気になる! と思われたそこのあなた!


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